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薬院法律事務所

犯罪被害者

文献紹介 猪原誠司「工藤会対策」警察政策第18巻(2016)(犯罪被害者)


2018年07月20日窃盗(犯罪被害者)

文献紹介 猪原誠司「工藤会対策」警察政策第18巻(2016)が興味深い内容でしたので、かいつまんで紹介します。
猪原誠司(警察庁暴力団対策課長。平成24年2月28日~福岡県暴力団対策部長,平成26年8月26日~警察庁刑事局組織犯罪対策部暴力団対策課長)さんが執筆しています。
私は、暴力団事件はやらないので詳しくないのですが、総力戦だったようです。

「工藤会の悪質さ。ぼおるど事件(手榴弾投げ込み)、唯一の特定危険指定暴力団、被害申告に対する報復、外国公館、議員、暴力団排除活動への攻撃、警察への攻撃。北九州地区等における凶悪事件(未検挙)の続発。筆者は平成20年の暴対法改正の立案に参画した。改正には工藤会の「ジキリ」、要するに暴力団員が、組織のために犯罪を敢行して服役することが念頭にあった。「自義理」が語源?「戦闘力」が高いとされる組織ほど、「ジキリ」の組員に対して手厚く対応する。このような「面倒見」を禁止するのが、「賞揚等禁止命令」(第30条の5)。平成22年に暴力団対策部を設立。警視庁を除き唯一の専門部。暴力団排除条例を作ることで事業者との持ちつ持たれつの関係を絶つ。性風俗・風俗営業のトラブル処理、建設業の下請け参加、談合破り禁止、付近住民の反対抑圧等。この条例が全国に広がった。福岡県警は、道仁会と九州誠道会の抗争対応、工藤会との二正面作戦を強いられていた。平成24年に北九州で元警部が銃撃された事件をきっかけに、全国からの管区機動隊の特別派遣が開始された。さらに、捜査員派遣(北九州地区等の極めて厳しい状況の捜査を経験することによって、捜査経験の蓄積と捜査能力の向上を図る。)ものと応援派遣(警察法60条の「援助」)があった。工藤会の頂上作戦が軌道に乗るのを見届けて特別派遣は終了している。地方警察官の増員も行い、福岡県の暴力団対策部の人数は約400人から500人に拡大。山口県警の警察車両が福岡県まで乗り入れて権限行使することを可能とする協定の締結。平成24年暴対法改正。九州誠道会と道仁会を「特別抗争指定暴力団」に指定。これにより集合や事務所への立ち入り等が禁止され抗争継続が困難。平成25年6月11日に九州誠道会が「解散」、道仁会が「抗争終結宣言」。これで、工藤会に対して全力を注げるようになった。樋口本部長による①工藤会総裁に対する「頂上作戦」、②県警総動員の二大方針を実施。平成26年9月11日に総裁を殺人等で検挙。「工藤会関連事件特別捜査本部」を設置。福岡県警の定員が一般職員併せて1万1900人であるところ、3800人体勢。多くの未検挙事件を逮捕・起訴。工藤会総裁の脱税事件も検挙。①波状的な捜査実施で秘匿されてきた上納金の実態を解明出来たこと、②警察・検察・国税当局の緊密な連携によるもの。工藤会理事長代行らも「頂上作戦」で検挙。事務所撤去。警察本部長自身が逮捕につき会見をするという異例のマスコミ対応をすることで情報発信。繁華街等でのみかじめ料被害の一斉聞き込み。事務所使用制限命令、賞揚等禁止命令、組員の離脱促進。「特に選ばれた精鋭であることが警察側にも一目瞭然の検察官が、最高幹部から地検の担当検事に至るまで揃って配置されており、そのことは、工藤会捜査の進展に決定的に大きく寄与した。捜査主任官と地検の担当検事はもとより、警察本部長と検察最高幹部との間でも、状況に応じ、儀礼的・形骸化したものではなく、より踏み込んだ協議が行われた」
以上のような対策により、平成23年の福岡県内の銃器発砲事件18件は、平成26年に0件となった。事業者襲撃事件も17件から2件。頂上作戦開始後は発生していない。
工藤会の構成員も減少を続けている。壊滅するまで対策を強化・継続しなければならない」

http://asss.jp/katudou/publication/keisatuseisaku/vol18.html

 

2024/11/3 追記

工藤会“壊滅作戦”10年 警察は引き続き徹底した取り組み

https://www3.nhk.or.jp/lnews/kitakyushu/20240911/5020016470.html

 

※私は、反社会的勢力からのご依頼・ご相談は一切受任しておりません。