【解決事例】飲酒運転で逮捕、すぐに釈放してもらえないかという相談(酒気帯び、刑事弁護)
2024年09月23日刑事弁護
※解決事例は実際の取扱事例をモデルにしていますが、特定を避けるため、複数の事例を組み合わせる等した上で、大幅に内容を変更しています。
【相談】
Q、私は、福岡市に住む30代男性です。先日、バイクの飲酒運転で逮捕されてしまいました。私が飲酒運転したことは事実ですが、捕まったままだと仕事ができずに困ります。重要な仕事が入っているので明日は休めないのですが、今日中に釈放してもらえないでしょうか。他の弁護士さんからは、「明日の午後に検察官が取調べを行うので、その時に勾留請求をしないように弁護人から働きかけることができる」と言われたのですが、明日では間に合わないです。
A、警察に対して働きかけを行うことで、検察官送致前に釈放を実現できることがあります。
【解説】
以前私が取り扱った事例をモデルにしています。逮捕後、検察官送致前に「留置の必要性がない」ということで釈放されることがあります。何故か弁護士向けの本では書いていないのですが、これが実現すれば一番早く釈放されます。そのためには、勾留請求を阻止する場合と同じように、身元引受人の準備などをして、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを示す必要があります。モデルケースでは、下記最高裁判例の評釈も添付して釈放を求めました。その結果、検察官送致前に釈放されました。
※犯罪捜査規範
https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50400000002#Mp-Ch_5
(司法警察員の処置)
第130条司法警察員は、被疑者を逮捕し、又は逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちにその者について次に掲げる処置をとつた後、被疑者の留置の要否又は釈放について、警察本部長又は警察署長の指揮を受けなければならない。
(1)犯罪事実の要旨を告げること。
(2)弁護人を選任できる旨を告げること。
(3)前号に掲げる処置をとるに当たつて、弁護士、弁護士法人(弁護士・外国法事務弁護士共同法人を含む。第132条において同じ。)又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨及びその申出先を教示すること。
(4)弁解の機会を与え、その結果を弁解録取書に記載すること。
2司法警察員は、前項第2号に掲げる処置をとるに当たつては、被疑者に対し、次に掲げる事項を教示しなければならない。
(1)引き続き勾留を請求された場合において、貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは、裁判官に対して弁護人の選任を請求することができること。
(2)裁判官に対して弁護人の選任を請求する場合は、刑訴法第36条の2に規定する資力申告書を提出しなければならないこと。
(3)被疑者の資力が50万円以上であるときは、あらかじめ、第1号の勾留の請求を受けた裁判官の所属する裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内に在る弁護士会に弁護人の選任の申出をしていなければならないこと。
3被疑者が留置されている場合において、留置の必要がなくなつたと認められるときは、司法警察員は、警察本部長又は警察署長の指揮を受け、直ちに被疑者の釈放に係る措置をとらなければならない。
4被疑者の留置の要否を判断するに当たつては、その事案の軽重及び態様並びに逃亡、罪証隠滅、通謀等捜査上の支障の有無並びに被疑者の年齢、境遇、健康その他諸般の状況を考慮しなければならない。
最判平成8年3月8日
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55870
判示事項
司法警察員による被疑者の留置についての国家賠償法一条一項所定の違法性の判断基準
裁判要旨
司法警察員による被疑者の留置は、司法警察員が、留置時において、捜査により収集した証拠資料を総合勘案して刑訴法二〇三条一項所定の留置の必要性を判断する上において、合理的根拠が客観的に欠如していることが明らかであるにもかかわらず、あえて留置したと認め得るような事情がある場合に限り、国家賠償法一条一項の適用上違法の評価を受ける。
【参考文献】
昇任試験問題研究会編著『全訂版体系整理警察実務用語辞典 第8回全訂版』(日世社,2006年9月)291頁
【被疑者留置の要否を判断する要素
犯罪捜査規範一三○条三項は「被疑者の留置の要否を判断するに当たっては、その事案の軽重及び態様並びに逃亡、罪証隠滅、通謀等捜査上の支障の有無並びに被疑者の年齢、境遇、健康その他諸般の状況を考慮しなければならない」と規定している。
(1)通常逮捕の場合は、誤認逮捕ではないか、逮捕状の有効期間内か、逮捕手続は、適正に履践しているか、緊急逮捕の場合は、逮捕要件を充足しているか、現行犯や準現行犯逮捕の場合は、その要件に当てはまっているか、時間を経過し、緊急逮捕すべきものでないか等である。
(2)逃亡のおそれの有無については、住居、家族関係、職業関係、年齢、社会的地位、身柄引請人の有無等の身上関係、また、犯罪の軽重、前科前歴、執行猶予、余罪等の犯罪関係、被疑者の態度等である。
(3)証拠隠滅のおそれの有無は、証拠が十分確保されていない。目撃者や参考人等の取調べが終わっていない又は未逮捕の共犯者があり、通謀や証拠隠滅のおそれがある等が一応考えられる。側その他諸般の事情は、高齢者(おおむね七十歳以上)か、年少者か、健康状態、被害者の感情、特に示談成立、被害回復、処罰を望まない等である。】