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薬院法律事務所

刑事弁護

文献紹介 石井博「実例捜査セミナー 芸能人のアカウントID等を利用した不正アクセスを処理した事例について」捜査研究2017年1月号


2018年07月20日刑事弁護

捜査研究2017年1月号に不正アクセス事件の記事がありました。

興味深い内容でしたので、かいつまんで紹介いたします。

「実例捜査セミナー 芸能人のアカウントID等を利用した不正アクセスを処理した事例について」東京地方検察庁検事 石井博

「5人の芸能人のアカウントに不正アクセスしていた事件。捜査の端緒は別の不正アクセスを調査していた時に、正規利用権者でも、その事件の犯人でもないアクセス履歴があった。調査の結果、IPアドレスからは家庭内の2台のパソコンに絞られ、アップル社のコンピューターからのアクセスと分かっていたことから、被告人の自室のコンピューターと特定できた。
虚偽の自白ではないかということで、慎重に対応するとともに、他もしているだろうということでパソコンの解析を進めた。大量のIDとパスワードらしきものを記録したデータが見つかり、膨大であるため、同様の不正アクセスを行うものがいることも想定された。芸能人のプライベートな画像データも見つかった。その画像の芸能人のログイン履歴を調べて、不正アクセスの履歴を確認した。遠隔操作ウイルスの有無の調査、不正アクセスしたパソコンがパスワードが必要であったこと、出入り可能性等を調査して、被告人と特定した。
しかし、被告人が会社員であるところ、平日日中のアクセスも確認出来た。そこで、被告人の勤務先会社の捜索差押を行いタイムカード等を差し押さえるとともに、逮捕の被疑事実は夜間の時間帯の確実なものだけとした。
被告人は一貫して自白した。関係者の供述や、勤務状況の調査からも被告人の犯行と特定でき、別件で再逮捕・再勾留後に公判請求した。
芸能人の画像データや供述調書の証拠請求については、プライバシー保護のため請求せず。立証に必要な範囲で不正アクセスの日時を特定する捜査報告書のみ請求した。弁護人から供述調書等の開示を求められたら閲覧等に限定する必要があったが、証拠開示の申出はなかった。被告人の不正アクセス手法についても、その手法を明らかにすることは危険であるので、手法部分を告知することは控えた。懲役2年6月、執行猶予4年の判決で確定。」

捜査の端緒という意味と、不正アクセスされる危険性が高い芸能人は、自らのアクセスログを確認しておくというのは大事かなと思いました。

http://www.tokyo-horei.co.jp/magazine/sousakenkyu/201701/