自主退職、就業規則には「1ヶ月前までに申請」とある場合に2週間で退職できるかという相談
2024年09月08日労働事件
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、期間の定めのない雇用契約で働いていますが、退職したいと思っています。就業規則には「1ヶ月前までに申請」とありますが、インターネットを見ると2週間で大丈夫という意見もあります。実際はどうなのでしょうか。
A、確定的な判例はありません。1ヶ月程度であれば有効という考え方もあります。
【解説】
退職申請は1ヶ月前という規定が有効かどうかですが、効力が認められる可能性は十分あると思います。退職までの期間については、2週間以上にするのは無効という説と、1ヶ月程度なら有効とする説の二つがあるとされています。後のトラブルを避けるためにはとりあえず1ヶ月が有効と考えた方が良いでしょう。
なお、民法上の2週間という原則については、2017年の民法改正以前は、月給制であれば,退職の申し入れについては次期以降に,当期の前半にしないといけません(民法627条2項)。そのため15日締めであれば,仮に10月中までに退職申し入れをしないと,10月いっぱい(民法の原則では11月半ばだけど,就業規則が1ヶ月前で良いとしているので1ヶ月後)時点までは勤務する必要がありましたが、この点は改正されましたので単純に2週間の期間が経過すれば退職となります。
とりあえず、事前に弁護士に一度面談相談に行って、自分で申し出て揉めたら弁護士から内容証明などで正式に通知をする、という方法が良いと思います。引き継ぎなどもあるでしょうから、いきなり弁護士名で通知するよりもまず自分でした方がトラブルが少ないでしょう。
※民法
(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
2 期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
3 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-Pa_3-Ch_2-Se_8
【参考文献】
菅野和夫・山川隆一『労働法〔第13版〕』(弘文堂,2024年4月)709頁
【労働者側の2週間の予告期間については、本条を強行規定と解して、就業規則や個別契約により延長することはできないとする裁判例が多い。11)
11) 日本軽金属事件一東京地判昭47・11・17判時706号99 頁、高野メリヤス事件一東京地判昭51 •10 • 29 判時841 号102 頁など。後任者を探したり業務引継ぎを行う必要などの観点からすれば、一律に強行規定と解するよりも、上級管理職や技術者の場合は1カ月前の予告を要する、との就業規則規定の効力などは、労契法7条の合理性の問題として考えるべきであろう。】
日本労働弁護団編著『新労働相談実践マニュアル』(日本労働弁護団,2021年12月)325頁
【問題は、予告期間を2週間より長く定めた就業規則や労働契約の定めの有効性である。この点、民法627条は、労働者の不利益に変更することができない強行法規である(=2週間以上の予告の定めは無効)とする説と、労働者の退職の自由を不当に拘束しない限り、2週間以上の予告期間を定めた合意も有効とする説がある。後者の考え方によれば、1か月程度の予告期間を設けることは許されよう(但し、さらに長期の場合には、退職の自由を不当に拘束するものと評価されることが多くなろう)。】