借家人の不在時に家主が無断で自宅に立ち入って発見した大麻の証拠能力についての相談
2026年02月06日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、福岡市に住む30代男性です。先日、自宅アパートに帰ると警察官が何名もいて、大家さんもいました。私が自宅で吸っている大麻の件できたと直感したのですが、警察官に促されて自宅に入ったところ、部屋の隅に置いていた乾燥大麻と吸引具を指さされて「これはあなたのものか」と訊かれました。「はい」と答えると、警察署に連れていかれて大麻の任意提出書と所有権放棄書というものを書かされました。冷静に考えると家宅捜索されたのであれば押収されているはずで、もしかしたら大家さんが勝手に部屋に入って大麻を見つけたのではないかと思っています。違法捜査ではないでしょうか。
A、可能性は低いところですが、大家さんが見つけて通報したというパターンはありえます。窓から見えるような場所に置いていたといったパターンも考えられますが、大家さんが勝手に侵入していた場合には大家さんには住居侵入が成立する可能性がありますし、発見された大麻も違法収集証拠として裁判で証拠として使えない可能性もあります。弁護士に相談して具体的な事情を話されてみて下さい。
【解説】
大麻については独特の匂いがあることから、室内で大麻を吸っていた場合に周辺の人に気づかれる可能性はあります。通常の場合は、警察に通報されるくらいだと思いますが、古い裁判例ですが、大家が勝手に自宅に入ったという事例も存在したようですのでこの記事を作成しました。通報されても警察官としても対処に困る案件だと思いますが、放置もできないということでこういった対応がなされる可能性もあると考えます。
【参考文献】
丸山嘉代ほか編著『任意捜査ハンドブック』(立花書房,2023年11月)130-131頁
【(2) 家主が、被疑者に無断で被疑者居室を探索し、阿片散を発見し持ち出したのは違法であるとしたが、その証拠能力は肯定した事例(東京高判昭和28年11月25日判決特報39号202頁)
【事案の概要】
警察官が被疑者を麻薬取締法違反の容疑で逮捕するため、被疑者の居住するA方に赴いたところ、被疑者は不在であり、被疑事実を聞き知ったAが室内を探して阿片散を発見し、これを警察官に任意提出した。
【判決の要旨】
Aの所為は違法であるが、任意提出による領置においては、その提出者が所有者その他権限あるものであることを必ずしも必要としないから、これを領置した警察官の行為が、このことから直ちに不法になるという筋合のものではない。
【実務上の留意点】
この判例でも「警察官があらかじめ明示又は黙示にAに態通して室内を捜索せしめその阿片散を持ち出させた場合には不法な押収となる」と判示していることに注意を要する。】


