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薬院法律事務所

青木省三「こころの病を診るということ」

2018年07月20日読書メモ

法律相談や打ち合わせに使えそうなところがあります。

我々の仕事も、依頼者本人を幸せにするのが一番重要であって、権利実現というのは手段なのですよね。先日紹介した本の「モラハラかどうかはもうどうでもいい」と共通するところがあります。

もちろん、権利実現自体が目的のこともあります。それが制度の変更につながるとか、社会貢献になることもありますが、まずは依頼者の幸せが第一と思います。

2章 患者は治療者の鏡。声だけでなく、顔を出して招き入れること。出会いは柔らかく。

3章 話してもらえることだけをまず話してもらう。苦しみや困ったことを異物化、対象化、外在化させる。
「わかろうとし、わかってもらおうとする」相互作用が大事。仕事がしんどいと言われたら、出勤、退勤時間、人間関係、休憩時間など詳しく聞くことで、リアルに受け止めることができる。日常生活を具体的に聞くこと。
→この章は過労問題の聞き取りの参考例にもなります。残業代とかパワハラかとかそういう価値判断と離れて、まず本人の悩みに寄り添います。

4章 差し支えなければ、と生活歴を質問する。具体的な会社名などは不要(生活歴は刑事弁護や離婚事件でも重要です)。家族歴は信頼が築けてから。

5章 主観的体験をまず共感する。それを客観的観察により点検する。目の前の症状は精神症状でもあるが、人生の悩みでもある。

6章 質問の仕方に工夫が必要。仕事が続けられないダメ人間と思い込んでいても、実際は休むのが下手だった事例。過剰適応。対人関係に悩んでいないようでも、人の言動に些細に反応していたり。
理解を深め気持ちを汲む質問をする。ポジティブな言葉を入れての質問。
→難しいところなのですが、これは実践ですよね。罪悪感を本人が持っているパターンでは特に重要だと思います。

7章 うなずく、相づちをうつ、語尾を継ぐ、まとめて返す

8章 人間は場面によって異なる姿を見せる。総合的にとらえる。

9章 日常生活を尋ねることで、困ったこと、を把握する。本人も気がついてないことがある。
→離婚事件や、刑事事件、労働事件の労働側でやるときに大事なことだと思います。その中で本人も自分を振り返ることが出来ます。

10章 人生の大きな流れと精神症状の関係などを考えて、病気に至る道筋の仮説を立てる。人生の負荷が増大するなかで、精神症状が出現した例は多い。

11章 国際疾病分類(ICD)や精神疾患の診断統計マニュアル(DSM)は、症状の把握や他領域の人との連携に非常に有用。しかしその診断をつけられたということで、患者を理解したと思わないこと。
最近は非定型が増えている。特にうつ病や発達障害の軽症例は診断が一致しない。そもそも、すべての人は非定型、非典型と考えるくらいが良い。発達障害やトラウマ体験、器質的障害があると非定型になりやすい印象。発達障害は、グレーゾーンのままとらえること。患者と医師も「程度」の問題。
発達障害という病名をつけると、内的体験の理解から、観察して障害にあてはまるものを見ようとしてしまう。統合失調症も、外部からの反応の部分がたくさんある。今ある器質因による認知機能の低下や環境因的な負荷のなかで、なんとかしたいともがいている本人を診ること。

12章 人生の大きな流れと、病気の典型的な経過を踏まえて治療にあたる。統合失調症の発症を防ぐには、医療ではなく、教育福祉を中心とした孤立を防ぐサービスが必要。

13章 産業構造の変化、成果主義の導入により、働く人にゆとりがなくなっている。対人関係が苦手だが、コツコツ働く人や職人が生きづらくなり「発達障害」的な破綻を呈する人が出てきている。その人の特性を活かせれば輝く。

14章 精神症状の基盤にはトラウマがあることがある。トラウマ体験による他人への信頼の乏しさを改善する必要がある。

15章 治療は、症状の軽減、喪失と、生活や人生がより良くなることを目指す。病気の治療そのものに執着してはならない。その人だけではなく、環境も考えること。人のこころを治せるのは人だけ。ちょっとしたやり取りで救われることがある。改善すると生活保護などが打ち切られるという気持ちで、病から脱却出来なくなってしまうこともある。
→弁護士の仕事も、目先の問題解決だけに執着しては不十分です。

16章 精神科の薬物療法は原因療法と対症療法の中間。精神症状は環境に対する警告であることもあり、無闇におさえればいいというものではない。なるべく頼らないようにもっていく。

17章 精神療法について、理論や技法が占める部分は意外に少ないと思う。人柄、日常診療での態度が効果を上げる。その人が懸命に生きていることを支持するのが大事。これで良いと肯定し、人生万事が塞翁が馬とリフレイミングする、小さい改善を大事にする。原因よりも、今の生活を大事にする。遊ぶ、笑うことを助言する。頑張りましょう、はうつ病親和型性格や執着性格には禁句だが、他の場合は役立つこともある。その人を深く理解しつつも、治療はあえて浅くする。日常的問題を解決するなかで、本人が回復していく。

18章 患者と医師は五十歩百歩。障害は程度問題という意識を持つ。一方で、苦しみの程度は理解できないことを意識する。治療者は親身な第三者であるべき。

良かったです。真剣に精神科の臨床治療に取り組んできた人の姿勢を感じました。我々の仕事の参考にもなると思います。

http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=92719