大麻を購入した直後、警察から検挙されたが大麻所持になるかという相談
2026年01月11日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、福岡市に住む会社員です。昨年、仕事のストレスから大麻に手を出すようになってしまい、昨日もSNS経由で売人とやり取りをして、公園で大麻が入っていると思われるチャック付き袋を受け取りました。ところが、大麻を受け取った直後に警察官が来て、私も売人も捕まえられてしまいました。私はまだ受け取ったものの中身も見ていないのですが、これは大麻所持になるのでしょうか。また、見ていたら止めてくれれば良かったのではないかと思います。おとり捜査ではないでしょうか。
A、譲り受け直後に検挙されていることからすれば、大麻譲受け罪は成立しても、大麻所持罪は譲受け罪に吸収されて成立しないという可能性はあります。もっとも、これは擬律判断の問題で、いずれも麻薬及び向精神薬取締法66条1項で処罰されます。犯罪が成立しなくなるわけではありません。ご投稿の内容からすると「密行」という捜査手法であり、違法捜査にはあたりません。
【解説】
警察においては、犯人の現行犯検挙を目的として、隠密に一定の地域を巡回する捜査方法が取られることがあります。これは「密行」という手法で、痴漢事件やスリ事件などでも行われている手法です。薬物事犯においても当然適用可能です。相談の内容は、警察官としては通常通り「所持」で立件しているものの、内容からすれば「譲受け」罪しか成立しないという可能性はあるでしょう。もっとも、適用条文は変わらず、法定刑は変わりません。なお、実務的には、黙秘することで、大麻を譲り受けたという「故意」が立証できない可能性はありますが、既にSNSでの大麻を購入するためのメッセージが証拠保全されている場合には、黙秘しても故意が立証される可能性は高いと思います。
※麻薬及び向精神薬取締法
(定義等)
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一の二 大麻 大麻草の栽培の規制に関する法律(昭和二十三年法律第百二十四号)第二条第二項に規定する大麻をいう。
第六十六条 ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、製剤し、小分けし、譲り渡し、譲り受け、又は所持した者(第六十九条第四号若しくは第五号又は第七十条第五号に規定する違反行為をした者を除く。)は、七年以下の拘禁刑に処する。
https://laws.e-gov.go.jp/law/328AC0000000014
【参考文献】
内藤惣一郎ほか編著『覚せい剤犯罪捜査実務ハンドブック』(立花書房,2018年9月)85頁
【覚醒剤の譲受けとは,覚醒剤の処分権を与えられてその所持の移転を受けることをいい,譲受行為には当然所持が伴い,所持が伴わない譲受けはあり得ないから,譲受けに当然伴う所持は譲受けに包括吸収され,別に所持罪が成立するものではない。】
古田佑紀・齊藤勲編『大コンメンタールⅡ薬物五法〔大麻取締法〕』(青林書院,1996年8月)86頁
【(3) 実行の着手,既遂時期 大麻の所持については,本条3項に未遂を処罰する旨の規定があるので,実行の着手時期,既遂時期が問題となるように見える。しかし,前述のとおり,所持は支配の意思をもって事実上その物の支配を実現すれば開始されるのであり,また所持罪は継続犯であるから,実力的支配関係が時間的に持続することを要すると言われているものの,そのことから同様の支配関係が継続しなければ既遂にならないということには必ずしも結びつかないとされることや,また,譲渡し,譲受けに伴う当然の結果たる所持は,別に所持罪を構成しない(大阪高判昭28• 8 • 6特報28号55頁等)とされることからすると,支配開始から支配実現までの問を未遂と観念するとしても,現実には殆ど所持の未遂というのは考えられないであろう。】
https://www.seirin.co.jp/book/01097.html
警察協会編『地域警察活動(捜査)』(警察協会,2020年3月)83頁
【密行とは、放火、痴漢、盗犯等が多発する場合に、犯人の現行犯検挙を目的として、隠密に一定の地域を巡回する捜査方法をいう。】


