万引きした商品をこっそりお店に返しにいったが、刑事事件になるかという相談(万引き、刑事弁護)
2024年11月22日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は福岡市に住む30代の主婦です。私は、毎日職場の帰り道にあるスーパーに買い物に行っているのですが、自分でも何故なのかわからないのですが、先月、衝動的にチョコレート菓子をハンドバッグに入れて、そのまま他の商品を精算してお店を出ました。お店の外に出て、駐車場の車に乗ってから我に返り、10分ほど悩んでから結局戻って元の場所にこっそり戻しました。後で防犯カメラから見つけられて万引きとして警察が来るんじゃないかと毎日怖いです。大丈夫でしょうか。
A、理屈上はハンドバッグの中にチョコレート菓子を入れた時点か、遅くともお店を出た時点で「窃盗罪」が成立します。とはいえ、現実に商品の被害が出ていないこと、現行犯ではないこと、持ち出したものが小さな低額の商品であることからすると、現実的に万引き事件として立件される可能性はまずないと思います。ただ、「万引き」をしてしまったことには、自分自身で気付かないストレスが隠れていますので、そこを解決する必要があります。DVやモラル・ハラスメントなどで気付かないうちに疲弊しきってしまい、そういったストレスが反社会的行動として発現することがあります。
【解説】
極端なストレスがかかった人が、ご相談のような「反社会的行動」にでることはしばしばあります。真面目な社会人で、むしろ他の同僚から仕事を押しつけられているということもあります。その理由については人それぞれなのですが、ご自身の身体から出ているSOSサインだと思うべきです。想定事例については、仮に通報されたとしてもまず確実に(弁護士の職務基本規程上100%の保証はできないのですが)、厳重注意、微罪処分や不起訴となる事案です。どうしても抱え込んで苦しいという場合は、信頼できそうな弁護士に相談することもいいと思います。自分の気持ちを吐き出すことで、苦しみを自覚して楽になったということは良くあります。
弁護士職務基本規程
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/rules/data/rinzisoukai_syokumu.pdf
(受任の際の説明等)
第二十九条 弁護士は、事件を受任するに当たり、依頼者から得た情報に基づき、事件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について、適切な説明をしなければならない。
2 弁護士は、事件について、依頼者に有利な結果となることを請け合い、又は保証してはならない。
3 弁護士は、依頼者の期待する結果が得られる見込みがないにもかかわらず、その見込みがあるように装って事件を受任してはならない。
【参考文献】
木村昇一「検察官から見た警察捜査のポイント 窃盗事件を中心として(第3講)窃盗事件の既遂時期について」警察公論2020年5月号10-15頁
10-11頁
【万引き事案について,実務上,具体的にどの時点を既遂時期(あるいは犯行時刻)と認定できるのかについてお話しします。
ここでは, スーパーマーケット等で同一機会に,複数の商品を犯人が所持していた手提げバッグに隠匿して万引きした事案を想定して考えてみましょう。
ア商品の占有取得時(隠匿時)を既遂時期とする考え方
取得説の立場は,犯人が商品の占有を取得した時に窃盗罪は既遂に達すると考えるので,犯人が店内にとどまっていても,商品の占有取得時(隠匿時)が既遂時期となります。】
https://cir.nii.ac.jp/crid/1521699230978142336