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薬院法律事務所

一般民事

論文紹介・岸洋介「正当防衛に関する近時の判例の動向及び捜査実務上の留意点」捜査研究2015年7月号(773号)2頁~


2023年02月10日読書メモ

私が、傷害事件の弁護でしばしば引用している検察官作成の論文を紹介します。
「立件を差し控えるべき」というところが、警察との交渉にも使えます。
また、民事事件においても、受傷否認の事案などで引用することがあります。
「診断書」があるからといってそれだけで傷害の事実が立証できるわけではないのです。
岸洋介「正当防衛に関する近時の判例の動向及び捜査実務上の留意点」捜査研究2015年7月号(773号)2頁~(13頁)
【傷害の診断書は, 受診者の愁訴のみに基づいて作成されていることがあるので,注意が必要です。この場合,診断書の記載を鵜呑みにして傷害の事実や内容を認定してしまうと,後に公判で争われたときに立証に窮することになってしまいます。そのため,比較的軽微な暴行事件で被害者から後日診断書が提出された場合には,それだけで傷害事件として立件するのではなく,捜査官自身が受傷部位を見て受傷の有無を確認し,その時点で受傷の事実を目視確認できなかった場合には,診断書を作成した医師に対し,診察時に発赤,腫脹などの他覚的所見が認められたか否かを確認することが必要です。頸椎捻挫(いわゆるむち打ち症)のように他覚的所見が認め難い傷害もあるので一概には言えませんが,診断書には打撲傷と記載されているのに,診察時にも診断書提出時にも発赤内出血腫脹といった他覚的所見が認められないのであれば, 当該診断書は受診者の愁訴のみに基づいて作成された可能性が高いので,傷害罪として立件するのは差し控えるべきと考えます。
他方で,事件当時は発赤や腫脹などの他党的所見が認められたのに,起訴時には傷が癒えてなくなっていることも少なくありません。比較的軽微な暴行・傷害事件は在宅送致されることも多く, この場合は,送致された時点では傷が完治していることがほとんどです。そのため,事件直後に被害者に発赤や腫脹などの他覚的所見が認められた場合には, これを鮮明に写真撮影し,証拠化しておくことが重要です。また,打撲傷の場合,受傷直後よりも,数日経過した後の方が,受傷部位付近に内出血が広がり,痛々しい状態になっていることがあります。そのため,被害者の受傷状態をより正確に証拠化するためには,受傷当初の状態を写真撮影するだけではなく,その後も,事情聴取などで被害者と接した際に傷の状態を確認し悪化している様子が見受けられた場合には.その状態も写真撮影して証拠化しておくことが必要です。】
刑事弁護関係については、相談してもらえば何かしらいえることがあることは多いと思いますので、お悩みの方はお気軽にお問い合わせください。弁護士からの相談も受け付けています。但し、メール・電話相談は受け付けていません。面談相談のみです。また、反社会的勢力が関係する事件、ストーカー、男女トラブルの事件は受けておりません。
一時期、刑事弁護で盗撮事件ばかり相談がきてげんなりしていたこともありましたが、最近はまた多様な種類の相談が来るようになってありがたいです。盗撮事件については、ご本人もご家族も深く悩まれていますし、事件終了後は他の事件より感謝される程度が高くやりがいはあるのですが・・・まあ疲れます。