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『学校法人M学園ほか(大学講師)事件 千葉地裁松戸支部平28.11.29判決~男子学生による男性講師へのセクハラ行為の存否と職場環境配慮義務等~』 労働判例1174号


2018年07月20日労働事件

労働判例1174号読書メモ。

大学の男子学生が、授業中に男性講師の臀部を触る等のセクハラ行為をした事例です。原告訴訟代理人は佐藤博史先生。

『学校法人M学園ほか(大学講師)事件 千葉地裁松戸支部平28.11.29判決~男子学生による男性講師へのセクハラ行為の存否と職場環境配慮義務等~』

判決では、男子学生に対してはセクハラ行為の存在を認めつつも10万円の限度でしか慰謝料支払義務を認めず、学校に対しては不十分な調査でセクハラがなかったと結論づけて改善させる具体的な措置をとらなかったこと等により80万円の慰謝料支払義務を認めています。判決文では学園側が何もなかったような形で事態を収束させようとしたことについて、厳しい批判がなされています。

なお、直接の加害者である学生に対しては10万円しか認めていない理由は以下の通りです。

「原告が被告乙山の行為によって受けた精神的衝撃は決して小さなものではないと考えられるが 被告乙山はあくまで「ノリ」で行為に及んだもので被告乙山自身の性欲を刺激興奮させ,又は満足させるという性的意図の下に及んだものとは認め難く(最判昭和45年1月29日刑集24巻1号1頁く最一小判2強制わいせつ被告事件一編注>参照。したがって被告乙山の行為は,刑法176条の強制わいせつ罪に該当するものではない。) この意味において、被告乙山の行為の違法性は,さほど強いものではないというべきである。
加えて,「ノリ」で行為に及んだ被告乙山からすれぱ,原告が提訴するほどまでに精神的苦痛を被るとは予想していなかったことがうかがえる上,被告乙山の年齢等を考慮すると被告乙山がそのような認識を持ったとしてもそれはやむを得ない側面があることも否定できず(なお,これは,被告乙山の行為が法的に許されるということを意味するものではない), そういった事情からすれば被告乙山が原告に支払うべき慰謝料の額については、相当因果関係の点からそれほど高い金額を認定することは困難であって,結論としては 10万円が相当である。
また.被告乙山の行為と相当因果関係を肯定し得る弁護士費用相当損害金の額は,その1割に相当する1万円が相当である。」

金額の当否はともかく、被告が「ノリ」でやったとか、年齢が若いからといったことで因果関係を制限するという理屈はどうかと思います。これ、被害者が女性であった場合も同じ理屈で制限するのでしょうか。

https://www.e-sanro.net/magazine_jinji/rodohanrei/d20180501.html