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薬院法律事務所

刑事弁護

保護観察付の執行猶予中に万引きを再度してしまった場合の弁護士の選び方(万引き、刑事弁護)


2025年01月30日刑事弁護

プロンプト

【では次に執行猶予期間中に万引きをした方が逮捕を回避したいと思い自首同行を依頼する場合の弁護士の選び方を教えてください。こういう内容です。Q、私は、福岡市に住む40代の専業主婦です。万引き依存症で、保護観察付の執行猶予判決を受けていたのですが、執行猶予期間中に再度万引きをしてしまいました。発覚はしていないと思うのですが、不安で自首したいと考えました。しかし、どの弁護士さんに相談をしても、「発覚したら刑務所に行くのは間違いない。自首はお勧めできない。」といわれてしまい、途方にくれています。まだ小学生の子どもがいるので、刑務所だけは行きたくないのですが、どうにかならないでしょうか。】

万引き事件弁護要領(在宅事件)

以下では、「執行猶予期間中に万引きをしてしまい、自首を検討しているが、逮捕・収監をできるだけ回避したい」という方が、どのように弁護士を選べばよいかを中心に解説します。万引き依存症や再犯のリスクがある状況で、家族(小学生のお子さんなど)がいるため、絶対に刑務所には行きたくないという切実な事情を抱えているケースです。具体的にどのような弁護士を探し、どのような観点で選べばよいかを順を追って整理していきます。


1. 「再犯案件」に強い弁護士を探す

(1) 重点的に扱っている分野かどうかを確認

  • 刑事事件を主に扱っている弁護士か
    刑事事件の経験が乏しい弁護士だと、再犯案件(執行猶予期間中の違反行為)や依存症案件の特殊性を十分に理解していない可能性があります。万引き・窃盗、特に何度も繰り返す依存症的な事案を扱った経験があるかどうかを確認しましょう。
  • 再犯事件・執行猶予取消の回避事例の有無
    執行猶予期間中の違反行為は、通常は厳しく処罰されますが、「実際にどれくらいの事例を担当し、どういう結果を得てきたか」という点を面談などで質問してみてください。曖昧な回答ではなく、多少の概略(不起訴になった例、執行猶予維持になった例など)を示してくれるなら、経験豊富である可能性があります。

(2) 保護観察の経験に対応できるか

  • 保護観察所との連携や理解
    すでに保護観察付の執行猶予中である場合、保護観察所や担当の保護司との関係も重要になってきます。その点、刑事弁護人として保護観察所とのやり取りや再犯防止の取り組みをサポートしてきた経験がある弁護士だと安心です。

2. 万引き依存症(窃盗症)に対する理解・サポートの有無

(1) 依存症や精神科的な治療への理解

  • 再犯防止プログラムの活用
    万引き依存症(窃盗症)と診断され、通院やカウンセリングが必要となるケースでは、弁護士自身が依存症について正しい理解を持っているかどうかが極めて重要です。再犯防止に向けたプログラムや医療機関を紹介してくれる弁護士だと、裁判所や検察に対して「再犯防止の取り組みをしている」ことを説得的に示せる可能性があります。
  • 医療やカウンセリングの紹介
    「精神科や専門クリニックで受診して診断書を取る」「盗癖防止のグループセラピーに通う」といった具体的な提案をしてくれる弁護士は、再犯防止策の大切さを理解しています。こうした取り組みが検察・裁判官の判断に大きく影響する場合があるため、依存症対策に積極的に取り組む姿勢のある弁護士を探しましょう。

(2) 更生プランの立案能力

  • 「刑務所回避=社会復帰」を重視するか
    執行猶予取り消しを避けるためには、単に「自首した・しない」ではなく、再犯防止策や生活環境の改善が必須です。弁護士から「具体的にどのような更生計画を立てるか」の提案があるかどうかを見極めてください。
  • 家族との協力体制
    小学生のお子さんがいる主婦の場合、家族サポートや生活面の安定が再犯防止に重要です。家族を交えた話し合いや、家族がどのように協力すればよいかを弁護士がアドバイスしてくれるかも大きなポイントです。

3. 自首のメリット・デメリットを正直に説明できる弁護士

(1) 自首をめぐる現実的なリスク

  • 執行猶予取り消しリスクは高い
    執行猶予期間中の新たな犯罪は、基本的には執行猶予が取り消され、実刑になる可能性が非常に高いというのは事実です。一方で、状況次第では検察の判断や裁判所の審理で、必ずしも「絶対に実刑」とは限らないケースもあり得ます。
  • 「絶対無理」と断言するだけの弁護士は要注意
    多くの弁護士が「ほぼ実刑になる」と考えるのは経験的に仕方ない部分がありますが、「それでもなお何らかの可能性を探る」「弁護活動によって状況を改善できる余地がどこにあるか」を検討してくれる弁護士を選ぶべきです。頭ごなしに「あきらめろ」という姿勢の弁護士だと、依頼者としては前向きな方策を得られないかもしれません。

(2) 自首同行の有無

  • 同行してくれるかどうか
    自首をしたいと強く希望するなら、「弁護士が一緒に警察に出頭してくれる」ことをサポートしてくれるかは大きな違いです。同行自体が捜査機関の対応を和らげることもありますし、依頼者が余計なことを言ってしまうリスクを減らす意味でも、同行できる弁護士が望ましいでしょう。
  • 取り調べへの同席は困難だが、事前・事後フォローは可能
    日本では原則、取り調べへの弁護士立会いは認められませんが、少なくとも事前に「どんな点に気をつけるべきか」や「供述をどう整理しておくか」を相談できるかどうかで心の準備が全然違います。出頭後すぐに連絡できる体制を整えてくれる弁護士が理想的です。

4. 費用面・契約内容の確認

(1) 執行猶予中の再犯案件は費用が高額になる可能性

  • 難易度が高い案件=費用も高くなる傾向
    執行猶予中の再犯は、刑事弁護として難易度が上がるケースであり、示談交渉なども複雑化する可能性があります。また、依存症治療や専門家の意見書作成などに費用がかかる場合もあります。したがって、着手金や報酬金が相場より高くなることも珍しくありません。
  • 追加費用の発生条件を確認
    自首後にどんな手続きが必要になるか、被害者が特定され示談交渉が起こる場合の追加費用、裁判になった場合の報酬形態などを細かく確認しましょう。見積書や契約書で明示してもらうと安心です。

(2) 費用だけでなく「得られる弁護活動の内容」を比較

  • 弁護士費用の安さ・高さだけで決めない
    たとえ費用が高くても、万引き依存症への対応に真剣に取り組んでくれたり、保護観察との連携を丁寧にやってくれる弁護士のほうが、結果的に執行猶予取り消しを避ける可能性を少しでも高められるかもしれません。一方で、高額な料金を支払っても実質的な活動が乏しければ意味がありません。
  • 初回相談時に具体的な活動内容を尋ねる
    「どんな証拠を集めるのか」「医療機関の受診や専門プログラムをどう裁判所にアピールするのか」「自首同行を具体的にどう進めるのか」など、一通り質問して説明がスムーズに返ってくるかを基準にしてください。

5. 弁護士の「人柄」やコミュニケーション重視

(1) 依存症特有の悩みを否定せず受け止める姿勢

  • 「なぜ繰り返したのか」を理解してくれるか
    万引き依存症は意志が弱いからではなく、心理的・精神的な要因が絡む病的な状態です。これを「ただの怠慢」などと捉える弁護士だと、相談者の気持ちが萎縮して十分なコミュニケーションが難しくなります。
  • 共感と実務的解決策の両立
    「自分自身でどうしてもやめられなかった」「家族に知られるのが怖い」などの切実な悩みに寄り添いながら、冷静に法的手続きを進めるプロフェッショナルな視点を兼ね備えた弁護士を選びたいところです。

(2) 家族対応のスキル

  • 小学生のお子さんの存在をどう配慮してくれるか
    家族への打撃が大きい事案なので、仮に自首して逮捕される・起訴される場合に、お子さんのケアや代替の保護者手配などをどのようにサポートしてくれるかは重要です。
  • 家族に対する説明や説得
    「家族に事実をどう伝えるか」「今後の生活設計をどうするか」をアドバイスしてくれる弁護士もいます。必要に応じて家族面談を設定し、一緒に再犯防止策を考える場を作ってくれると安心です。

6. 複数の弁護士に相談して比較検討を

(1) まずは無料・有料の初回相談をいくつか受けてみる

  • 1人目の弁護士の意見だけで決めない
    一人に相談しただけで「あきらめるしかない」「自首なんか論外」と言われて絶望する必要はありません。弁護士によって見解が異なることもあります。少なくとも2~3名には話を聞いてみる価値があります。
  • 感覚的な相性も大事
    依存症の方は精神的に追い詰められやすいので、先生が威圧的だったり、説明が分かりにくかったりすると余計に不安が増幅します。安心して腹を割って相談できる相手かどうか、直接会ってみて判断してください。

(2) 「それでも弁護活動を尽くす」という姿勢のある弁護士を

  • 難しい事案にも粘り強く取り組むか
    執行猶予期間中の再犯は確かに厳しい結果が多いですが、刑事手続きで最終的にどのような結果になるかはケースバイケースです。医療的ケア、家族サポート、被害弁償(万引き先への対応)などを総合的に行い、「少しでも刑務所行きを回避・猶予継続させる可能性を探る」姿勢を持ってくれる弁護士が理想です。
  • 結論を急ぎすぎずに丁寧に方針を決める
    ただでさえ不安が大きい状況ですが、自首するかどうかは重大な決断です。一方で、発覚のリスクが高まれば逮捕の可能性も高い…。このジレンマを説明し、メリット・デメリットを整理してくれる弁護士であれば、最終的に依頼者自身が納得したうえで決断しやすくなります。

7. まとめ

  1. 再犯事案の経験豊富な刑事弁護人を探す
    • 執行猶予取り消しに関わる事案をどれだけ扱ったことがあるかが鍵です。
  2. 万引き依存症への理解や更生支援のノウハウを持つか
    • 依存症治療や再犯防止策をどの程度サポートしてくれるかを確認しましょう。
  3. 自首のメリット・デメリットを正直に説明できるか
    • ただ「無理」と断言するのでなく、わずかな可能性も含めて丁寧に検討してくれる姿勢を重視しましょう。
  4. 弁護士費用の透明性
    • 着手金や報酬の見積もりをきちんと出してもらい、どこまでの活動を含むか確認する。
  5. 人柄・コミュニケーション能力
    • 依存症の苦しみや家族への影響を真摯に受け止めながら、適切な法的アドバイスをしてくれる人を選ぶ。
  6. 複数人に相談して相性を見極める
    • 1人目の意見だけで即決せず、いくつかの事務所を回って納得のいく弁護士を選びましょう。

結び

執行猶予中の再犯という状況は、刑務所行きのリスクが非常に高いのは事実です。ただ、それが「絶対に免れない」というわけでもなく、最善を尽くす弁護活動によって一縷の望みをつなげるケースも皆無ではありません。また、万引き依存症という問題に正面から向き合い、治療や更生プランを立てることは今後の人生を立て直すためにも避けては通れません。

「どの弁護士さんに相談しても『お勧めできない』と言われた」という話を聞くと落胆するかもしれませんが、納得のいく弁護士に出会えれば、まだできることがあるはずです。自首するしないに関わらず、弁護士はあなたの状況や家族の事情に寄り添ってくれるパートナーになり得ます。ぜひ複数の弁護士を当たってみて、最も信頼できる方を選んでください。どうかお子さんを含めたご家族の生活や再犯防止のためにも、専門家と協力しながら最善策を模索していただければと思います。