パパ活相手から、隠しカメラで盗撮されていたという相談(犯罪被害者)
2025年02月02日犯罪被害者
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は20代女性です。マッチングアプリでパパ活(売春)をしているのですが、先日知り合った客から再度会いたいとメッセージがきたのですが、気分が乗らなかったのでお断りしたこと、「実は撮影していた。また会ってくれるなら消すつもりだよ。」とメッセージがあり、短い動画が送られてきました。確かに私が客と性交している姿が映っていたので怖いのですが、どうすればいいでしょうか。警察に行ったら私がパパ活をしていたことも問題にされるかもしれないと思いますし、客が逆上して動画をネットに流されるのも怖いです。
A、早急に、警察に通報してください。警察を介入させて物理的にデータを回収することが最適解です。
【解説】
以下の解説は、あくまで架空事例を前提としたものであり、実際には個別事案の詳細や証拠の有無、地域の捜査実務によって対応が変わります。犯罪被害者代理人弁護士としては「依頼者(被害者)の安全とプライバシーを最優先しながら、犯罪行為(盗撮・恐喝・脅迫)に対処する」というスタンスでアドバイスを行います。ご自身のリスクを最小化しつつ、速やかに専門家(弁護士や警察)に相談することを強く推奨します。
1. 本件における違法行為の整理
- 盗撮・無断撮影(性的姿態等撮影罪)
- 2023年7月施行の改正刑法により、相手が性的行為を撮影するには、被写体の「明示的同意」が必要です。
- 今回は「性交中の姿」を無断で撮影されたという点で、明らかにこの法律に違反する可能性が高いです。
- 都道府県の迷惑行為防止条例にも「盗撮」の規定がある場合が多く、ここでも処罰対象となり得ます。
- 脅迫・恐喝(リベンジポルノを示唆)
- 「会わないと動画を流出させる」「消すつもりだが、会ってくれないとどうなるかわからない」という趣旨のメッセージは、脅迫や恐喝に該当し得ます。
- 加えて、動画が本人の承諾なく公開されるおそれがある場合、リベンジポルノ防止法(正式名称「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」)違反も視野に入ります。撮影者がこれを第三者に提供・公表すれば、同法の罰則適用対象です。
- 被害者側の違法行為(売春)について
- 日本では「売春防止法」により、反復継続して不特定の相手と性交をする行為は違法とされます。ただし、単に「金銭を受け取って性行為をした」側(女性)を直ちに処罰する規定がないこと、また被害者が恐喝・盗撮の被害を受けている重大性を考慮すると、警察が「まず被害者を取り締まる」というケースは比較的少ないと考えられます。
- もちろん法的・社会的リスクがゼロではありませんが、脅迫や盗撮という悪質な犯罪を放置する方が深刻であり、被害者としての保護も重視されるのが実務的な運用です。
2. 今後の具体的な対応策
2-1. 証拠保全・連絡記録の確保
- 相手から受け取ったメッセージ・動画・画像のデータは削除せず、スクリーンショットや保存などを行って確実に保管しましょう。
- 相手のアカウント(SNS、メール、電話番号等)の情報を整理しておき、可能なら会話の日時ややり取りの履歴を記録しておく。
- いざ警察・弁護士に相談する際、これらの証拠が非常に重要となります。
2-2. 二次被害防止のための基本策
- 相手とのやり取りをむやみに続けない
- 新たに写真や個人情報を送ってしまうと、さらなる脅迫材料に利用されるリスクが高まります。
- 直接会うと、身体的危険や追加の撮影リスクが高いので絶対に避けるべきです。
- SNS上でブロックするかどうかは慎重に
- ブロックすると相手が逆上して動画を拡散する可能性もあり得ます。
- 弁護士や警察と相談のうえ、「ブロックするか」「証拠収集を継続するか」を検討するのが望ましいです。
2-3. 警察への相談・被害届の提出
- 恐喝・脅迫としての刑事事件化
- 「再度会わないと動画を流す」旨の連絡は、明らかに脅迫・恐喝行為として刑事告訴できます。警察が受理すれば捜査を開始する可能性が高いです。
- 同時に**「盗撮被害」「わいせつ動画の無断撮影」**という観点からも被害届を出すことが考えられます。
- 被害届を提出して捜査が進めば、動画の保管先やアカウントなどを捜索・押収できる場合もあり、拡散防止につながる可能性が高まります。
- 売春行為によるリスク
- 繰り返しになりますが、警察は性売買の違法性も認識しますが、被害者の強要・脅迫事情を最優先に動くケースが多いです。
- 特に当人が「脅されている」「動画を流出させられる」という被害を訴えている以上、まずは加害者の恐喝行為が重点的に取り扱われる可能性が高いです。
- 女性支援センターや弁護士同席
- 警察に事情を説明するにあたっては、弁護士や性被害者支援団体の同席を求めることも有効です。
- どうしても警察とのやり取りに不安がある場合は、まず弁護士に代理で相談・同行してもらうのが安心です。
2-4. 弁護士を通じた差止め・示談交渉
- 動画の削除請求・拡散防止
- 弁護士が介入し、加害者に対して「これ以上の拡散を行わない」「既存のデータを削除する」「金銭の要求等をやめる」よう要求し、違反時には損害賠償責任を負う旨の誓約を取り付けるケースもあります。
- ただし、加害者が素直に応じるかは未知数であり、既に動画がどこかにアップロードされているリスクも否定できません。
- リベンジポルノ防止法に基づく仮処分・差止命令
- すでにネット上へ動画が投稿された場合、裁判所に「投稿削除の仮処分」を申し立てたり、プロバイダ・サイト管理者へ迅速な削除要請を行う方法があります。
- 拡散の早期段階で対応できれば、被害を最小限に食い止められる可能性があります。
2-5. 心理的サポート
- 性的な映像を無断で撮られ、さらに脅迫されている状況は深刻なストレスをもたらします。
- 専門のカウンセラー、女性センター、あるいは信頼できる知人・家族などに相談して、心理的なサポートを受けることも大切です。
- 弁護士事務所のなかには性犯罪・DV専門のセクションを設けているところもあり、心理支援やワンストップ対応が可能な場合があります。
3. まとめ―被害者弁護士の総合的アドバイス
- 証拠をしっかり確保
- 加害者からの脅迫メッセージや送られてきた動画は削除せず、安全な場所に保管。SNSやチャットアプリでの会話履歴も含めて記録を残しておく。
- 不安があるなら、まず弁護士に相談
- 「売春していたから警察に責められるのでは…」と躊躇していると、その間に動画が拡散される危険があります。
- 弁護士が代理人として一緒に警察へ行く、または法的措置を検討することにより、被害者が不利益を被るリスクを最小化できます。
- 警察への被害届・告訴を視野に
- 恐喝・盗撮行為(およびリベンジポルノ防止法違反)の疑いで、積極的に捜査を求めることが重要。
- 性的被害の相談に慣れた警察の部署(生活安全課や性犯罪対策部署)に直接相談するとスムーズに対応されやすい。
- 拡散防止対策と示談交渉
- 加害者が「データを消す」と応じるまでの過程で、弁護士による交渉・誓約書の作成は極めて有効。
- ネット流出してしまった場合でも、サイト管理者やプロバイダへ削除依頼・仮処分などの法的措置を講じることで被害を食い止める。
- 自身の心身の安全を最優先
- 再度の接触要求や脅迫を受けても、決して一人で会わない・応じない。
- 怖い思いをしたら遠慮せず警察に通報し、周囲のサポートを得る。
最終的見解
- 売春を理由に被害届を出すことに消極的になる必要はない
- 日本の実務では、被害者が脅迫されている場合、まずは脅迫・恐喝・無断撮影行為を重視して捜査が進む場合が多いです。
- 放置するとエスカレートする恐れ
- 加害者が言うがままに会ったとしても、動画が消される保証はなく、さらなる脅迫や金銭要求が繰り返される典型的なリスクがあります。
- 弁護士等の専門家を通じて早期対応を
- 対処を先延ばしにすると被害が深刻化するので、早い段階で相談し、示談(削除・拡散防止)や刑事手続への移行を検討することが重要です。
被害者としては非常に勇気がいる決断ですが、犯罪被害については警察や弁護士があなたを守るために動きます。また、撮影・脅迫という悪質行為に対して毅然とした態度をとることで、動画の拡散リスクを抑制できる可能性が高まります。ぜひ専門家の助力を得て、安全確保と被害回復に全力で取り組むことをお勧めします。
※性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律
(性的姿態等撮影)
第二条次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロイに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態
二刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
三行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
四正当な理由がないのに、十三歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は十三歳以上十六歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為
2前項の罪の未遂は、罰する。
3前二項の規定は、刑法第百七十六条及び第百七十九条第一項の規定の適用を妨げない。
https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000067#Mp-Ch_2
※福岡県迷惑行為防止条例
(卑わいな行為等の禁止)
第六条
3 何人も、正当な理由がないのに、第一項に規定する方法で次に掲げる行為をしてはならない。
一 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所で当該状態にある人の姿態をのぞき見し、又は写真機等を用いて撮影すること。
二 前号に掲げる行為をする目的で写真機等を設置し、又は他人の身体に向けること。
(罰則)
第十一条 第六条又は第八条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
第十二条 常習として前条第一項の違反行為をした者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
https://www.police.pref.fukuoka.jp/data/open/cnt/3/4139/1/meibo.pdf?20190620183453