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薬院法律事務所

刑事弁護

粟田知穂「刑事事実認定マニュアル 第16回強盗における反抗抑圧・機会性」警察学論集76巻12号(2023年12月号)131頁


2024年01月23日読書メモ

強盗罪と恐喝罪は犯罪の性質が類似していますが、その法定刑は大きく異なります。そのため、実務的には「恐喝罪」に留まるか、それとも「強盗罪」になるかが重要な論点になります。この論点については、その暴行・脅迫の程度が「被害者の反抗を抑圧するに足りる程度」であるか否かが問題になりますが、この判断は微妙です。一般論としては下記の条解刑法記載のとおりなのですが、どういった証拠が収集されて、どういった事実が認定されるかにより裁判官の判断は変わり得ます。標記の記事では、詳細にこの論点を分析していました。刑事弁護実務においても、参考になる文献だと思います。

 

前田雅英ほか編『条解刑法〔第4版補訂版〕』(弘文堂,2023年3月)756頁

【(イ) 暴行・脅迫の程度 被害者の意思を制圧して財物を奪取する強盗の手段としての暴行・脅迫は,被害者の反抗を抑圧するに足りるものであることを要する。けん銃やナイフを突き付ける行為は原則としてこれに当たろう(最決昭28・2・19集72280は, 相手方に日本刀を突き付ける行為についてこれに当たるとする)。被害者に加えられた暴行・脅迫の程度の判断は,社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものかどうかという客観的基準によって決すべきであり具体的事案における被害者の主観を基準にその被害者の反抗を抑圧したかどうかによって決すべきではない。客観的に反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫が加えられた以上,現実に被害者の反抗が抑圧されなかったとしても, 強盗罪における暴行・脅迫となる(最判昭23.6~26集27748, 最判昭24.2.8集3-2-75)。暴行の程度を客観的に判断するといっても, その判断は,暴行・脅迫の態様だけではなく, 犯行場所, 犯行時刻,周囲の状況,相手方の性別・年齢・体格等も考盧して具体的に判断すべきである。】

 

ホーム > 月刊誌 > 警察学論集2023年12月号(第76巻第12号)

https://tachibanashobo.co.jp/products/detail/3889

 

※刑法

(強盗)
第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

(恐喝)
第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045
西田眞基「41恐喝罪と強盗罪との区別○最判昭23・11 ・18刑集2 ・12・1614」植村立郎編『刑事事実認定重要判決50選(上)《第3版》』(立花書房,2020年3月)699頁以下も必読です。