他の居住者による出入りに合わせてオートロックをすり抜けてマンション内に入ることは犯罪になるかという質問
2025年09月25日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、東京都に住む成人男性です。先輩から「必ず儲かるから」といわれてお金を借りて500万円の出資をしたのですが、期日になっても返してくれず、LINEもブロックされて連絡がとれなくなりました。住んでいるところはわかっているのですが、オートロック機能付のマンションなので入れません。他の住人が立ち入るときに後ろについていけば、相手の部屋の前までいけると思います。どうしても赦せないので直接会いたいのですが、犯罪にならないか心配です。
A、「邸宅侵入罪」(刑法130条)が成立する可能性が高い危険な手法です。弁護士に依頼して訴訟手続を取ることをお勧めします。
【解説】
最近は、オートロック機能付のマンションが増加しています。そのため、玄関でインターフォンを押しても反応しないということから、どうしても会う必要があると思ってオートロックをすり抜けてマンション内に立ち入ろうとする方がいます。しかし、これは非常に危険な行為です。仮に明示的に立ち入り禁止の貼り紙などがなくても、邸宅侵入罪とされる危険性があります。
刑法
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045#Mp-Pa_2-Ch_12
(住居侵入等)
第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。
福岡高判平成28年 7月 5日判タ 1431号138頁の判例評釈
奥村寿行(法務省刑事局付)「最新・判例解説 第35回 オートロック式の玄関を有するマンション内に,他の居住者による出入りに合わせてオートロックをすり抜けて立ち入った行為について,邸宅侵入罪が成立するとされた事例」捜査研究 795号30-38頁
【本件マンションは,居住者の住居に供するための建物であって,居住者やその者の承諾を得た者以外の者が内部に立ち入って使用することを想定した建物ではない上,本件マンションの出入口は,オートロック式の扉及び施錠された非常口のみであって,居住者やその者の承諾を得た者以外の者が立ち入ることができないような構造となっていることからすれば本件マンションの管理会社が居住者やその者の承諾を得た者以外の者の立入りを許さない態度を示していることは明らかであり.居住者とその許可を得た者以外の立入りを許容していないという本件マンションの構造と管理状況等を理由に邸宅侵入罪の成立を認めた本判決の結論は妥当である。】(36-37頁)