女性が護身用に催涙スプレーを持ち歩くことが軽犯罪法違反になるかという質問(刑事弁護)
2025年09月24日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、成人女性です。女性が襲われるニュースを見て、護身用に催涙スプレーを持ちたいと思いました。ですが、インターネットを見ると軽犯罪法違反になるという記事もあり、大丈夫なのか不安になっています。実際のところどうなのでしょうか。
A、護身用の小型のものであれば、通常は立件すらされないと思います。最高裁判所の判例があります。
【解説】
女性は、一般的にいって男性に比べて身体的暴力に脆弱です。そのため、夜道などで襲われた際の自衛策として反撃手段を持ちたいというのは当然のことです。最判平成21年3月26日は催涙スプレーを護身用に所持していた事案で、「正当な理由」があるとして軽犯罪法違反の成立を否定しました。最高裁判例の担当調査官の解説では女性が護身用に催涙スプレーを持ち歩くことについて肯定的な見解も示されています。軽犯罪法違反については、現場での注意、始末書処分、立件、と段階を踏んでの取り締まりがなされていますので、実務的には、立件すらされないと考えます。
軽犯罪法
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000039/
第一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
二 正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者
最判平成21年3月26日
最高裁判所判例解説刑事篇(平成21年度)
警察実務研究会「青年警察官の執行力向上を目指して 交番勤務立花巡査の一日(第85回)軽犯罪法(その8)凶器携帯の罪」警察公論2018年5月号41-44頁
警察公論は、警察官が愛読する昇任試験雑誌で、最高裁判所判例解説刑事篇は、最高裁判所の判例を担当した最高裁判所調査官の公式解説です。
つまり、警察官の現場レベルでの解説と、裁判官が一番重視する解説の双方で、女性の護身用携帯を是認する姿勢が示されています。