古笛恵子「交通事故損害賠償の実務~損害論を中心とした基本的な理解について~」ほか平成27年度現代法律実務の諸問題
2018年07月20日企業法務
平成27年度現代法律実務の諸問題を読んでいます。
今日は、古笛恵子先生の「交通事故損害賠償の実務~損害論を中心とした基本的な理解について~」を読んでいます。何事も基本は大事です。色々と読むことで「これはこういう意味だったのか」と気がつくこともあります。
記事の感想ですが、自賠責保険の特殊性は、知らずに進めてたらまずいことになるなあと思いました。被害者の過失が大きい場合はとりあえず自賠責保険だけ被害者請求するようにというのは常識ですが、高齢者の家事従事者についても裁判ではなかなか休業損害と認めてくれないが、自賠責保険では機械的に認めるので有利になることがあるそうです。その他、遺族年金は相続人が逸失利益として請求できない、加害者が搭乗者傷害保険をかけていてその給付があれば慰謝料が減額されることがある、など知りませんでした。
ちなみに、私がした実例で、自賠責保険を訴訟「後」に請求したことで回収が多かった事例がありました。これは、総額が90万円程度で、自賠責保険の基準では7割程度になるのですが、判決があったため満額支給されました。先に自賠責保険を請求していれば、相手に資力がなく回収出来ませんでした。
伊庭潔弁護士の「新しい民事信託の実践」という講演の書き起こしも面白かったです。
他士業と信託法の勉強会で、他士業の方が1年間の間信託法の教科書を開いたり、信託法の条文に触れることがなかったとか。確かに、税理士の事業承継の本での信託もあんまり理論的なものを見かけません。販売されている民事信託の本では、信託法8条に反する規定のものもあるそうです。
条文を踏まえて、具体的にどういう場面で利用すべきかが書かれています。末尾に基本書式の掲載もあり、参考になります。
デフォルトルールとして、信託は受託者に強い権限を与えているので、それを委託者や受益者がどう縛るか、というのがプランニングのポイントのようです。新しい信託法は信託銀行が使いやすいように定められたものなので、我々がプランニングするときはまた違う考慮が必要です。
なお、受託者規制を免れるために、一般社団法人を設立して受託者にすることについては、非常に問題があるとされています。委託者や受益者が理事になるなら自己信託だし、受益者と受託者が同一なら信託は1年間で終了するのでは(信託法163条2号)、社員間の紛争はどうするのか、信託終了時の信託財産はどうなるのか、などです。可能だが、慎重な検討が必要とされています。
また、信託が脱税に利用されてきた歴史から、原則信託で節税は出来ない、むしろ過大な税金を受けるおそれがあるそうです。
一方で、任意規定を活用して依頼者のニーズにあわせる、ことが出来ることは大きなポイントです。遺言作成に携わる弁護士として避けては通れません。信託の受託者にはなれなくても、信託監督人として弁護士が関与するパターンもあるようです。
『条解信託法』も発刊されますし、そろそろ信託法をきちんと勉強する時期かなと思いました。
https://www.daiichihoki.co.jp/store/products/detail/102132.html