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薬院法律事務所

企業法務

【解決事例】勤務中に同僚から暴行を受けた事件で、会社に損害賠償請求をして回収


2024年08月15日労働事件(企業法務)

【相談前】

勤務中に他の従業員から暴行を受けたということで、労災認定を受けたものの、賠償が得られないということでした。

【相談後】

カルテや労基署の資料、刑事事件の記録を謄写して、会社と加害者に賠償請求をしました。同僚の暴行であるからといって、必ずしも会社に賠償請求ができるわけではありません。しかし、事情を確認して、十分な資料を集めたことで、自信を持って請求できました。
会社はすぐに弁護士に依頼されましたが、裁判での賠償金に近い金額で和解解決いたしました。

【弁護士からのコメント】

会社の従業員同士で喧嘩があった場合に、使用者責任(民法715条)を問うことが考えられます。

従業員同士での暴行については、業務との関連性が特に問題になります。一般に使用者責任は事業の執行の外観があれば良いとされますが、暴行については外観云々を議論するのは意味がないと言われ、暴行と事業の執行行為の関連性が吟味されます。「事業の執行を契機とし、これと密接な関連を有するときは、事業の執行について加えた損害にあたる」とした最高裁判例があります(最高裁昭和44年11月18日民集23巻11号2079頁)。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51976

こういった裁判例もあります。
「被用者の暴力行為について使用者に民法七一五条の使用者責任が認められるためには、少なくとも当該行為が使用者の事業の全部又は一部を遂行する過程でなされたものであることが必要不可欠の要件であると解するのが相当であるところ、前認定事実によれば、被告松谷及び被告豊商事の氏名不詳の従業員二名の原告重則に対する暴力行為は、被告松谷が被告豊商事主催の行事終了後の自由時間中に同僚と私的な宴会を催していた際、フロントへ右宴会用のビールを注文に赴いたことが契機となつて発生したものであつて、被告豊商事の事業を遂行する過程でなされたものではないから、被告豊商事は本件事故について使用者責任を負わないものというべきである。(名古屋地判昭和58・11.30判タ520号184頁(27424156])。 」

ご相談の事例では、十分に資料を集めた上で、会社に賠償請求をしたことが効を奏しました。会社側の弁護士も、資料をみた上で、これを争うのは難しいと理解し、早期解決となりました。とりあえず請求して~というやり方は、一見着手が早くて良いようですが、却って問題をこじらせる危険があると思います。