麻薬特例法違反での家宅捜索と処罰(大麻所持事件)
2024年02月06日違法薬物問題
違法薬物事件については、薬物を規制する法律そのものではなく、麻薬特例法8条違反で捜索・処罰がされることがあります。実際に取引されたものが違法薬物と立証できなくても捜索可能になるところがポイントです。
【*国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律*
(規制薬物としての物品の輸入等)
第8条
2薬物犯罪(規制薬物の譲渡し、譲受け又は所持に係るものに限る。)を犯す意思をもって、薬物その他の物品を規制薬物として譲り渡し、若しくは譲り受け、又は規制薬物として交付を受け、若しくは取得した薬物その他の物品を所持した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。】
https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000094
こういった場合、【物なし】事案として処罰されるかという問題があります。違法薬物自己使用・所持案件で、家宅捜索を受けて弁護士に相談に来る際は、すでに警察で自白調書が作成されているということが多いです。そうなると、「完全黙秘」をして証拠不十分を狙うということは難しいですし、基本的には供述証拠の証拠としての脆弱性を指摘して、嫌疑不十分不起訴か、起訴猶予を狙うことになります。下記記事のとおり、不可能なことではないです。なお、神垣清水『実践捜査問答』(検察協会,2001年6月)124頁以下で対談形式で具体的な活用例が紹介されています。
※参考
須賀正行「元検察官のキャンパスノートNo.42-麻薬特例法-業として行う覚せい剤の譲り渡し」捜査研究2012年11月号(738号)53-54頁
【「規制薬物として」とは,規制薬物ではない薬物若しくは規制薬物であるか否か不明な薬物その他の物品の輸入,輸出,譲渡し,讓受け又は所持の各行為に及んだ者が,その行為の時に,その薬物その他の物品を規制薬物であると認識していることをいうと解され,輸入,輸出及び所持については,その行為の客体が規制薬物として交付を受け,取得した薬物その他の物品とされています。
これは,本条が成立するためには,行為者がその取扱いに係る薬物その他の物品を単に主観的に規制薬物であると認識していただけではなく客観的に見ても規制薬物と認定し得る状況下で,その行為が行われたことを要する趣旨であると解されています。
つまり,輸入,輸出及び所持は,その行為態様として行為の相手方の存在を必要としないため, 当該薬物又はその物品を入手するに際し,相手方から明示的,黙示的に規制薬物であると表示された場合等, 当該行為者がそれを規制薬物であると認識していたのみならず,一般人からみてもその状況下では,行為者が輸入し,輸出し,所持していた物が規制薬物であると認識するのが通常である場合に限る趣旨であるとされています。讓渡し,讓受けの場合も, 当該薬物が規制薬物であると認識するのが通常であるという客観的状況が存在することが必要ですが,讓渡し,讓受けの各行為はその行為態様として必ず相手方の存在を必要としていますから,例えば讓渡人が物を譲り渡す際に,それが規制薬物であることを明示的,黙示的に表示する等,規制薬物であると認識し得る客観的状況下で行われた場合に当該行為が処罰されることとなります。】
最近はインターネットで簡単に違法薬物が手に入る現状があり、ふとしたことから若い人が手を出してしまうことがあります。しかし、そのことが本人や家族の人生に大きな影響を与えてしまうのです。悩まれたら、ぜひご相談ください。