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薬院法律事務所

刑事弁護

逮捕の必要性と国民感情


2021年05月28日読書メモ

逮捕については、刑事訴訟法と刑事訴訟規則にその要件が定められています。

刑事訴訟法

第百九十九条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。
② 裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。以下本条において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。但し、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。
③ 検察官又は司法警察員は、第一項の逮捕状を請求する場合において、同一の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の請求又はその発付があつたときは、その旨を裁判所に通知しなければならない。

刑事訴訟規則

(逮捕状請求書の記載要件)
第百四十二条 逮捕状の請求書には、次に掲げる事項その他逮捕状に記載することを要する事項及び逮捕状発付の要件たる事項を記載しなければならない。
一 被疑者の氏名、年齢、職業及び住居
二 罪名及び被疑事実の要旨
三 被疑者の逮捕を必要とする事由
四 請求者の官公職氏名
五 請求者が警察官たる司法警察員であるときは、法第百九十九条第二項の規定による指定を受けた者である旨
六 七日を超える有効期間を必要とするときは、その旨及び事由
七 逮捕状を数通必要とするときは、その旨及び事由
八 同一の犯罪事実又は現に捜査中である他の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の請求又はその発付があつたときは、その旨及びその犯罪事実
2 被疑者の氏名が明らかでないときは、人相、体格その他被疑者を特定するに足りる事項でこれを指定しなければならない。
3 被疑者の年齢、職業又は住居が明らかでないときは、その旨を記載すれば足りる。
(資料の提供)
第百四十三条 逮捕状を請求するには、逮捕の理由(逮捕の必要を除く逮捕状発付の要件をいう。以下同じ。)及び逮捕の必要があることを認めるべき資料を提供しなければならない。
(逮捕状請求者の陳述聴取等)
第百四十三条の二 逮捕状の請求を受けた裁判官は、必要と認めるときは、逮捕状の請求をした者の出頭を求めてその陳述を聴き、又はその者に対し書類その他の物の提示を求めることができる。
(明らかに逮捕の必要がない場合)
第百四十三条の三 逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。

しかし、ここで重要なのは、捜査機関には「逮捕をする義務」はないということです。

そのため逮捕状を取得できる場合であっても逮捕しないということは良くあります。

この逮捕の必要性にあたっては、「国民感情」を考慮するのが警察の流儀です。

警察大学校特別捜査幹部研修所編著『新版 捜査学-実務手続論-』(立花書房,1994年2月)45頁
【その他諸般の事情として,国民感情からの判断,証拠確保上からの判断が考えられる。
国民感情からの判断として,次のような場合には,単なる暴行,器物損壊として軽視すべきではなく,逃亡又は罪証隠滅のおそれを厳密に判断し,疎明する必要がある。
○公共の乗り物内における婦女子に対する嫌がらせ
○待ち行列への割込みを注意したことに対する暴力
○国宝・文化財の損壊
○市民の善意によって建立又は友好のシンボルとして贈られた像等の破壊
○白鳥等の保護烏獣の密猟】