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薬院法律事務所

一般民事

とにかく早く離婚したいので、どうすれば良いかという相談(離婚、一般民事)


2024年10月29日一般民事

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は、福岡市内に住む35歳の既婚女性です。共働きしている3歳上の夫との間には子どもはいません。5年前友人の紹介で知り合い結婚したのですが、結婚当初から気持ちが通じないと思うことが多く、私に対して馬鹿にするような事も良く言ってきます。最近、「子どもが欲しい」と言ってくるようになったのですが、彼の子どもは産みたくないです。離婚して人生をやり直したいのですが、夫は離婚しないと言っています。どうすれば良いでしょうか。

A、まずは早急に別居することが大事です。その上で、相手が応じないのであれば、慰謝料請求や財産分与請求はせずに「離婚」だけを求めるという手法が考えられます。

 

【解説】

一般に、裁判離婚事由である民法770条1項1~4号は、770条1項5号の「婚姻を継続しがたい重大な事由(婚姻破綻)」の例示とされています。婚姻破綻の認定にあたっては別居期間が一番重要で、相当期間の別居がない場合には相手方の有責行為を主張・立証しないといけません。ただ、いずれにしても重要なことは、離婚だけを求めるのか、慰謝料請求も併せてするのかという選択です。相談事例であれば、「モラハラ」を理由として有責行為を主張・立証することが考えられますが、早期解決を目指すのであればあえて慰謝料請求まではせず、「性格の不一致」を理由として、離婚のみを請求するという手法もあります。この辺りの選択は弁護士と良く相談した上で行うべきでしょう。

 

民法

https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

 

【参考文献】

東京地方裁判所判事・阿部潤「「離婚原因」について-裁判実務における離婚請求権を巡る攻防-」東京弁護士会弁護士研修センター運営委員会『平成17年度専門弁護士養成連続講座 家族法』1頁~

18頁

「破綻の原因がいずれにあるかという有責性の問題は、損害賠償請求の請求原因事実となりますが、弁論主義が適用される領域となります。資力のない相手方に対する離婚請求において、民法770条1項5号に基づき離婚のみを求める場合と、同号に基づき離婚及び離婚に伴う慰謝料の支払いを求める場合がありますが、争点整理及び審理のスピードはまったく異なるわけです。相当期間の別居がある場合、相手方は、自らも離婚請求の反訴を提起しない限り、破綻の原因論を法廷で主張しても意味がないわけです。このところ、このような婚姻破綻の捉え方をよく理解した上で、離婚のみを求めてくる原告代理人が増えたように思います。これに対して、被告代理人の理解が足りず、主張がかみあわず、思わぬ敗訴をしてあわてている姿を見るのです」(18頁)。