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薬院法律事務所

企業法務

不動産売買契約書を作成していても、契約の成立が否定されることがあります。


2021年07月31日企業法務

不動産売買において、「契約書」と題する書面を交わしていても、後日公正証書による契約書が作成させる予定であったことを理由に契約の成立を否定した裁判例があります。

これは他の契約においてもあることで、通常は契約書を交わしたらその時点で契約成立です。

しかし、後日正式な契約書を交わす予定であったということで、契約の成立が否定されることはあります。

ただし、契約の成立が否定されたからといって、契約の成立を望む側が一切損害賠償請求をできないということもなく、

「契約締結上の過失」があるといった理由で一定の損害賠償を請求することができることもあります。

塩崎勤ほか編『【専門訴訟講座⑤】不動産関係訴訟』(2010年7月号)8頁
【契約書が作成された場合売買契約書が作成された場合に、少なくともその時点で契約の成立が認められることには学説上も異論はない。
ただし、契約書と題する書面を交わしても、後に公正証書による契約書の作成を予定している場合には、契約の成立が否定される場合がある。
東京高判昭和54.11. 7下民集30巻9~12号621頁【1】は、土地の売買に関して、代金額(1億8000万円)や地上建物の取壊し費用を買主が負担するなど、約定すべき事項のすべてについて合意が成立し、後に公正証書による契約書を作成することにしつつ、買主Xからの求めに応じて「土地付建物売買契約書」と題する書面の売主名欄に、売主Yがその記名用ゴム印を押捺したばかりでなく、売主Y自らも、特約事項を記載した書面を作成して買主Xに交付し、そして、買主Xは買受代金の全額を金融機関から融資を受けて準備したが、公正証書による契約書を作成する予定日の直前に、売主Yが他の第三者に同土地を売却した事案において、同判決は、土地の売買契約の成立を否定した。
「XとYとの間で本件土地の売買に関して約定すべき事項につきほぼ合意が成立し、確定的契約の締結は、公正証書による契約書の作成をもってすることとして、右契約日を定めたけれども、結局、契約書が作成されるには至らなかったのであり、かかる事実関係の下にあっては、XとYとの間にいまだX主張の売買契約が成立したということはできない」と述べている(同判決は上告されたが、前掲最判昭和58.4 .19は、特に理由をあげることなく、同判決の判断は正当として、上告を棄却した)。
このように売買契約書と題する書面に記名用ゴム印を押捺し、自ら特約事項を記載していた場合でも、後に公正証書による契約書の作成が予定されているときには、契約の成立は認められない。】

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