文献紹介 丸山潤「実例捜査セミナー 顔貌鑑定をめぐる問題点」捜査研究2018年3月号
2018年07月20日刑事弁護
丸山潤「実例捜査セミナー 顔貌鑑定をめぐる問題点」捜査研究2018年3月号が、顔画像鑑定について参考になる記事でしたので紹介します。
「防犯ビデオの顔画像と被疑者の顔画像の同一性に関する顔貌鑑定を犯人性の主たる証拠として有罪立証を試みた事例。裁判例は犯人性に関する顔貌鑑定については、おしなべて慎重な判断をする傾向にある。裁判員裁判の有罪判決を破棄して差し戻した事例も(東京高裁平成29年11月2日)。
顔貌鑑定には①二次元法(画像と顔写真を比較)と②三次元法(画像と被疑者の三次元画像を比較)の2種類がある。「同一人と考えられる」「恐らく同一人と考えられる」「同一人として矛盾しないと考えられる」などと記載される。
窃盗事案で顔貌鑑定が問題となった事例がある。手口捜査で浮上した被疑者の5年前の画像と比較し「おそらく同一人と考えられる」(2番目のランク)で起訴。公判で補充捜査を実施。科捜研では逮捕された被疑者写真と防犯カメラの二次元法で「同一人と考えられる」と最高ランクの結果が出て、民間鑑定人での嘱託でも「限りなく同一に近い」(最高ランク)の結果が出た。判決では、これらの結論部分は否定しつつも、類似性が認められる部分と、後頭部の痣様のものという顕著な特徴から、犯人性を認めた。
顔貌鑑定は、特に二次元法において主観がはいる。可能な限り三次元法を使い、鑑定資料も最新のものを使う。防犯カメラのレンズのゆがみについて補正する場合には、どのような理由で、どのような補正したのかを示す必要がある。前掲東京高判はこの点を指摘している。また、事例のように正面顔以外の特徴が役に立つことがある。また、近親者による同一性判断の立証は困難。写真では見間違える可能性は否定できない。設備の制限があるが、三次元法で客観的な立証を試みるべきである。」
http://www.tokyo-horei.co.jp/magazine/sousakenkyu/201803/