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刑事弁護

副流煙で陽性反応?!子どもの大麻検査と「冤罪」の可能性にどう対処すればよいか(ChatGPT4.5作成)


2025年07月19日刑事弁護

副流煙で陽性反応?!子どもの大麻検査と「冤罪」の可能性にどう対処すればよいか

大麻の検査方法:何をもって「使用」を証明する?

大麻事件では、捜査機関は主に薬物検査によって「使用」を立証します。一般的なのは尿検査で、体内で大麻の有効成分THCが代謝されてできるTHC-COOHという物質の濃度を測定します。日本の警察が用いる簡易検査キットでは、このTHC-COOHが尿1mL中50ナノグラム以上(50ng/mL以上)検出されると陽性と判定されます。尿検査で陽性反応が出ると、それだけで「違法な薬物を使用した」という事実が強く推認され、裁判でも使用罪が成立したと認められてしまうのが現状です。捜査当局はこの尿鑑定書を主要な証拠として提出し、体内から違法成分が検出された事実から**「本人が大麻を摂取した」と推定する仕組みになっています。なお、場合によっては血液検査毛髪検査**が行われるケースもあります。血液検査は直近の使用状況を調べる際に用いられ、毛髪検査は過去数ヶ月以内の薬物使用歴を遡って確認できる手法です(覚醒剤事件で有名になった方法です)。いずれにせよ、現行法では尿検査での陽性反応だけでも大麻の「使用」と見なされて処罰対象となり得る点に注意が必要です。

副流煙で陽性になる可能性:実験結果はこう示す

では、周囲の人が吸った大麻の副流煙を吸い込んでしまった場合でも、尿検査が陽性になることはあり得るのでしょうか? 結論から言えば、通常の状況であれば可能性は極めて低いとされています。アメリカ国立薬物乱用研究所(NIDA)が支援した実験では、換気の悪い密閉空間で長時間大量の大麻煙に曝露すると、非喫煙者の尿からもTHC代謝物がわずかに検出されました。しかしその濃度は最大でも十数ng/mL程度で、通常の50ng/mLカットオフの検査では陽性とは判定されないレベルでした。極端な条件下では一時的に50ng/mLに近い値が検出され、非喫煙者の尿サンプルの中には1件だけ50ng/mL基準で陽性反応となった例も報告されています。とはいえ、そうしたケースは換気ゼロの部屋で大量のジョイントが同時に吸われたような特殊環境で初めて起こり得る現象です。適切に換気された環境では、副流煙によって非喫煙者の尿検査が陽性となる例は確認されていません。実際、複数の学術研究も**「受動喫煙で陽性となるケースは非常に限定的だ」と結論づけています。要するに、現実的な状況下で「副流煙を吸っただけで陽性反応が出る」可能性はごく稀**であり、仮に起きてもそれは曝露直後の数時間以内に限られると考えられます。

捜査実務ではどう判断する?

こうした科学的知見を踏まえ、警察・検察など捜査実務の現場では**「陽性反応=本人が能動的に使用した」と判断するのが原則です。衆議院法制局の解説によれば、「受動喫煙では尿中のTHC代謝物濃度は低く、能動喫煙者と受動喫煙者の区別は科学的に可能である」とされています。そのため、大麻の尿検査で一定濃度以上の代謝物が検出された場合、「周りの煙を吸っただけ」といった弁解はまず通らないのが現状です。これは覚醒剤事件での扱いとも類似しています。覚醒剤の場合、たとえ同じ部屋で他人が吸引していても、副流煙によって他人の尿から覚醒剤成分が検出されることは通常あり得ません。したがって「知らないうちに煙を吸わされた」という主張は非現実的で筋が通らないものと見做され、裁判でも認められないのです。大麻についても、法改正によって令和6年(2024年)末から「使用罪(施用罪)」が新設されたことで、覚醒剤と同様に取り締まられる方向です。現時点では大麻使用罪での前例は多くありませんが、尿中代謝物の濃度の違いで受動喫煙か能動喫煙か区別できるという科学的根拠がある以上、陽性反応が出たケースでは捜査機関はほぼ間違いなく「自ら使用した」と判断するでしょう。総合すると、「副流煙で陽性になった」という弁解は、よほど特殊な状況でない限り現行の法制度と科学知見の双方から認められにくいのが実情です。

冤罪を防ぐために親子でできること

本当に子どもが大麻を吸っていないのであれば、冤罪を防ぐために親子で以下のような対応を検討できます。

  • 客観的な証拠や証言を集める: 子どもがいた場所で他者が大麻を使用していた事実があるなら、その場にいた人たちから子どもは吸っていなかった旨の証言を集めましょう。必要に応じて現場の状況(換気状態や子どもの位置関係)を示す写真やメモも残します。捜査段階で現場検証に協力し、客観証拠によって子どもの無実を裏付ける努力が重要です。
  • 早期に弁護士へ相談する: 薬物事件に強い弁護士をできるだけ早く頼り、専門的なアドバイスを受けます。弁護士は尿検査結果の詳細(THC-COOHの具体的濃度など)を確認し、それが副流煙による微量摂取である可能性を科学的に検証する手立てがないか考えてくれます。専門家の意見書を求めることや、検査機関に対する鑑定の再依頼など、科学的知見に基づく反論を準備してくれるでしょう。
  • 子どもに真実を話すよう促す: 一方で、もし子どもが苦し紛れに嘘をついている場合は注意が必要です。筋の通らない主張を押し通そうとすると、家庭裁判所(少年事件の場合に扱う審判の場)での心証をかえって悪くしてしまいます。親としては感情的にならず冷静に子どもと向き合い、**「本当に吸っていないのか?」**を確認しましょう。事実を正直に話すよう諭しつつ、更生のためにどうすべきか一緒に考える姿勢も大切です。

なお、仮に子どもが実際に吸っていなかったとしても、「副流煙による陽性」を完全に証明することは極めてハードルが高いのが現状です。そのため、基本的には**「検査陽性=使用した前提」**で今後の対応策を検討せざるを得ないことも覚悟しておきましょう。無実の場合でも、捜査機関や裁判所にそのことを分かってもらうには相当の専門知識と尽力が求められます。親御さんとしては、子どもを精神的に支えつつ適切な法的サポートを受け、慎重に事実関係を主張していく必要があります。

処分への影響:情状として考慮される可能性

最後に、仮に副流煙によるごく微量の摂取だった場合に、その事情が処分に影響する可能性について触れておきます。少年事件であれば家庭裁判所の審判、成人であれば刑事裁判において、意図的な乱用ではなく環境要因によるものと認められれば、処分が情状酌量される材料になり得ます。具体的には、本人の薬物依存の程度が軽微で再発防止の期待が高いと判断されれば、保護観察など比較的軽い保護処分で済む可能性もあります。また、刑事裁判でも酌量減軽の理由として考慮され、執行猶予付き判決などより寛大な結果につながる可能性があります。ただし、繰り返しになりますが科学的に「副流煙だった」と立証すること自体が非常に困難であり、現場の捜査実務では基本的に陽性反応=本人使用とみなされます。そのため、処分軽減を期待して副流煙の主張をするよりは、まずは再発防止策や反省の態度を示すことが現実的な対処となるでしょう。親としてできる限りのサポートをしつつ、子どもには**「軽い気持ちでも大麻の煙に近づかないように」**と日頃から指導することが肝要です。大麻の誘惑や周囲の誘いに流されないように見守り、違法薬物に近寄らない環境づくりを心掛けてください。それが結果的に冤罪の不安を遠ざけ、お子さんの将来を守ることにつながります。

Sources:

  1. Gizmodo Japan – 「アメリカ人が採用面接の尿検査をパスするためやってること」(2014年)
  2. HempTODAY Japan – 「新しい大麻法のパブリック・コメントの論点(5)施用罪との関係と今後」(2024年)
  3. ダーウィン法律事務所 刑事事件コラム – 「尿鑑定だけで十分?違法薬物の使用の罪について。」(2023年)
  4. Johns Hopkins Univ.研究 (Herrmann et al., 2015) – 「Non-smoker exposure to secondhand cannabis smoke II: Effect of room ventilation…」
  5. 米国NIDA支援研究 (Cone et al., 2015) – 「Non-Smoker Exposure to Secondhand Cannabis Smoke. I. Urine Screening and Confirmation Results」
  6. 薬院法律事務所 刑事弁護コラム – 「同居人が大麻を吸っていたから、尿検査で陽性反応が出たという相談」(2024年)
  7. 『薬物事件執務提要(改訂版)』最高裁刑事局監修 (2001年)
  8. 『もう一歩踏み込んだ薬物事件の弁護術』小森榮 著 (2012年)

 

同居人が大麻を吸っていたから、尿検査で陽性反応が出たという相談(大麻、刑事弁護)