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薬院法律事務所

警察官が聞き込みの際に被疑者の前科を明かしたことが違法とされた裁判例

2018年10月17日読書メモ

裁判例の紹介です

警察官が聞き込みの際に前科を公言したことについて、国家賠償請求訴訟が認められた事案です。

任意捜査は必要性があるとされれば広く許容されていますが、名誉・プライバシー保護の訓示規定もありますし(刑訴法196条)、名誉を毀損する形での聞き込みは違法になることがあります。

以前担当した事件でそういうものがあったので、この裁判例を引用して抗議したら止まりました。

平成7年11月8日/名古屋地方裁判所/民事第8部/判決/平成5年(ワ)1749号 判例時報1576号125頁

『《証拠略》によれば、本件逮捕の翌日、千種署所属の警部補A(以下「A警部補」という。)が聞き込み捜査のため、丙川鉄工へ臨んだ際、A警部補は、原告に前科のあることを知らなかった同社の従業員戊田花子から「甲野(原告)さんは、覚せい剤の前科があるんですか。」と尋ねられたので、「ある。」と答えたことが認められる。
ところで、前科は他人に知られたくない事実であり、人の名誉・信用にかかわるものであるから、前科ある者もみだりにこれを公開されないという法律上の保護に値する利益(プライバシーの権利)を有するものというべきである。
したがって、A警部補が右のとおり原告の勤務先の同僚に対し、前科のあることを告げたことは、右の権利を侵害する行為に該当することは明らかである。
被告県は、A警部補が右のように答えたのは、捜査について協力を得る必要があったからであり、ことさら原告の名誉を毀損するためではなかったと主張するが、本件全証拠によっても原告に前科があることを教えなければ、捜査について協力を得られない客観的状況があったと認めることはできず、したがって、A警部補が右のように即断したことは合理的根拠を欠くものであったというべきであり、仮に、同警部補に主観的に右のような目的があったとしても、本件においては右前科がある旨答えたことを正当化するものではない。
結局、A警部補が原告に前科がある旨答えたことは、原告のプライバシーの権利を違法に侵害するものというべきである。
そして、国家賠償法一条一項に規定する「その職務を行うにつき」には、職務の内容と密接に関連し職務行為に付随してなされる行為の場合も含むと解すべきところ、A警部補が前記の状況下で原告に前科があると答えた行為は、職務の内容と密接に関連し職務行為に付随してなされた行為といわざるを得ないから、被告県は、原告に対し、これによる損害賠償責任を負うものといわざるを得ない。』