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薬院法律事務所

刑事弁護

判例時報2634号に救護義務に関する重要判例(最判令和7.2.7刑集79巻2号91頁)の解説がでました


2025年12月16日刑事弁護

救護義務違反に関する重要判例です。解説においては、東京高判平成29.4.12判例時報2375-2376号219頁の事案との相違点が「なお」書きで記載されており、実務的には重要なことでしたのでホームページに特記することにしました。

 

解説によれば、今回の最高裁判決は、被告人が車両の運転を停止して被害者を捜し始めてていたのに途中でそれを停止した事案で、救護措置等に着手し始めるまでの時間的猶予等が問題となった事案とは異なるということです。東京高判は「救護義務及び報告義務の履行と相容れない行動を取れば、直ちにそれらの義務に違反する不作為があったものとまではいえないのであって、一定の時間的場所的離隔を生じさせて、これらの義務の履行と相容れない状態にまで陥ったことを要する」としていたものですが、この規範そのものが否定されたわけではないということになります。

 

https://www.courts.go.jp/hanrei/93774/detail2/index.html

事件番号
令和5(あ)1285

事件名
道路交通法違反被告事件

裁判年月日
令和7年2月7日

法廷名
最高裁判所第二小法廷

裁判種別
判決

結果
破棄自判

判例集等巻・号・頁

原審裁判所名
東京高等裁判所

原審事件番号
令和5(う)75

原審裁判年月日
令和5年9月28日

判示事項
1 道路交通法(令和4年法律第32号による改正前のもの)72条1項前段の義務を尽くしたといえる場合
2 道路交通法(令和4年法律第32号による改正前のもの)72条1項前段の義務に違反したとされた事例

裁判要旨
1 交通事故を起こした車両等の運転者が道路交通法(令和4年法律第32号による改正前のもの)72条1項前段の義務を尽くしたというためには、直ちに車両等の運転を停止して、事故及び現場の状況等に応じ、負傷者の救護及び道路における危険防止等のため必要な措置を臨機に講ずることを要する。
2 被害者に重篤な傷害を負わせた可能性の高い交通事故を起こし、自車を停止させて被害者を捜したものの発見できなかったのであるから、引き続き被害者の発見、救護に向けた措置を講ずる必要があったといえるのに、これと無関係な買物のためにコンビニエンスストアに赴いたという本件事情の下では、事故及び現場の状況等に応じ、負傷者の救護等のため必要な措置を臨機に講じなかったものといえ、その時点で道路交通法(令和4年法律第32号による改正前のもの)72条1項前段の義務に違反したと認められる。

参照法条
(1、2につき)道路交通法(令和4年法律第32号による改正前のもの)72条1項、道路交通法117条1項、2項