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薬院法律事務所

刑事弁護

令和7年6月1日より前に下された執行猶予付判決と、いわゆる「弁当切り」の可否について


2025年11月08日刑事弁護

誤解されている方がいるようですので記事を作成いたしました。令和7年6月1日施行の改正刑法により、裁判を引き延ばすことで前刑の執行猶予期間を満了させるいわゆる「弁当切り」はできなくなりました。もっとも、令和7年6月1日より前に言い渡された執行猶予付判決については、依然として弁当切りが可能です。法曹時報に掲載されている解説でも明言されています。
中野浩一ほか「刑法等の一部を改正する法律及び刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律について」法曹時報77巻8号(2025年8月号)39-178頁(145頁)
【本条は、刑の執行猶予の猶予期間経過の効果に関する経過措置について規定する。
1 第1項
本項は、新刑法第27条第2項から第6項まで及び第27条の7第2項から第6項までの規定の適用関係について規定する。
新刑法第27条第2項から第6項まで及び第27条の7第2項から第6項までの規定は、猶予の期間内(刑の一部の執行猶予の場合にあっては、猶予の言渡し後その猶予の期間を経過するまで。以下本条の解説において同じ。)に更に犯した罪について公訴が提起されていれば、猶予の期間の経過後に当該罪の有罪判決が確定した場合であっても、猶予の言渡しに係る刑を執行し得ることとするものであるところ、旧刑法の下においては、刑の執行猶予の言渡しを受けた者が猶予の期間内に更に罪を犯した場合であっても、猶予の期間の経過後はその猶予の言渡しを取り消すことはできないこととされていたものであり、刑法等一部改正法の施行前に言い渡された刑の執行猶予は、猶予の期間の経過後は取り消すことができないものとして言い渡されたものともいうことができ、仮に、刑法等一部改正法の施行後はこれを猶予の期間の経過後にも取り消すことができることとすると、その猶予の言渡しを受けた者にとって不利益な取扱いの変更となりかねない。
そこで、本項において、新刑法第27条第2項から第6項まで及び第27条の7第2項から第6項までの規定は、刑の執行猶予の言渡しが刑法等一部改正法の施行後にされた場合について、適用することとされた。】

刑法

(刑の全部の執行猶予の猶予期間経過の効果)
第二十七条 刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。
2 前項の規定にかかわらず、刑の全部の執行猶予の期間内に更に犯した罪(罰金以上の刑に当たるものに限る。)について公訴の提起がされているときは、同項の刑の言渡しは、当該期間が経過した日から第四項又は第五項の規定によりこの項後段の規定による刑の全部の執行猶予の言渡しが取り消されることがなくなるまでの間(以下この項及び次項において「効力継続期間」という。)、引き続きその効力を有するものとする。この場合においては、当該刑については、当該効力継続期間はその全部の執行猶予の言渡しがされているものとみなす。
3 前項前段の規定にかかわらず、効力継続期間における次に掲げる規定の適用については、同項の刑の言渡しは、効力を失っているものとみなす。
一 第二十五条、第二十六条、第二十六条の二、次条第一項及び第三項、第二十七条の四(第三号に係る部分に限る。)並びに第三十四条の二の規定
二 人の資格に関する法令の規定
4 第二項前段の場合において、当該罪について拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないときは、同項後段の規定による刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。ただし、当該罪が同項前段の猶予の期間の経過後に犯した罪と併合罪として処断された場合において、犯情その他の情状を考慮して相当でないと認めるときは、この限りでない。
5 第二項前段の場合において、当該罪について罰金に処せられたときは、同項後段の規定による刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消すことができる。
6 前二項の規定により刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消したときは、執行猶予中の他の拘禁刑についても、その猶予の言渡しを取り消さなければならない。
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045#Mp-Pa_1-Ch_4-At_27

刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律 抄

(刑の執行猶予の猶予期間経過の効果に関する経過措置)
第四百四十八条 新刑法第二十七条第二項から第六項まで及び第二十七条の七第二項から第六項までの規定は、新刑法第二十五条又は第二十七条の二(これらの規定を前条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定による刑の全部の執行猶予の言渡し又は刑の一部の執行猶予の言渡しが刑法等一部改正法の施行の日(以下「刑法等一部改正法施行日」という。)以後にされた場合について、適用する。
2 新刑法第二十七条第四項若しくは第五項の規定により同条第二項後段の規定による刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消した場合又は新刑法第二十七条の七第四項若しくは第五項の規定により同条第二項後段の規定による刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消した場合において、執行猶予中の他の懲役又は禁錮があるときにおける新刑法第二十七条第六項又は第二十七条の七第六項の規定の適用については、新刑法第二十七条第六項中「についても」とあるのは「又は刑法等の一部を改正する法律(令和四年法律第六十七号)第二条の規定による改正前の第十二条に規定する懲役(以下「懲役」という。)若しくは同法第二条の規定による改正前の第十三条に規定する禁錮(以下「禁錮」という。)(いずれも第二項後段又は第二十七条の七第二項後段の規定によりその執行を猶予されているものを除く。)についても」と、新刑法第二十七条の七第六項中「についても」とあるのは「又は懲役若しくは禁錮(いずれも第二十七条第二項後段又はこの条第二項後段の規定によりその執行を猶予されているものを除く。)についても」とする。