半年前に、妻が既婚者の男性上司から不同意性交をされたという相談(犯罪被害者)
2025年02月13日犯罪被害者
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は福岡市に住む30代男性です。半年前、妻が既婚者の男性上司から飲み会の帰りにつきまとわれて、無理矢理ラブホテルに連れ込まれて性交されるという被害に遭いました。先日から、妻の様子がおかしいと思っていたのですが、昨日になって初めてそのようなことが起こったということを聴きました。これから、その上司と会社に対して不同意性交・セクシャルハラスメントとして損害賠償請求をすることと、その上司を退職させることをしたいと思っています。警察に通報することも考えたのですが、インターネットで調べてみると一緒にラブホテルに入った場合には刑事事件にされにくいということを見て、時間も経っているので無理ではないかと思っています。上司が言い逃れをしてくるかもしれないと思っているのですが、私に出来ることはないでしょうか。具体的にどのように行動すれば良いのか教えて下さい。妻自身は参ってしまっているようで、私が代わりに色々と動かないといけないと思っています。
A、難しい相談ですが、刑事事件としての立件も視野に入れて活動すべき事案だと思います。法テラスの犯罪被害者法律援助事業を利用することもご検討下さい。
【解説※chatGPT o1 pro作成】
※以下の回答は、いただいたご相談内容に基づく一般的な法的見解の説明であり、実際の事案への適用には、必ずご本人・奥様の具体的な事実関係の精査や証拠の確認が必要となります。ご不安がある場合は、速やかに弁護士などの専門家に直接ご相談ください。
1. まず確認すべきこと・整理すべきこと
- 奥様の意向・体調・メンタルケア
まず何より大切なのは、被害者である奥様ご自身の意向・体調です。警察に被害届を出すか、会社に訴えるか、民事手続きをどうするか、といった選択は奥様が心身ともに耐えられるかどうかを踏まえる必要があります。無理をさせてしまうと、かえって心的外傷が大きくなる恐れもありますので、精神科やカウンセリングなど専門家のケアも視野に入れてください。 - 事実関係の整理と証拠の確保
後述する刑事・民事いずれの手段においても、「事実があったこと」を裏付ける情報が重要です。LINEやメール、通話記録、周囲の人の証言など、少しでも心当たりのある証拠や記録を整理しておきましょう。飲み会に参加していた同僚などに当日の様子を聞いておく、証言をメモしておくなども有用です。- 当日相手から送られてきたメッセージや通話履歴など
- 直後の奥様の様子を知る人の証言
- 会社での上司の言動(セクハラ的言動が常態化していなかったか)
- 二次会・飲み会の帰りに一緒になった経緯など
- 時間経過に関する問題
おっしゃるとおり、被害から半年という時間が経っていると、証拠の散逸・記憶の風化が生じやすいため、刑事事件として立件しづらくなるリスクはあります。しかし、「一緒にラブホテルに入ったから」といって必ず立件できないわけではありません。その前後の状況(脅迫・強要・酔って判断力を失っていた・拒絶したにもかかわらず無理やりだった等)次第では、**不同意性交等罪(旧・強制性交等罪)**に該当する可能性は残ります。
2. 刑事手続きについて(警察への被害申告)
- 被害届の提出・告訴の検討
たとえ半年経過していても、告訴期限(不同意性交罪は、2023年の法改正で親告罪ではなくなっておりますが、証拠状況や被害者の意向が大きく影響する犯罪類型です)や公訴時効(10年~15年程度、罪の重さによる)まで時間が大幅に経過しているわけではないと思われます。警察がどこまで動くかは、証拠次第という面がありますが、事件性が認められると判断されれば捜査が行われる可能性はあります。- ただし、警察に相談・申告した場合でも「証拠が乏しい」として受理してもらいにくいケースもあります。
- 今後、会社との交渉・民事訴訟を行う上でも、警察に被害を訴えたという事実が有利に働く場合があります。
- 奥様が状況説明をする必要があるため、心身の負担にも配慮が必要です。
- 証拠収集とメンタルケア
- 病院の診断書(精神的被害の診断書や当時の外傷があれば)
- カウンセリング受診などにより、どのような心理的ダメージを受けているか
- 可能であれば、奥様が思い出せる範囲の詳細を時系列でメモし、それを基に弁護士など専門家に相談する
3. 民事手続き(損害賠償請求など)について
(1) 上司個人に対する損害賠償請求
- 請求根拠
- 不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条 等)
- 性的自由を侵害し、精神的苦痛を与えた慰謝料の請求
- 会社での地位を利用したセクハラ的性質も考慮される
- 請求する内容
- 慰謝料:精神的苦痛に対する賠償
- 実費(治療費・カウンセリング費用など)があればその分も請求
- 時効
民事上の不法行為の消滅時効は、被害者が損害及び加害者を知った時から3年です(2020年4月1日施行の民法改正後は5年の規定もありますが、行為時期によって異なる場合があります)。現状ではまだ半年しか経っていないので、時効の面ではすぐには問題になりにくいでしょう。
(2) 会社に対する損害賠償請求
- 使用者責任(民法715条)
上司が業務に関連して不法行為を行った場合、会社が「使用者責任」を負う可能性があります。ただし、「業務の範囲内」と認定されるかどうかはケースバイケースです。飲み会(職場の行事、または実質的に業務と関連する懇親会)の帰りである点や、上司という立場を利用した面があれば、会社側にも責任が及ぶ可能性があります。 - セクシュアルハラスメントに対する会社の義務
労働施策総合推進法・男女雇用機会均等法により、会社にはセクハラ防止措置義務があります。被害申告を受けた場合に適切に対応しなかったなどが認められれば、会社に対しても損害賠償責任を問うことはありえます。 - 社内での解決手続き・交渉
いきなり裁判という方法もありますが、まずは会社のコンプライアンス窓口や人事部・総務部に対して正式にセクハラ被害を申し立て、上司の懲戒処分や再発防止策を求めるのが一般的です。この際に弁護士を通じて通知書を送ったり、代理人として会社と交渉することも検討できます。
4. 上司の退職を求めることについて
- 会社への申立(懲戒処分など)
会社として懲戒解雇や諭旨退職といった処分を行うかどうかは、会社の就業規則や判断によります。会社がセクハラ被害を重大視すれば、社内調査を実施し、結果次第で懲戒処分を科すこともあります。- 退職を強要できるかは、最終的には会社の懲戒権限や本人の意思にかかってきます。被害者側が「退職しろ」と直接的に迫るよりも、会社のコンプライアンス責任に照らして厳正な処分を求める形が実務的です。
- 民事上の損害賠償請求と併せて、「被害回復の一環として厳格な処分を求める」という姿勢で会社に申し入れることがあります。
- 交渉の留意点
- 会社が事実関係を軽視する、あるいはセクハラを放置している場合は、外部機関(労働局の紛争調整委員会など)に相談する方法もあります。
- 会社が十分な対応を行わない場合、会社に対する責任追及(損害賠償請求)を行う際の証拠として、会社の不誠実な対応を記録しておくことも重要です。
5. 実際の行動ステップ
- 弁護士への相談を検討する
性犯罪・セクハラ事案は証拠の問題が複雑で、被害者の精神的負担も大きいです。警察に行くべきか・先に会社に通知するべきか等の方針も、弁護士がサポートすることで整理しやすくなります。まずはお近くの弁護士会の法律相談窓口、あるいは性暴力被害に詳しい弁護士に面談相談を依頼するとよいでしょう。 - 会社への正式な申出(セクハラ被害の申告)
- 会社の就業規則・ハラスメント相談窓口などの制度を確認し、正式に被害を申告する。
- 申告書やメールなど、書面や形に残る手段を使うとよいです(後々の証拠になる)。
- 会社の対応については、必ず日時や担当者、やりとりの内容を記録しておく。
- 警察への相談・被害届の検討
- 証拠が少ない・時間が経過しているからといって、自動的に不受理になるとは限りません。事情を詳しく説明して、捜査可能性を探る価値はあります。
- 被害者の負担を最小限にするためにも、弁護士同席で相談するなどの方法も考えられます。
- 証拠の確保・記録化
- 奥様の記憶をできるだけ正確にメモし、過去のLINEやメールをバックアップする。
- 飲み会の様子を知っている同僚などに話を聞き、もし協力してくれるなら証言メモを作る(後で弁護士を通じて書面化・陳述書化することも可能です)。
- 民事での損害賠償請求の手続き(任意交渉・裁判)
- 弁護士に依頼した場合、弁護士から加害上司や会社に「内容証明郵便」で請求書を送ってもらい、交渉をスタートする手法が一般的です。
- 交渉がまとまらなければ民事訴訟に移行する場合もあります。
6. まとめ
- 刑事手続き:時間が経っているからといって、必ずしも諦める必要はありません。被害届を出すかどうかは奥様の意思や証拠次第。弁護士を通じて相談することも考慮してください。
- 民事手続き:上司個人に対する損害賠償請求および会社に対する使用者責任・セクハラ防止義務違反での請求が考えられます。会社には正式にセクハラを訴えて、上司に対する懲戒処分を求めることができます。
- 証拠・記録:まずは証拠をできる限り確保し、奥様の負担を考慮しながら慎重に準備を進めることが大事です。
- メンタルケア:性被害は長期的な精神的ダメージにつながることも多いため、カウンセリングや精神科受診を含むサポート体制を整えてください。
いずれの手続きをとる場合でも、専門家の助力があるとスムーズです。早めに弁護士に相談し、奥様が無理をされない形で、適切な法的手段をとられることをおすすめいたします。
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