偽ブランド品販売事件の弁護要領(商標権侵害、刑事弁護)
2025年01月31日刑事弁護
最近、個人の偽ブランド品販売が商標法違反で摘発されたといったニュースを見ます。
偽ブランド品販売については「偽ブランド品」と明示していても商標法違反になります。また、不正競争防止法の「混同惹起行為」、「著名表示冒用行為」、「商品形態模倣行為」、 原産地の偽装表示等に係る「誤認惹起行為」となることもありますし、刑法の詐欺罪が成立することもあります。
警察は、サイバーパトロールを実施していますので、思わぬところで発覚して、いきなり自宅に家宅捜索がなされる、といったパターンもあり得ます。
偽ブランド品は、買わない、持たない、売らない、ことが大事です。
捜査研究2016年1月号(780号)
生活経済事犯研究会「生活経済事犯に関する捜査上のポイント 第1回」
【(1) 想定事例及び判断
衣料品販売業者Aは, 人気のある国内衣料品メーカーB社の登録商標である「B」マークに類似するマークを付した衣類(「B」の指定商品)を大量に海外から輸入し, インターネットのショッピングサイトで「B」マークが付された商品画像を掲載して広告し,販売した。
本事例では,衣料品販売業者Aは自ら製造行為は行っていないが, 登録商標に類似したマークを付した商品を輸入した上で,広告,販売していることから,商標権を侵害する行為とみなされる類似商標の広告による使用及び類似商標を付した商品の讓渡(販売)による使用の各違反が成立する可能性が高い。
(2) 適用法令の概要
商標権のみなす侵害行為(商標法第37条)
次に掲げる行為は,商標権を侵害する行為とみなされる。指定商品又は指定役務についての登録商標に類似する商標の使用
. 指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用
. 指定商品又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品であって,その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡, 引渡し又は輸出のために所持する行為
この規定に違反したときは, 5年以下の懲役又は500万円以下の罰金(併科あり)に処せられる(商標法78条の2)。】
【(3) 立証すべき事項
○対象商品が正規品でないこと
→いわゆるブランド品の中には,並行輸入品, アウトレット品など,通常の販売ルート以外のルートで販売される商品も存在することから,例えば, オークションで偽ブランド品が送られてきたなど, 商標権を有する権利者以外の者からの通報で認知した場合には,権利者に対して鑑定を依頼し,正規品でないことを確認する。
○商品に付されたマークが,登録商標に類似するものであること
→捜査関係事項照会書により特許庁に照会し,登録商標と同一であるか,類似の商標であるかについて判断を求める。
○被疑者が、偽造品であることを認識していること
→この種事案では, 「本物であると思っていた。」などの抗弁がなされることが多いことから,
・正規品の販売額と仕入価格.販売価格の比較,仕入業者とのやり取り
・権利者やサイト管理者等からの指導・警告状況,税関による輸入差止や警告履歴など,知惰性を裏付ける客観的証拠の収集を図る。】
捜査研究会編『必携取調べチャートー刑法・特別刑法一』(東京法令出版,2012年3月)という本に聴取事項が掲載されていました。
捜査機関向けに販売していたようですが刑事弁護人にも役立ちます。
特別法犯は薄いですが、例えばこんな感じです。
244頁
【立証事項※
①商標使用に関し何らの権限がないこと。
②侵害行為の内容
③商標権侵害の故意があったこと-他人の登録商標であることを認識しながら、これをその指定品若しくは指定役務と同一又は類似の商品若しくは役務に使用する意思
※使用……商標法2条3項各号の使用行為をいい、その各号の使用行為を認識していることが必要
1 犯行の動機又は理由
犯行を決意した時期とその理由
この業界に身を置いた期間
2登録商標の著名性
いつ、どこで、どのような方法で知ったか
3 犯罪行為の準備
1 広告宣伝の有無一あるとしたら、いつ、どのような方法で
-2 店舗の賃貸借契約の有無
-3 商品陳列の有無とその状況
-4 真正品の流通経路といわゆる複製品の流通経路、価格の比較
4 犯行の日時・場所
日時の特定の根拠(伝票類帳簿の押収)
店舗か露店か】
この後、5 商品の仕入れ状況、6 犯行状況詳細、 7 収益の額、使途、 8 共犯関係 と続きます。
私は商標法違反は民事事件しか担当したことがありませんが、捜査機関向けの本を含めて勉強を続けています。刑事弁護のご相談もお待ちしています。
商標法
https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000127
なお、少し古いですが、以下の本に商標法違反の供述調書例があります。
田中豊『新供述調書の書き方-特別法犯Ⅱ-』(日世社,2001年7月)
森山栄一ほか『供述調書作成の実務 特別法犯Ⅱ-改訂版-』(近代警察社,2005年11月)
※2025/1/31 chatGPT o1 proで弁護要領を作成してもらいました。
以下では、個人が著名商標に似た「偽ブランド品」を製造・販売したことにより商標法違反で立件される場合を想定し、刑事事件として取り調べを受ける際における弁護要領を整理します。実際の弁護活動においては、事案の詳細や検察官・裁判所の運用、被疑者本人の事情等によって柔軟に対応が必要となりますので、あくまで一般的な視点と流れとして参考にしてください。
1. 事案の把握と弁護方針の検討
1-1. 事実関係の精査
- クライアント(被疑者)からの聴取
- いつから、どのように偽ブランド品の製造・販売に関わったのか
- 製造・仕入先や取引先、販売ルート、広告宣伝方法など
- 売上金の規模・在庫状況
- 本人の認識(正規品か否か、本物でないことの認識の程度)
- 周囲からの指摘・警告の有無
- 押収物や捜査機関の証拠の確認
- 偽ブランド品の現物、在庫品、取引に関する伝票や帳簿
- インターネット上の出品記録や広告ページのスクリーンショット
- 仕入れ先とのやり取り(メール・チャット等)
まずは、本人の関与態様を正確に把握し、いかなる行為が商標法の規定に該当すると判断される恐れがあるかを整理します。
1-2. 適用される可能性のある法令
- 商標法違反(商標権侵害)
- 商標法第2条第3項各号の「使用行為」に該当するか(製造、販売、輸入、広告など)
- 登録商標またはこれに類似する商標の「使用」があったか
- 故意(偽造品と知りながら販売したか)の立証
- 罰則:5年以下の懲役または500万円以下の罰金(併科あり)
- 不正競争防止法違反(混同惹起行為、著名表示冒用など)
- 刑法上の詐欺罪(購入者を欺いて財産上の利益を得たと評価される場合)
※中心となるのは商標法違反(商標権侵害行為)です。場合によっては他法令も併科的に検討されますが、まずは商標法違反での立件が主眼となることが多いです。
1-3. 弁護方針の検討
- 争点の有無の確認
- マークの類似性:そもそも商標が類似しているのか否か。
- 特許庁への照会結果や、権利者からの鑑定を確認。
- 本物であると誤認していた可能性:偽ブランド品だという認識がなかった、または希薄だったと主張できるか。
- 販売行為の態様:輸入のみなのか、広告を積極的に行っていたのか、規模や回数など
- 故意の度合い:故意をどの程度立証されるおそれがあるか。
- 仕入価格や正規品相場との比較、周囲からの警告の有無など客観的事情の把握。
- マークの類似性:そもそも商標が類似しているのか否か。
- 量刑(処分)への影響要素
- 反省・被害回復の意思表示
- 再発防止策の構築(再度の仕入れ・販売ルートの遮断、在庫の廃棄など)
- 被疑者の属性(前科や同種前歴の有無、家庭事情・生活状況)
2. 取調べにおけるポイントと想定される質問
捜査機関(警察・検察)は、以下の点について重点的に質問します。取り調べに際しては、弁護人は被疑者本人に対し、不利な供述を安易にしないよう注意喚起するとともに、しかし虚偽の供述は行わないよう指導が必要です。
2-1. 犯行の動機・理由
- いつから・どのようなきっかけで偽ブランド品ビジネスに関与し始めたか
- どのように偽ブランド品であると知ったか、または知る機会があったか
- 利益目的・生活苦からか、あるいは他者から依頼されたか等
弁護上の対策
- 動機・理由についてはできる限り誠実に説明し、虚偽や曖昧さが残らないようにする。
- 反省や後悔の気持ちがある場合は、心情として表すことは量刑上も重要。
2-2. 登録商標の著名性と認識
- いつ・どこで知った商標か
- その商標の認知度(有名ブランドであること)を知っていたか
- そもそも**「類似するマーク」という認識があったか**
弁護上の対策
- 著名ブランドであることを全く知らなかった、と主張するのは困難な場合が多い。
- ただし、小規模のネット転売やフリマ感覚で扱っていた場合、**「そこまで深く考えていなかった」**といった認識の低さを示す余地はあるかもしれない。
- ただし、捜査側は仕入れ価格の異常な安さや並行輸入ではあり得ないルートなどから、故意を推認しようとするため、事前にそうした質問が出ることを想定しておく。
2-3. 犯行の準備・宣伝・販売方法
- 広告宣伝はどのように行ったか(ネットサイト・SNS・チラシ・路面店)
- 店舗や露店の出店状況、場所、期間
- 正規品との価格差や仕入れルート
- 取引伝票、取引メールやSNS記録の有無
弁護上の対策
- 実際の取引形態をできるだけ客観的な資料に即して説明する。
- 無闇に「知らない」「覚えていない」と逃げると、虚偽供述を疑われるリスクがある。
- ただし、すべてを詳細にペラペラ話すのではなく、**「重要事項については弁護士と相談したい」**という権利を行使させる場合もある。
2-4. 仕入れ状況と販売の実態
- 仕入れ価格・数量・期間
- どの業者・知人から仕入れたか
- 事前に「正規品でない」と言われたか警告されたか
- 販売額、利益額の把握
弁護上の対策
- 故意の立証と関わるため、仕入れ価格・数量の異常性や警告の有無は特に注意して説明。
- 仕入れ先を明かすか否かは、共犯関係・捜査協力との兼ね合いで検討が必要。
2-5. 収益・使途
- どれだけ儲けたか
- 売上の管理方法(口座、現金、SNS送金など)
- 収益を何に使ったか(生活費、借金返済、遊興費など)
弁護上の対策
- できるだけ正直に説明することが、反省・再犯防止の姿勢を示すうえでも重要。
- 脱税や資金洗浄の疑いをかけられるリスクがあれば、税務面も考慮しながら答え方を慎重に。
2-6. 共犯関係
- 誰と共謀したか、指示者・実行者・分担役割の確認
- 個人的に行ったのか、組織的・常習的だったのか
弁護上の対策
- 組織的犯罪とみなされると量刑が重くなる可能性が高い。
- 単独犯行かつ規模が小さいことを強調する場合は、共犯の存在については正直に否定する。
- ただし、実際に第三者がいるなら、虚偽供述とならない範囲で対応。
3. 弁護活動の具体的方針
3-1. 故意の有無・程度の争い
- **「本物だと思っていた」「気づかなかった」**という主張がどこまで可能か。
- ただし、警察や検察は「価格の不自然な安さ」「仕入れ先に関する不透明さ」「警告や削除要請の履歴」などの証拠を押さえている場合が多い。
- 認める部分、認めない部分を整理し、供述の一貫性を確保する。
3-2. 罪を認める場合の情状弁護
- 偽ブランド品であることを認めざるを得ない証拠が揃っている場合は、早期に認めて反省し、以下の情状面を充実させることで、不起訴や執行猶予の可能性を高める。
- 被害回復・示談交渉
- 権利者(ブランド元)に対する謝罪や損害賠償の申し入れ。
- ブランドイメージ侵害に対する和解金の支払い交渉など。
- 在庫品の廃棄・販売ルートの遮断
- 再発防止措置として具体的な手立てを講じる。
- 再犯防止の誓約
- 今後は正規ルートのみを扱う、類似行為をしない等の誓約書。
- 被害回復・示談交渉
3-3. 起訴前の段階での早期弁護活動
- 任意捜査段階から弁護士が関与し、被疑者が取調べに適切に対応できるよう指導する。
- 取り調べで不必要に不利な供述をしないこと、しかしウソはつかないことを助言。
- 早期に権利者側と連絡を取り、示談や謝罪を試みることで不起訴処分や起訴猶予を狙う。
3-4. 起訴後の対応
- 公判に至った場合でも、反省の情を示しつつ、被告人の経歴・家庭事情・被害回復状況などを主張し、執行猶予付き判決を求める。
- 規模が大きく、悪質とみなされると実刑の可能性も否定できないため、被害額や取引回数、組織性などを少しでも軽く評価してもらうよう事実を整理し、弁論を組み立てる。
4. 取り調べに向けた被疑者への具体的アドバイス
- 事実関係を曖昧にしない
- 覚えている部分は正確に述べ、覚えていないことは「覚えていない」と言う。憶測やその場しのぎの回答は逆に不利になる。
- 弁護人と相談しながら供述をコントロール
- 取調べの場で即答を避けたい場合は「重要な点なので、弁護士に相談したい」と伝える権利がある。
- 偽装や隠蔽をしない
- 証拠隠滅や虚偽供述は逆に事態を悪化させる。最終的に量刑で不利になりうる。
- 反省の意を示す
- 「なぜ違法と知らなかったのか」「なぜ深く考えなかったのか」など、自身の落ち度を正直に振り返り、再発防止策に取り組む姿勢を示す。
- 示談の可能性について
- 商標権者との間で示談を試みる場合には、弁護士を通じて適切に連絡を取り、賠償・和解金などを検討する。
5. 証拠関係の整理と立証活動
5-1. 捜査機関側の立証
- 対象商品が正規品でないこと
- 権利者の鑑定や専門家の鑑定書
- 登録商標と付されたマークの類似性
- 特許庁への照会結果、権利者の意見書
- 被疑者の故意
- 仕入れ価格・取引メール・警告の履歴など
5-2. 弁護人側の立証・反証
- 本物と信じた経緯(該当する場合)
- 仕入先とのやり取りで「正規品」と聞かされていた等
- 悪質性が低い点
- 販売規模が小さい、仕入れ数量が少ない、売上が限定的、組織的ではないなど
- 示談成立や被害回復状況
- 権利者への謝罪文や賠償金の支払い
6. 処分・量刑への影響を踏まえた最終的な弁護方針
- **不起訴処分(起訴猶予)**を目指すには、早期示談・被害回復および被疑者の反省・再犯防止策が重要。
- **略式起訴(罰金)**で済む可能性もあるが、規模が大きい、利益額が大きい、常習性がある場合は公判請求される可能性が高い。
- 執行猶予判決を狙う場合は、徹底した反省、実害の回復、社会的更生環境の整備を示す。
- 場合によっては実刑となるリスクもあるため、安易な「否認」や「虚偽供述」で心証を悪くしないよう注意。
7. まとめと留意点
- 初動対応が極めて重要
- 家宅捜索や任意同行、逮捕の有無によっても対応は異なるが、早期に弁護士へ相談し、取調べ前に方針を固める。
- 故意や悪質性をどう評価されるかが最大のポイント
- 被疑者の認識(正規品だと思っていたか否か)と、捜査機関の証拠との齟齬を慎重に検討。
- 情状弁護の充実
- 弁護士が権利者・検察官とのパイプ役となり、示談や再発防止策の提示など、被疑者が適切に責任を取れる環境を整える。
- 虚偽や証拠隠滅は絶対に避ける
- 虚偽・隠蔽は処分や判決で大きく不利に働く。
最終的な弁護の要点
- 事実を正確に整理し、取り調べ対応では余計な供述で不利になることを避ける。
- 早期に被害回復や示談交渉を進め、悪質性を低減させる。
- **捜査機関の立証内容(類似性、故意、実害・利益額)**を精査し、争点があれば明確に争い、争点が乏しければ反省を示す方向で進める。
- 前科・前歴がなければ、最終的に不起訴、罰金刑、執行猶予付き判決を目指すよう活動する。
- 再発防止と更生環境を整えることで、裁判所・検察官に対して寛大な処分を求める。
以上が、著名商標に似た偽ブランド品の製造・販売を行った個人が商標法違反(他に不正競争防止法や詐欺罪が問題となりうる場合を含む)で捜査対象となった際の、刑事弁護人としての基本的な弁護要領となります。
実際の事案では、偽ブランド品の販売規模や取引回数、被疑者の認識や態度、仕入れ・販売ルートの状況など、個別事情が処分・量刑に大きく影響します。早期に専門家(弁護士)へ相談し、可能な限り速やかに実害の回復や再発防止策を講じることが何よりも重要です。