「不適切な発言をした」という理由で解雇されたという相談(一般民事、労働事件)
2024年12月16日労働事件(一般民事)
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は福岡市に住む40代男性です。先日、転職してファッション雑貨卸売の卸会社に就職したのですが、その社長がある政治団体に傾倒されている方でした。私は政治には興味がないので特に気にしていなかったのですが、先日、社長から呼び出されて、私を解雇すると言われました。理由は、私がお昼休みに給湯室で同僚と話をしていたことが、その政治団体の理念に照らして不適切な発言であり、会社として許容できないということでした。
A、具体的な発言を確認しないといけませんが、仮に現在の社会通念からみて「不適切発言」であったとしても、それだけで解雇することはできないです。まずは「解雇理由証明書」を求めて、解雇理由について明らかにさせるべきでしょう。
【解説】
解雇については、労働契約法16条により規制されていますが、中小企業においては乱発されがちという実態があります。ご質問の事例の場合、休憩時間の雑談での話ということであり、仮に不適切な発言があったとしても、それだけで解雇ができるような話にはならないと考えられます。なお、政治的信条と解雇という論点について、日中旅行社事件という裁判例があります。ここで述べられているような特殊な場合に解雇有効になる余地はあると思います。
日中旅行社事件
【その事業が特定のイデオロギーと本質的に不可分であり、その承認、支持を存立の条件とし、しかも労働者に対してそのイデオロギーの承認、支持を求めることが事業の本質からみて客観的に妥当である場合に限って、その存在を認められているものと解すべきである。そしてそれはあくまで事業目的とイデオロギーとの本質的な不可分性にその特徴を求められるべきもので、例えば政党や宗教団体または特定の宗教的政治的イデオロギーの宣伝、布教を目的とする事業等にその例を見られるのであって、イデオロギーと事業目的との関連性は認められるが、それが本質的に不可分でない事業についてはそのイデオロギーを以て雇用契約の要素としてはならないものというべきである。そしてイデオロギーの承認、支持を存立の条件とする事業において労働者に対してもその承認、支持を求めるものである以上、それは前記のとおり憲法一四条、労基法三条の例外をなすものであるところから、労働者の右資格要件は明確にすべきものであり、個別的雇用契約だけではなく労働協約か少くとも就業規則中の労働条件を定めた部分にこれを明記しなければならないものと解する。】
労働契約法
https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
【参考リンク】
いわゆる事件名 : 日中旅行社事件
争点 :
事案概要 : 日中友好の増進のため訪中友好使節団の旅行斡旋を目的とした会社の従業員らが、営業所閉鎖を理由に解雇されたのに対し、右閉鎖は偽装であり、解雇は従業員らの思想、信条を真の理由としており無効であるとして地位保全等求めた仮処分申請事件。(申請認容)
https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/00042.html