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薬院法律事務所

退職者に対する損害賠償請求(横浜地方裁判所平成29年3月30日判決)判例タイムズ2018年2月号

2018年07月20日読書メモ

横浜地方裁判所平成29年3月30日判決(判例タイムズ2018年2月号222頁)がなかなか興味深いです。

事案をざっくり説明します。労働者が躁鬱病ということで自主退職を申し出て、約1月半後の退職が承認されました。しかし、労働者が退職を申し出てすぐ出社しなくなったこと、退職後他の会社に勤務したことで、会社が労働者に対して虚偽の理由で違法に退職したと損害賠償請求をしました。

就業規則には、退職の場合は原則90日前までに申請する必要があるとされ、退職者による業務の引き継ぎ義務を定めていました。

結論は、会社が敗訴した上、不当訴訟として逆に労働者に対する賠償が認められました。

判決は、まず労働者に退職の自由があることを前提にしています(※民法627条1項の2週間で退職可とされているようです。)。そして、虚偽の事実は述べていないし、仮に虚偽でも退職の効力は発生する。退職が急でなければ損害が発生しなかったという主張立証もない、ということで会社の請求を棄却しました。これは、退職後は引き継ぎ義務違反は成立しないという趣旨かと思います。

その上で、「原告主張の被告の不法行為によって原告主張の損害は発生しない」という理由から、提訴が事実的・法律的根拠を欠くとして不当訴訟と認定しました。これは弁護士の判断ミスともいえると思います。

最近、退職者に対して損害賠償請求を求める事例は結構あります。その場合は、いつの時点で退職できるのかということと(民法627条1項の2週間で退職可という説と就業規則で定めれば1~2月程度の予告期間をおけるという説があります)、引き継ぎ義務違反と会社の損害をどう考えるのかということが問題になります。この裁判例の考え方だと、民法627条1項が優先しそうですね。

こういう事例、通常は、「まあ、わざわざ賠償請求しても難しいですよ。」で弁護士が止めるのですが、この事例では1000万円を超える賠償請求がされていました。今後、退職者に対する損害賠償請求の参考裁判例にされていくと思います。

http://www.hanta.co.jp/books/6832/

横浜地裁平29.3.30判決
退職した従業員に対する損害賠償請求訴訟の提起が不法行為に当たると認められた事例……222