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薬院法律事務所

刑事弁護

夜中にお酒を飲んで、朝方に自動車を運転して酒気帯び運転と言われた場合の対応


2026年06月29日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は福岡市内に住む30代の会社員です。

前日の夜、自宅でお酒を飲みました。午後10時ころから深夜1時ころまで、缶ビールやチューハイを何本か飲み、その後寝ました。

翌朝、午前6時ころに起きたときには、自分では酔っている感覚はありませんでした。仕事に行く必要があったので、午前7時ころ、自動車を運転して出勤しました。

ところが、通勤途中で警察官から停止を求められました。呼気検査を受けたところ、呼気1リットルにつき0.18ミリグラムのアルコールが出たと言われました。

警察からは、酒気帯び運転だと言われています。

私は、前日の夜に飲んだことは認めます。しかし、一晩寝ていますし、朝には酒が残っている感覚はありませんでした。基準値を超えるとはまったく思っていませんでした。

このような場合でも、酒気帯び運転になるのでしょうか。警察にはどう説明すればよいでしょうか。罰金や前科、免許停止になるのかも心配です。

A、まず、夜中に飲酒し、朝方に運転した場合でも、呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上のアルコールが検出されれば、酒気帯び運転として処罰対象になる可能性があります。

「一晩寝た」
「酔っている感覚はなかった」
「基準値を超えるとは思わなかった」

という事情があっても、それだけで酒気帯び運転が否定されるわけではありません。

酒気帯び運転の故意については、一般に、運転者が「呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上出る」とまで認識している必要はありません。問題になるのは、アルコールを身体に保有しながら運転することの認識があったかどうかです。

そのため、前夜に飲酒したことを覚えており、飲酒終了からそれほど長時間が経っていない場合には、「酒が残っているとは思わなかった」という説明は、警察・検察から厳しく見られます。

もっとも、二日酔い型の酒気帯び運転では、酒気帯びの認識が争点になることがあります。

特に、

・飲酒量が少ない
・飲酒終了から相当時間が経過している
・睡眠を十分に取っている
・起床時に酒臭やふらつきがない
・同乗者や家族も酒気に気付いていない
・呼気検査の数値が基準値に近い
・検査時刻が運転時刻から離れている
・検査手続やうがい、検知器の状態に疑問がある

といった事情がある場合には、本当に酒気を帯びている認識があったのか、運転時点で基準値以上だったのかを検討する余地があります。

逆に、

・深夜まで多量に飲んでいる
・睡眠時間が短い
・朝に酒臭がある
・強い眠気、頭痛、吐き気、だるさがある
・普段あまり飲まない人が多量に飲んだ
・検査数値が高い
・事故を起こしている
・警察で一度「酒が残っていると思っていた」と供述している

といった事情があると、酒気帯びの認識があったと判断されやすくなります。

警察の取調べでは、飲酒量、飲酒終了時刻、就寝・起床時刻、体調、運転開始時の認識について、正確に説明する必要があります。

「数字が出た以上、争っても無駄だ」と考えて、実際には思っていなかったことまで認めることは避けるべきです。一方で、飲酒量を少なく言ったり、飲酒時刻を早めたりする虚偽説明も危険です。

警察から酒気帯び運転で呼び出された段階で、早めに弁護士へ相談することをお勧めします。

そして、行政処分については「酒気帯び運転の故意」がなくてもなされるので、この点についても注意が必要です。

 

【解説】

 

1 朝方の酒気帯び運転は珍しくありません

 

酒気帯び運転というと、飲酒直後に車を運転する場合を想像する方が多いと思います。

しかし、実際には、前日の夜に飲酒し、数時間寝た後、朝方に運転して検挙される事案もあります。

いわゆる「二日酔い運転」です。

本人としては、

「もう寝たから大丈夫」
「朝には酔っていなかった」
「仕事に行かなければならなかった」
「少しだるいだけで運転できると思った」

と考えていることがあります。

しかし、アルコールは睡眠によって一気に消えるわけではありません。飲酒量、体重、体質、体調、飲酒時間、食事の有無、睡眠時間によっては、翌朝にも体内にアルコールが残ることがあります。

したがって、前日の飲酒であっても、朝の運転時に呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上のアルコールを身体に保有していれば、酒気帯び運転として問題になります。

 

2 酒気帯び運転と酒酔い運転の違い

 

飲酒運転には、大きく分けて酒気帯び運転と酒酔い運転があります。

酒気帯び運転は、身体に一定以上のアルコールを保有して車両等を運転する場合です。自動車の場合、一般に、呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上、又は血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム以上が基準になります。

酒気帯び運転の法定刑は、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。

酒酔い運転は、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で運転する場合です。酒酔い運転では、必ずしも呼気0.15ミリグラム以上という数値が必要なわけではありません。歩行、言語、態度、顔色、運転状況などから、正常な運転ができないおそれがある状態かどうかが問題になります。

酒酔い運転の法定刑は、5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。

朝方の二日酔い型事件では、多くの場合、酒気帯び運転が問題になります。ただし、ふらつき、蛇行運転、事故、言語態度の異常などがある場合には、酒酔い運転が問題になることもあります。

 

3 「基準値を超えるとは思わなかった」は弁解になりにくい

 

酒気帯び運転でよくある弁解は、

「0.15ミリグラム以上出るとは思わなかった」
「こんなに高い数値が出るとは思わなかった」

というものです。

しかし、この弁解だけで犯罪が成立しないことにはなりにくいです。

酒気帯び運転の故意として必要なのは、一般に、政令で定める数値を超えていることまでの認識ではありません。アルコールを身体に保有しながら車両等を運転することの認識があれば足りるとされています。

つまり、問題は、

「0.15以上出ると分かっていたか」

ではなく、

「まだ身体にアルコールが残っているかもしれないと認識していたか」

です。

そのため、前夜に飲酒し、数時間しか経っていない場合には、「基準値を超えるとは思わなかった」というだけでは不十分です。

 

4 「一晩寝たから酒は抜けたと思った」はどう評価されるか

 

もっとも、「一晩寝たから、もう酒は抜けたと思っていた」という弁解が、まったく意味を持たないわけではありません。

酒気帯び運転は故意犯です。したがって、運転者が、本当にアルコールを身体に保有している認識を欠いていたといえる場合には、故意が争点になります。

過去の裁判例や実務でも、前夜に飲酒して数時間眠った後の運転について、酒気帯びの認識が問題になった事案があります。

ただし、現在の捜査実務では、「一晩寝たから大丈夫だと思った」という説明は、かなり慎重に見られます。

特に、次のような場合には、酒気帯びの認識があったと推認されやすくなります。

・飲酒終了から運転開始までの時間が短い
・深夜まで飲んでいる
・飲酒量が多い
・普段あまり飲まない人が多量に飲んでいる
・自分は酒に弱いと分かっている
・起床時に頭痛、だるさ、吐き気、眠気があった
・警察官が強い酒臭を感じている
・呼気検査の数値が高い
・事故を起こしている
・捜査段階で酒気帯びの認識を認める供述をしている

一方で、次のような場合には、酒気帯びの認識を争う余地があります。

・飲酒量が少ない
・飲酒終了から相当長時間が経過している
・十分な睡眠を取っている
・朝の体調に異常がなかった
・家族、同乗者、同僚が酒臭に気付いていない
・呼気検査の数値が基準値に近い
・呼気検査の時刻が運転時刻から離れている
・検査手続や測定環境に疑問がある
・飲酒量や飲酒時刻を裏付ける客観資料がある

つまり、「一晩寝たから大丈夫だと思った」という言葉だけでは足りません。

飲酒量、飲酒終了時刻、睡眠時間、体調、酒臭、検査数値、検査時刻、同乗者や家族の認識などを総合して判断されます。

 

5 飲酒量・飲酒時刻を正確に整理することが重要です

 

この種の事件で最も重要なのは、飲酒状況の整理です。

警察では、次のようなことを詳しく聞かれます。

・何時から飲み始めたか
・何時に飲み終えたか
・何を飲んだか
・どのくらいの量を飲んだか
・誰と飲んだか
・どこで飲んだか
・食事をしたか
・飲酒後すぐ寝たのか
・何時に寝たのか
・何時に起きたのか
・起床時の体調はどうだったか
・運転前に酒臭を自覚していたか
・運転開始時に酒が残っていると思ったか
・検査までに追加飲酒していないか

ここで、飲酒量を少なく言う、飲酒終了時刻を早く言う、飲んだ酒の種類を変えるといった虚偽説明は避けるべきです。

後から、レシート、クレジットカード履歴、コンビニ購入履歴、同席者の供述、空き缶、LINE、写真、位置情報などで矛盾が出ると、信用を大きく失います。

逆に、正確な飲酒状況を裏付ける資料があれば、酒気帯びの認識や運転時点のアルコール量を検討するうえで重要な資料になります。

 

6 呼気検査の手続も確認する

 

酒気帯び運転では、呼気検査の結果が極めて重要です。

そのため、次の点を確認する必要があります。

・検査時刻
・運転時刻
・運転終了から検査までの時間
・うがいをしたか
・検査前に飲食、喫煙、嘔吐があったか
・検知器の種類
・検知管や機器の有効期限
・検査場所の状況
・ガソリン臭、有機溶剤臭などがなかったか
・外気温や測定環境に問題がなかったか
・風船への呼気の吹き込み方法
・複数回検査が行われたか
・鑑識カードの記載内容

特に、飲酒直後や嘔吐直後は、口腔内に残ったアルコールの影響が問題になることがあります。そのため、実務上、呼気検査前にはうがいが重要とされています。

もっとも、前夜に飲酒し、朝方に検査された事案では、飲酒から相当時間が経っていることが多いため、うがいの有無だけで直ちに検査結果が否定されるとは限りません。

しかし、検査手続に疑問がある場合には、取調べ前に弁護士へ相談し、何を確認すべきか整理しておくべきです。

 

7 呼気検査は拒否すべきではありません

 

「検査を受けなければ数値が出ないのではないか」と考える方がいます。

これは非常に危険です。

警察官から適法に呼気検査を求められた場合、これを拒むと、呼気検査拒否罪が問題になります。呼気検査拒否自体が別の犯罪です。

また、呼気検査を拒否すると、警察から悪質と見られます。場合によっては、逮捕や強制採血の問題にも発展します。

検査手続に疑問がある場合でも、現場で感情的に拒否するのではなく、うがいの有無、検査時刻、検査方法、警察官の説明内容などを記憶しておき、後で弁護士に相談する方が適切です。

 

8 取調べで注意すべきこと

 

警察の取調べでは、次のような質問を受けることがあります。

「前日の夜に飲みましたね」
「どのくらい飲みましたか」
「朝、酒が残っていると思いませんでしたか」
「少しは酒が残っているかもしれないと思いませんでしたか」
「運転してはいけないと思いませんでしたか」
「数字が出ている以上、酒気帯びだったことは認めますね」

ここで注意すべきなのは、事実と評価を分けることです。

前日の夜に飲んだこと、朝運転したこと、検査で数値が出たことは、客観的事実です。

しかし、

「酒が残っていると分かっていた」
「酒気帯びかもしれないと思っていた」
「運転してはいけないと分かっていた」

という内心の認識は、別の問題です。

実際には酒が残っている感覚がなかったのに、「数字が出ているなら、そういうことになると思います」と言ってしまうと、酒気帯びの認識を認めた供述として調書化されることがあります。

もちろん、嘘をついてはいけません。

しかし、自分の認識を正確に話す必要があります。

たとえば、

「前夜に飲酒したことは事実です」
「朝に運転したことも事実です」
「検査で数値が出たことは聞きました」
「ただ、運転開始時には、酒が残っている感覚はありませんでした」
「ふらつき、吐き気、頭痛などもありませんでした」
「基準値を超えるとは考えていませんでした」
「飲酒量と時刻については正確に説明します」

というように、認めるべき事実と争うべき認識を分けて説明することが重要です。

 

9 行政処分にも注意が必要です

 

酒気帯び運転では、刑事処分だけでなく、運転免許の行政処分が問題になります。

一般に、呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上0.25ミリグラム未満の場合と、0.25ミリグラム以上の場合では、違反点数が大きく異なります。

前歴の有無にもよりますが、0.15ミリグラム以上0.25ミリグラム未満でも免許停止の可能性があります。0.25ミリグラム以上では、免許取消の可能性が現実的に問題になります。

仕事で車を使う方、公務員、運送業、営業職、医療・介護関係、建設業などでは、免許処分が生活に直結します。

また、刑事処分が不起訴になったとしても、行政処分が当然になくなるわけではありません。免許処分についても、別途対応を検討する必要があります。

 

10 事故を起こしている場合はさらに重大です

 

朝方の酒気帯び運転で事故を起こした場合には、さらに重大です。

物損事故であっても、酒気帯び運転が発覚すれば、刑事処分・行政処分ともに重くなります。

人身事故であれば、酒気帯び運転に加えて、過失運転致傷罪が問題になります。飲酒の程度や運転態様によっては、危険運転致傷が問題になることもあります。

また、事故後に現場を離れたり、警察への報告を遅らせたりすると、救護義務違反、報告義務違反、いわゆるひき逃げの疑いが生じます。

飲酒が発覚することを恐れて逃げることは、最も避けるべき行動です。

事故を起こした場合には、直ちに停止し、負傷者を救護し、警察へ通報し、保険会社にも連絡してください。

 

11 弁護士ができること

 

このような酒気帯び運転事件で、弁護士ができることは次のとおりです。

・警察取調べ前の相談
・飲酒量、飲酒時刻、睡眠時間の整理
・呼気検査結果と運転時刻の関係の検討
・酒気帯びの認識、故意の有無の検討
・検査手続の確認
・供述調書作成時の注意点の助言
・飲酒状況を裏付ける資料の収集
・家族、同乗者、同席者の事情確認
・検察官への意見書作成
・略式起訴、罰金、正式裁判への対応
・免許停止、免許取消処分への対応
・勤務先への報告方針の検討
・再発防止策の作成

特に、前夜飲酒・朝方運転の事案では、酒気帯びの認識が争点になり得ます。

警察で「酒が残っていると思っていました」と調書化される前に、事実関係を整理することが重要です。

 

まとめ

 

夜中にお酒を飲み、数時間寝た後、朝方に自動車を運転した場合でも、呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上のアルコールが検出されれば、酒気帯び運転として処罰対象になる可能性があります。

「一晩寝た」
「酔っていなかった」
「基準値を超えるとは思わなかった」

というだけで、酒気帯び運転が否定されるわけではありません。

もっとも、二日酔い型の酒気帯び運転では、本当に酒気帯びの認識があったのか、運転時点で基準値以上だったのか、呼気検査の手続に問題がないかが争点になることがあります。

重要なのは、

・飲酒量
・飲酒終了時刻
・就寝、起床時刻
・運転開始時の体調
・酒臭の有無
・呼気検査の数値
・検査時刻
・同乗者や家族の認識
・警察での供述内容

を正確に整理することです。

薬院法律事務所では、酒気帯び運転、二日酔い運転、飲酒運転事故、免許停止・取消、勤務先への影響を踏まえた交通犯罪の相談を受けています。

「前夜の酒が残っていたと言われた」
「朝の通勤中に酒気帯び運転で検挙された」
「自分では酒が抜けていると思っていた」
「呼気検査の数値に納得できない」
「免許停止・取消になると仕事に困る」
「警察の取調べで何を話せばよいか分からない」

という場合には、早めにご相談ください。

 

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