二宮周平 (立命館大学教授)/編集『新注釈民法 17 親族 1 §§725〜791 (有斐閣コンメンタール)』
2018年07月20日一般民事
まあ、とりあえず実務家なら買う本ですよね。
特に、本巻は婚姻・親子関係に関する条文の解説なので、町弁は必須でしょう。
全体的に、比較法的視点が減っているのと、近時の裁判例を重視している印象があります。
ほとんど読めてはいませんが、改正のあった766条の棚村教授の解説は一読すべきものがあります。
家庭裁判所の実務は「面会交流原則実施論」ですが、それに対する批判も近年強く述べられています。それに対して、「しかし、児童の権利に関する条約の9条にもあるように、親子の絆を確かめ継続的な接触や交流を維持する権利は、子供自身の権利である。子供の権利が保障されず、大人の激しい争いの中で傷つき、ないがしろにされ、対立の狭間で忠誠葛藤を起こしている様子は悲しいものがある。」と記載されています。面会交流原則実施論に親和的です。
また、養育費の算定表については見直しをすべきとされつつ、日弁連の新算定表については「なお、2016年11月に、日本弁護士連合会は、受け取る側の生活実態に合わせて1.5倍に養育費等を増額する新算定方式を提案している。」と評価を留保しています。ここで評価されれば浸透するきっかけになったと思うのですが、これも評価が割れるので難しいのでしょうね。