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薬院法律事務所

刑事弁護

保釈請求を行う際に提出する「誓約書」「身元引受書」の作成方法(刑事弁護)


2025年02月20日刑事弁護

刑事弁護人であれば、被告人の「誓約書」、親族の「身元引受書」は必ず取るでしょうが、単に不動文字で定型文言が入ったものにサインさせるだけでは不十分です。

誓約書については、以下の参考書式にあるように、弁護人から保釈許可決定がなされた場合の遵守事項について明確に説明を受けたことを記録します。

身元引受書については、以下の文献にあるように、きちんと身分証明書のコピーをつけることはもちろん、被疑者・被告人と面会したのであればそのこと、弁護人と面会したのであればそこで協議した内容を具体的に記載してもらうことが大事です。被疑者・被告人の犯行内容について聴いた上で身元引受人に名乗り出ているということを示すことも良いでしょう。さらに、「身元引受書の写しを受領しました。」といった言葉もいれて、誓約を確実にします。

地味な話なのですが、結果を変えるのはこういう地味な活動の積み重ねです。

刑事訴訟法

第八十九条 保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏い怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。
第九十条 裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
第九十一条 勾留による拘禁が不当に長くなつたときは、裁判所は、第八十八条に規定する者の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない。
② 第八十二条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。
第九十二条 裁判所は、保釈を許す決定又は保釈の請求を却下する決定をするには、検察官の意見を聴かなければならない。
② 検察官の請求による場合を除いて、勾留を取り消す決定をするときも、前項と同様である。但し、急速を要する場合は、この限りでない。
第九十三条 保釈を許す場合には、保証金額を定めなければならない。
② 保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。
③ 保釈を許す場合には、被告人の住居を制限し、その他適当と認める条件を付することができる。
④ 裁判所は、前項の規定により被告人の住居を制限する場合において、必要と認めるときは、裁判所の許可を受けないでその指定する期間を超えて当該住居を離れてはならない旨の条件を付することができる。
⑤ 前項の期間は、被告人の生活の状況その他の事情を考慮して指定する。
⑥ 第四項の許可をする場合には、同項の住居を離れることを必要とする理由その他の事情を考慮して、当該住居を離れることができる期間を指定しなければならない。
⑦ 裁判所は、必要と認めるときは、前項の期間を延長することができる。
⑧ 裁判所は、第四項の許可を受けた被告人について、同項の住居を離れることができる期間として指定された期間の終期まで当該住居を離れる必要がなくなつたと認めるときは、当該期間を短縮することができる。
第九十四条 保釈を許す決定は、保証金の納付があつた後でなければ、これを執行することができない。
② 裁判所は、保釈請求者でない者に保証金を納めることを許すことができる。
③ 裁判所は、有価証券又は裁判所の適当と認める被告人以外の者の差し出した保証書を以て保証金に代えることを許すことができる。

 

【参考書式・誓約書】

誓 約 書

 

令和  年  月  日

 

福岡地方裁判所 刑事部 御中

 

私は、現在、        起訴され勾留中であるが、保釈が認められた場合は、裁判所の指示に従って生活し、裁判の日には必ず出頭することを固く約束する。また、被害者その他事件関係者とは、弁護人を介さない限り一切架電、手紙その他の方法で接触しないことも、併せて約束する。

弁護人から、これらを遵守しなかった場合には、公判期日不出頭罪、証人等威迫罪等の嫌疑が生じるほか、保釈保証金の没収、監督保証金の没収のほか、保釈を取り消される可能性があることの説明を受けた。本書面の写しの交付も受け、記載内容を理解したことも誓約する。

【刑事訴訟法】

第九十五条の三 裁判所の許可を受けないで指定された期間を超えて制限された住居を離れてはならない旨の条件を付されて保釈又は勾留の執行停止をされた被告人が、当該条件に係る住居を離れ、当該許可を受けないで、正当な理由がなく、当該期間を超えて当該住居に帰着しないときは、二年以下の拘禁刑に処する。

② 前項の被告人が、裁判所の許可を受けて同項の住居を離れ、正当な理由がなく、当該住居を離れることができる期間として指定された期間を超えて当該住居に帰着しないときも、同項と同様とする。

第二百七十八条の二 保釈又は勾留の執行停止をされた被告人が、召喚を受け正当な理由がなく公判期日に出頭しないときは、二年以下の拘禁刑に処する。

 

住 所

 

氏 名

 

【参考文献】

梶山太郎「勾留・保釈の運用-裁判の立場から-」(刑事法ジャーナル52号)21-29頁

28頁

【(29) 身柄引受人がいる場合、その身柄引受書が提出されるのが通常であるが、同時に疎明資料として引受人の身分関係害類(住民票、運転免許証等)の写しの添付があると、より身柄引受けの確実性が疎明されるといえる。また、引受人と被告人との関係の深さや、被告人の監督への意欲を示すような内容の引受人の陳述書も、疎明資料として有用な場合がある。 (30) 弁護人としては、このような被告人を取り巻く諸状況からすれば逃亡する現実的可能性は小さいのだということを、具体的な事実関係を指摘しながら主張し、かつ、それを裏付ける的確な資料を提出すると効果的である。】

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