【解決事例】他人名義の住宅ローンを支払ってきたが、自分の名義に変更できないかという相談
2024年08月15日一般民事
※解決事例は実際の取扱事例をモデルにしていますが、特定を避けるため、複数の事例を組み合わせる等した上で、大幅に内容を変更しています。
【相談】
Q、私には、前妻との間に娘がいます。娘が結婚したので、娘の生活を考えて家を建ててあげることにしました。しかし、私は高齢でローンが通らなかったので、娘の夫名義でローンを組んで、実際は私が支払うという形にしました。しかし、娘が離婚することになり、今後ローンの支払をどうすれば良いのかわからなくなってしまいました。娘の夫としてもローンがあるのは困るということなのですが、なんとかならないでしょうか。私がローンを支払うと「贈与」となって贈与税がかかるのではないかという心配もあります。
A、ローンの名義変更は金融機関の同意がないとできないので、強制的にローンの名義人を変更することは困難です。ただ、一括払いをすることによりローンをなくすこと、真正な登記名義の回復を原因とする移転登記請求をすることで、名義を移転することが可能にすることが考えられます。
【解説】
私が以前取り扱った事例をモデルにしています。モデルケースでは、ローンの支払いは娘の夫名義の預金通帳に入金する形で引き落としがなされていました。ローン債権者である金融機関に確認しましたが、ローン名義変更はできないということでした。娘の夫と協議した上で、実質的な所有者は依頼者であるとして、真正な登記名義の回復を求める訴訟を提起しました。登記名義を回復した上で、金融機関と再度交渉し、ローンを全額一括払いして解決しました。登記名義の回復については交渉して行うことも可能でしたが、「贈与」とされて課税される危険性を考慮して、税務署に事前相談の上で、訴訟手続を取りました。無事に解決できたときはほっとしました。
この事案でポイントとなったのは「贈与税」の処理で、しっかりと実質的な支払者が依頼者であることを立証した上で、判決を出してもらいました。そのため、税務署としても本件が「贈与」ではないことを認識してくれたのだと理解しています。
※ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例要旨 >> 相続税法関係 >> 贈与登記
https://www.kfs.go.jp/service/MP/04/0402010000.html
贈与登記があっても贈与がないとした事例
裁決事例集 No.11 – 72頁
本件宅地について、贈与を原因として請求人に所有権移転登記がなされている事実を捕え、贈与があったものとした原処分に対し、数年来当該宅地上に請求人名義の居宅を建築し居住していたこと、贈与者である叔父名義に所有権が登記されていたのは、第2次大戦後の所有権認定に際し、法定家督相続人たる請求人が未成年者であったため、家産保護の立場からそうしたものであること等の事実が認められるから、真正な土地の所有者は請求人であり、登記事項の異動は、その実質が贈与行為によるものではなく、真正な所有者名義の回復を図るものであると解されるので、請求人の主張は相当である。
昭和50年12月22日裁決
トップに戻る
真正な所有権者への名義の回復登記であると主張する贈与登記について、実質的にも贈与によるものであると認定した事例
裁決事例集 No.22 – 179頁
本件土地は、請求人の亡父が生前に取得し、所有していたものであって形式上第三者である贈与者の名義にされていたものにすぎないから、請求人に対する名義変更登記の原因が贈与であるとしても、実体は相続により所有権を取得した請求人への真正な登記名義の回復登記であるとの主張について、亡父が本件土地を取得していたことを証明する証拠はなく、当該第三者が本件土地の取得時から請求人に贈与するまでの長期間自己のためにする意思をもって平穏、かつ公然に管理し、その一部は売却するなど使用収益していたこと、また、相続開始から贈与に至るまでの間当該第三者から請求人に本件土地の承継又は引渡しがなされたとする事実もないので、本件土地は贈与登記時に当該第三者から請求人に贈与されたものと認めるのが相当である。