シェアハウスは転貸借契約になるのか?(賃貸借問題)
2019年08月22日賃貸借事件(一般民事)
シェアハウスと転貸借契約の成否の有無についての記述です。単なる同居人は独立の占有を持たないとされますが、シェアハウスの場合は転借人では?という話になります。
※借地借家法
(建物賃貸借終了の場合における転借人の保護)
第三十四条 建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。
2 建物の賃貸人が前項の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から六月を経過することによって終了する。
田山輝明・澤野順彦・野澤正充編『新基本法コンメンタール借地借家法【第2版】』(日本評論社,2019年6月)223頁
【転貸借関係が存するか否かが争われ得るものとして、いわゆるシェアハウスの事案がある。「シェアハウス」という形態は、特定の個人に対し有料で建物のうちの一部屋ないし一区画の利用を許し、トイレ。キッチンなどについては他の部屋・区画の利用者と共用させるといった、安価な居住空間の提供を内容としており、近時増加してきている契約類型である。かつての「間貸し」「間借り」を現代化・合理化したものといえる(間貸しについては、星野337頁以下を参照)。そして、シェアハウス経営者が建物の所有者から建物を一括して借り受け、シェアハウス営業を行うということがしばしば行われてきているが、その場合に、建物の転貸借として本条の適用の対象となるのかが問題となってくる。
そもそも、賃借人の同居人、賃貸ビルで営まれているホテルの宿泊客などは、賃借人から建物の全部または一部の利用を許されてはいるけれども、建物に対する独立した占有を持たず、転借人とはいえないため本条の適用を受けない。シェアハウス契約に基づく建物利用をホテル・旅館での宿泊等と同様に捉えると、シェアハウスの利用者には本法が適用されないことになる。しかし、宿泊契約と賃貸借契約とは、前者においては、契約で定められた条件を満たす寝泊まりの環境を提供することが内容とされており、そのような環境が提供されれば、(一定の枠はあるにしても)建物のどの区分を提供しても給付の完全な履行となり得るのに対し、後者においては、「特定の空間」を継続的・排他的に使用させることが内容とされており、原則として提供者側の都合で利用空間を変更することができないといった点等で異なっている。シェアハウスの形態においても、その大小を問わず「特定の空間」をある程度継続的かつ排他的に使用させることが内容とされている場合には(そのような内容を有するのが常態であるものと思われる)、賃貸借契約と捉えられることになり、一時使用目的ではないということになれば本法の適用が認められることになる(シェアハウスの利用契約が借家契約であることを前提とするものとして、東京地判平27・11・10LEX/DB15542566)。】