会社の飲み会で同僚に殴られたので、会社に慰謝料請求をしたいという相談(労働問題、犯罪被害者)
2024年09月27日労働事件(企業法務)
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、福岡市で一人暮らしをしている30代の会社員です。先日、会社の飲み会に参加したところ、同僚が酔っ払って私に絡んできて、反論したらいきなり殴りつけてきました。警察に被害届を出して刑事事件にしてもらっているのですが、本人は借金だらけでお金がないようです。会社に対して治療費や慰謝料、休業損害などを請求したいです。
A、会社に対する賠償請求ができるかは事案によります。弁護士の面談相談を受けられて下さい。
【解説】
会社の従業員同士で喧嘩があった場合に、使用者責任(民法715条(を問うことが考えられます。従業員同士での暴行については、業務との関連性が特に問題になります。一般に使用者責任は事業の執行の外観があれば良いとされますが、暴行については外観云々を議論するのは意味がないと言われ、暴行と事業の執行行為の関連性が吟味されます。「事業の執行を契機とし、これと密接な関連を有するときは、事業の執行について加えた損害にあたる」とした最高裁判例があります(最高裁昭和44年11月18日民集23巻11号209頁)。なお、例外的にですが、強制参加の飲み会などであれば「労働災害」と認められることもあります。
【参考裁判例】
最高裁昭和44年11月18日民集23巻11号209頁
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51976
判示事項
被用者が事業の執行につき第三者に加えた損害にあたるとされた事例
裁判要旨
使用者の施工にかかる水道管敷設工事の現場において、被用者が、右工事に従事中、作業用鋸の受渡しのことから、他の作業員と言い争つたあげく同人に対し暴行を加えて負傷させた場合、これによつて右作業員の被つた損害は、被用者が事業の執行につき加えた損害にあたるというべきである。
名古屋地判昭和58・11.30判タ520号184頁(27424156]
「被用者の暴力行為について使用者に民法七一五条の使用者責任が認められるためには、少なくとも当該行為が使用者の事業の全部又は一部を遂行する過程でなされたものであることが必要不可欠の要件であると解するのが相当であるところ、前認定事実によれば、被告松谷及び被告豊商事の氏名不詳の従業員二名の原告重則に対する暴力行為は、被告松谷が被告豊商事主催の行事終了後の自由時間中に同僚と私的な宴会を催していた際、フロントへ右宴会用のビールを注文に赴いたことが契機となつて発生したものであつて、被告豊商事の事業を遂行する過程でなされたものではないから、被告豊商事は本件事故について使用者責任を負わないものというべきである。 」