職場で上司から体を触られたが、警察から痴漢にあたらないといわれたという相談(労働問題、犯罪被害者)
2024年09月21日盗撮
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は福岡市内の不動産会社に勤務する20代の女性です。先日、上司から、いきなりお尻を撫でられるという被害に遭い、警察に被害申告をしました。しかし、警察からは公共の場所でないので「痴漢」は成立せず、「暴行罪」が成立するかどうかが問題になるだけだと言われました。やられたことは同じなのに、職場だと罪が軽いというのは納得できません。
A、残念ながら、警察の説明が正確だと思います。セクシャルハラスメントとして慰謝料請求は可能ですので、一度弁護士の面談相談を受けるべきでしょう。
【解説】
残念な回答になりますが、痴漢行為としては扱われないと思います。服の上からであれば、執拗でなければ不同意わいせつともしがたいので暴行罪とされることが多いでしょう。
迷惑行為防止条例は、公共の場所以外での痴漢行為を規制していません。これには歴史的な経緯と、法律上の問題があります。ざっくり説明すると、歴史的経緯としては、条例がもともと、東京オリンピック前に、公共の場所でのぐれん隊行為を取り締まる条例として産まれたことがあります。制定当初はぐれん隊防止条例、と呼ばれていました。法律上の問題としては、条例は法律に反してはいけないという憲法上の制約がありますので、一律に何でも規制するということはできません。条例成立時点で、既に軽犯罪法と刑法がありましたので、その間隙を埋めるような形しかとれませんでした。ただ、条例は地方の実情に応じた形で上乗せする規制は許容されやすいので、東京都独自の社会秩序を保護する意味を込めて、公共の場所での迷惑行為については条例で規制したという流れです。
その後、盗撮行為については、範囲を拡張しており、自宅などでも迷惑行為防止条例違反になるとされるようになりました。これは、軽犯罪法や刑法が撮影機器の小型化、高性能化を想定していなかった、といった理由で正当化されています。しかし、痴漢行為についてはそういった理由はないため、現在においても、公共の場所以外では迷惑行為防止条例の対象とはされていません。もっとも、私の把握している範囲では、岐阜県においては職場などにおける一定の痴漢行為を条例の対象としており、今後、同様の自治体が出てくる可能性は存在します。
日本国憲法
https://laws.e-gov.go.jp/law/321CONSTITUTION#Mp-Ch_8-At_94
第九十四条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
【参考記事】
「岐阜県公衆に著しく迷惑をかける行為等の防止に関する条例」の一部改正について
https://www.pref.gifu.lg.jp/site/police/25487.html
【2卑わいな行為の禁止(第3条)
(1)痴漢の規制場所の拡大
事務所での痴漢行為のイラスト改正前に規制されていた、公園や道路、電車や路線バスといった「公共の場所」や「公共の乗物」のほかに、学校、事務所、タクシーなどの「不特定若しくは多数の者が利用し、若しくは出入りする場所や乗物」まで拡大し、それらの場所等では、相手に「拒まれたにもかかわらず」、衣服等の上から又は直接人の身体に触れた場合に違反となります】