不倫であっても、青少年健全育成条例違反(淫行)とされないことがあります(性犯罪、刑事弁護)
2020年02月09日刑事弁護
女子高生と不倫したような場合でも、いわゆる青少年健全育成条例の「淫行」と認められず無罪となった事案があります。
ただ、その事案は、後日不当逮捕であると国家賠償請求が起こされ、高等裁判所では事実上淫行と認めるような判決が出されています。
【 犯罪の嫌疑の有無
前記によれば,被控訴人には妻があるから,被控訴人とA子との性行為は,単に成人と18歳未満の青少年との性行為というにとどまらず,被控訴人の妻に対する関係で民事上不法行為を構成する違法行為であり,このような関係を継続すれば,A子において被控訴人の妻から損害賠償を請求され得るのであり,双方独身(あるいは婚姻関係が破綻している場合)の恋人同士の関係とは質的に明らかに異なっているところ,31歳の社会人で妻子のある被控訴人は,被控訴人とA子とがこのような関係であることを理解していたばかりか,妻と離婚してA子との婚姻に発展することは望んでいなかったと認められる。そして,被控訴人は,A子がアルバイトとして働く店舗の副店長という立場でA子を管理監督する立場にあり,その職務上もA子との関係が一定範囲から逸脱しないようにすべき立場にあった。他方で,A子は高校生であり,前記のとおり,被控訴人と婚姻に発展することは望まないが,被控訴人が真剣に付き合うというのであれば妻子があっても性的関係にも同意するというのであり,被控訴人との交際の社会的・法的意味の理解は十分でなく,被控訴人の真剣度に関心があったと認められる。したがって,被控訴人は,上記のとおりその身分的・雇用関係上の立場を顧みることなく,被控訴人との性行為が法的にいかなる意味を持つかを十分に理解していない18歳未満のA子との間で本件性行為に至ったということができる。
殊に本件においては,被控訴人がA子と初めてのデートをしてからわずか1か月余り(本件警察官らの認識。実際には約2週間程度)で性行為に至っており,本件性行為までの2か月弱の間で少なくとも4ないし5回(本件警察官らの認識。実際には8回)の性行為を持っている。このような場合,本件規定にいう「いん行」のうち,昭和60年大法廷判決がいう第2形態の性行為に当たる蓋然性が高いということができる。】
名古屋高判平成23年4月14日
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=81513
判示事項の要旨
被控訴人は,当時17歳であったA子と性行為をしたことについて,愛知県青少年保護育成条例に違反するとして,逮捕,勾留,公訴提起され,その後,無罪判決が確定したため,(1)愛知県に対し,警察官による逮捕状請求等と警察官から意思に反して供述調書に署名・押印させられたことが違法であるとして,(2)国に対し,検察官による勾留請求,公訴提起等と検察官から意思に反して供述調書に署名・押印させられたことが違法であるとして損害賠償の支払を求めた事案について,31歳の社会人で妻子のある被控訴人が,妻と離婚する意思はなく,最初のデートからわずか2週間ないし1か月程度でA子と性行為に至っているなどの事情によれば,警察官又は検察官が,被控訴人について,A子を「単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような場合」に当たると判断し,逮捕状請求,勾留請求,公訴提起等したことに,合理的根拠が欠如しているとは認められないし,供述調書作成に違法はないとして,原判決を変更して被控訴人の請求を棄却した。
【参考文献】
少年非行問題研究会編『4訂版 わかりやすい少年警察活動』(東京法令出版,2023年5月)144頁
【「淫行」であることを立証するためには、「青少年の年齢の知情性」や「性行為の存在」はもちろんのこと、「被疑者の年齢や生活事情」、「被害少年の年齢や生活事情」、「両者の出会いのきっかけと交際の状況」、「性行為に至った経緯や性交渉の状況」、「性や男女の交際に対する価値観」等を明らかにする必要があろう。被疑者が妻子ある男性であっても、青少年との恋愛関係を主張して結局無罪になった例もあるので注意が必要である。】
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