道路交通法における「一時停止」は何秒停止すればいいのかという問題
2021年09月03日読書メモ
道路交通法の「一時停止」とは何秒停止すればよいのかという問題。書いてあるものが見当たらなかったので書きます。俗説として3秒というものがありますが、根拠はないです。
※道路交通法
(指定場所における一時停止)
第四十三条 車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。この場合において、当該車両等は、第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。
(罰則 第百十九条第一項第二号、同条第二項)
村上尚文著『刑事裁判実務大系4(ⅰ)道路交通(1)』(青林書院、1993年9月)315頁
【一時停止すべき場所とはどのような場所であるか。一時停止とはどの程度停止し何をするのであるか。必ず停止しなければ違反になるのであるか。】
【2一時停止の内容
一時停止とは、常に瞬間的にせよ、物理的に停止しさえすれば足りるというわけのものではなく、左右の安全を確認するに必要かつ十分な時間停止することである(大阪高判昭三八・一○・二九大阪高検速報昭三九年一号’二、東京高判昭三九・五・二七東京高検速報二八○号参照)。
したがって、当然のことながら、「安全が確認できれば一時停止場所において一時停止しなくてもよいとか、あるいは一時停止したことになるなどとはいえない。」(東京高判昭五八・六・九、確定、東京高検速報三ハ六一号)し、一時停止しても、1秒間くらい停車したのでは停車したことにならない。」(宮崎簡判昭四一・二・二判タニ○七号一九六頁、西淀川簡判昭三八・六・三一下刑集五巻五Ⅱ六号五七八頁)のである。】
村上尚文著『刑事裁判実務大系4(ⅱ)道路交通(2)』(青林書院,1993年9月)640頁
【〔4〕普通乗用自動車を運転して並木通りを新橋方面から京橋方面に向かい進行中、交通整理の行われていない一時停止の標識のある交差点(交差点角には建築の足場が組まれ右標識が明認し難い状態になっていた。)に差し掛かり、交差点の手前で時速約一○キロメートルに減速したが一時停止せずに交差点に進入し直進したところ、左方道路より軽自動車が約一四メートル先を相当早い速度で接近して来るのを認めたが、自車が先に交差点に進入しているから相手車が徐行すると思って進行したところ、同車は何ら徐行することなく進行して来たので、ブレーキを踏んで停車したが停車したところへ相手車が衝突した(東京高判昭三八・一○・二一東京高検速報二三一号)。
「交差点において一時停止、又は徐行を要求されるのは、専ら交差点における事故防止、交通の安全を図るため、特に左右の交通状況を注視して、安全を確認させようとするためであるから、ただ一時停車をしたとかあるいは徐行をしたからといってそれだけで事足りるというものではなく、必ず左右を注視して、適切妥当な判断によって安全を確認しなければ、ここにいう一時停止ないし徐行をしたとはいえない。したがって、仮に徐行して左右を見たとしても、その判断を誤り安全なりと安易に軽信して漫然交差点に進入したときは、ここにいう徐行をしたものとはいい得ず、徐行義務に違反し、あるいは道交法にいう他人に危害を及ぼすような方法で運転したものといわざるを得ない。】