近所に迷惑行為を繰り返す人がいて困っているという相談(犯罪被害者)
2024年09月30日読書メモ
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、福岡市内の会社に新卒から定年まで勤務していたものです。子どもたちも育ち上がったので、定年退職後は都心部から離れて過ごしたいと思い、妻と一緒に閑静な住宅街に引っ越しました。のんびりとした老後を過ごしたいと思っていたのですが、近所に困った人がいて、付近の住民を監視してはゴミ出しがおかしいと文句をつけたり、うるさいなどと言ってきます。証拠は確保できませんが、ゴミを投げ入れられたり、自転車のサドルを取られたりといったこともありました。私たちも、最初のうちは地域に溶け込みたいと我慢してきたのですが、限界です。自治会で会った人に相談してみると、ご近所でも有名な人で、みんな困っているようです。どうすればいいでしょうか。
A、証拠の確保が重要ですが、警察が介入することで迷惑防止条例により検挙してもらえることがあります。なるべく複数人で被害申告に行くのがポイントでしょう。
【解説】
「ご近所トラブル」などといいますが、巻き込まれた人にとっては大変な苦痛です。日常生活全般が監視されているような気持ちになり、安心して過ごせるはずの家が牢獄になってしまうことがあります。これは家庭内のDV事件でもそうなのですが(家庭内の場合は牢獄に閉じ込められているという自覚すら奪われることがあります)。こういった場合、警察に相談することが解決に繋がることがあります。近時、警察においても、このような地域のトラブルについて積極的に介入する傾向が出てきているようです。
警察での対応が難しい場合は、弁護士を介入させて警告書等を送る方々もありますが、「警察」がもっとも有効な手段であることは疑いありません。さらに、警察を介入させることで、依頼者の方が「自分たちが正しい側にいる」という安心感が生まれることも見逃せない効果です。この種の迷惑行為をする人は、相手の弱みを探すことに長けており、「弱み」を見つけて脅してくるというパターンが良くあります。そういった行為に対抗するためにも、積極的に活用していくべきです。また、刑事事件とできない場合でも、口頭での注意をしてくれることがあり、これで解決することもあります。
福岡県迷惑防止条例の一部改正について
https://www.police.pref.fukuoka.jp/seian/kotai/meiboukaisei.html
(嫌がらせ行為の禁止)
第八条 何人も、正当な理由がないのに、特定の者に対し、次に掲げる行為(ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成十二年法律第八十一号)第二条第一項に規定するつきまとい等を除く。)を反復して行ってはならない。ただし、第一号から第四号まで及び第五号(電子メールの送信等(同条第二項に規定する電子メールの送信等をいう。第五号において同じ。)に係る部分に限る。)に掲げる行為については、身体の安全若しくは住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。
一 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居等の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。
二 その行動を監視その他の方法により把握していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
三 面会その他の義務のないことを行うことを要求すること。
四 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
五 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。
六 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
七 その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
八 その性的羞恥心を害する事項を告げ、若しくはその知り得る状態に置き、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この号において同じ。)に係る記録媒体その他の物を送付し、若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し、若しくはその知り得る状態に置くこと。
【参考文献】
木村 慎作(警視庁生活安全部人身安全対策課ストーカー・DV規制係長)「近隣トラブルに起因する迷惑防止条例違反事件への対応について~現場指揮官の視点から~」警察公論2024年6月号13-31頁
13-14頁
【本稿で紹介する事例も、被害者らは約10年にわたって騒音被害を受け、地元の警察署に何度も相談していましたが、警察署では、法令の適用が困難であったこともあり、口頭警告を繰り返すなどの対応を余儀なくされていました。そこで、本稿では、第一線警察の一助となるよう、こうした近隣トラブル事案に対し、都迷惑防止条例を適用して事件化に至った事例について紹介いたします。なお、本稿中意見にわたる部分については私見です。また、各道府県でも定められている同様の条例(迷惑防止条例)については、都迷惑防止条例の条文とは異なる部分もあることから、適用に当たっては、自道府県の条例を参照してください。】
地域実務研究会編『地域警察官のための初期捜査活動』(立花書房,2005年8月)124頁
【ウ相手方に対する指導・警告又は説得
相談時点では刑罰法令に触れないが,将来,相談者等に危害が生じるおそれがあると認められる場合には,相談者等の意向を踏まえ,相手方に対する指導・警告又は説得を行う。この場合,原則として,相談者等の要請がある場合に,警察法に規定されている「犯罪の予防」という目的を達成するために指導・警告又は説得活動(相談者等の同意を得て住居内に立ち入ることを含む。) を実施すること。】
※状況に急迫性があれば、警職法5条、6条に従い立ち入り等の措置が行われることもあります。
警察に対する相談は警察相談専用電話 「#9110」番へ
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201309/3.html
【また、寄せられた相談に対しては、相談内容に応じて関係する部署が連携して対応し、指導、助言、相手方への警告、検挙等、相談者の不安等を解消するために必要な措置を講じています。】