大学生の息子が友人に大麻を売っていたということで逮捕されたという相談(大麻、少年事件)
2024年10月19日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私の息子は、福岡県の国立大学文学部に通う大学2年生です。インターネットで大麻を購入していたようで、それだけではなく、友人に対して販売していたそうです。息子は現在19歳1月ですが、少年院に行くのではないかと心配ですし、裁判になったら実名が報道されてしまうのでないかと心配です。大学からも退学処分になるのではないかと心配しています。
A、特定少年という取扱いになり、非公開の少年審判手続で処分が判断されます。ただ、手続中に成年になった場合には刑事裁判となりますし、ご心配されているように少年院送致の可能性もあります。早急に、大麻事案、少年事件に詳しい弁護士に依頼して、弁護活動をしてもらうべきです。
【解説】
大麻事案については法定刑も引き上げられており、今後はより厳しい処分が予想されます。
ご相談の事例では、単なる所持事案ではなく、友人に譲渡もしていたということであり、令和6年12月12日以後であれば、麻薬取締法により、営利目的譲渡(1年以上10年以下の懲役または、1年以下の懲役もしくは10年以下の懲役及び300万円以下の罰金)となり、原則逆送事件となります。そうなると、成人事件として処罰される可能性もありますし、少年事件として処罰されるとしても少年院に行く可能性があります。もちろん、学校から退学処分を含む厳しい処分が来ることも予想されるでしょう。
依頼された弁護士がやるべきこととしては、身体拘束からの早期解放(困難な事案ではあります)、逆送決定の回避に向けた家庭裁判所との交渉、少年院送致を避けるための家族も含めた環境調整、学校から予想される退学処分に対する処分の軽減交渉(自主退学をすることも考えられます)がありますが、特に、刑事事件・少年事件としての対応が全ての基礎になります。詳しい弁護士をつけることが必要でしょう。
リーフレット「少年審判について」
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/210031.pdf
法務省「少年法が変わります!」
https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji14_00015.html
【Q8 特定少年の「原則逆送対象事件」について教えてください。
A8 今回の改正により,18歳以上の少年(特定少年)については,原則逆送対象事件に,これまでの
○ 16歳以上の少年のとき犯した故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件
に加えて,
○ 18歳以上の少年のとき犯した死刑,無期又は短期(法定刑の下限)1年以上の懲役・禁錮に当たる罪の事件
が追加されることとなりました。
これにより,特定少年については,例えば,現住建造物等放火罪,強制性交等罪,強盗罪,組織的詐欺罪などが新たに原則逆送対象事件となります。
今回の原則逆送対象事件の拡大は,選挙権年齢や民法の成年年齢の引下げにより責任ある立場となる特定少年が重大な犯罪に及んだ場合には,17歳以下の少年よりも広く刑事責任を負うべきと考えられたことによるものです。】
厚生・労働2024年06月19日
大麻草から製造された医薬品の施用等の可能化・大麻等の不正な施用の禁止等に係る抜本改正
~大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律~ 令和5年12月13日公布 法律第84号
法案の解説と国会審議
執筆者:木村歩
https://www.sn-hoki.co.jp/articles/article3567820/
【(2)大麻等の施用等の禁止に関する規定・罰則の整備
① 大麻等を麻薬及び向精神薬取締法上の「麻薬」に位置付けることで、大麻等の不正な施用についても、他の麻薬と同様に、同法の禁止規定及び罰則を適用する。
なお、大麻の不正な所持、譲渡し、譲受け、輸入等については、大麻取締法に規制及び罰則があったが、これらの規定を削除し、他の麻薬と同様に、「麻薬」として麻薬及び向精神薬取締法の規制及び罰則を適用する(これに伴い、法定刑も引上げ)。】
【参考文献】
東京高裁令和5年7月4日決定(家庭の法と裁判50号(2024年6月号))85-88頁
85頁
【少年(麻取締審判時特定少年)が,友人に大麻を譲渡したという大法違反保護事件において,少年を第1種少年院に送致し,収容期間を2年間と定めた原決定について,処分の著しい不当を理由とする抗告を棄却した事例
1)本件は,特定少年である少年が,友人に対し,大麻約007グラムを代金4000円で譲り渡した,という事案である。】