妻が勤務先で放火をして、捕まったという相談(現住建造物等放火、刑事弁護)
2024年12月12日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、福岡市で妻と2人暮らしをしている30代男性です。先日、警察から妻が逮捕されたという連絡がありました。警察の話では、妻が、勤務先の弁護士事務所で、経営者弁護士の机に放火したということです。急いでネットで調べて当番弁護士さんにいってもらったのですが、妻は「覚えていない」といっているそうです。どうすれば良いでしょうか。
A、いくつかの問題点があります。①現状建造物等放火罪が成立するか、②責任能力があるか(「解離」の可能性があります)、③釈放が認められるか、です。この種の犯罪は、背景に重大な問題が隠れていることがありますので、刑事弁護に詳しいことに加えて、本人が話しやすい弁護士を選ぶことが大事です。
【解説】
突発的に放火をしてしまうという事件は時折あります。その背後には本人の深刻な悩みが隠れていることがあり、刑事弁護活動にあたっては、その点まで含めたケアが必要になります。相談事例の場合は、まずは釈放を目指すことになりますが、その上で、法律上「器物損壊罪」に留まることの主張や、被害者との示談交渉といった弁護活動が必要になるでしょう。本人に寄り添った弁護活動ができる弁護士を選ぶことが大事です。
刑法
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045#Mp-Pa_2-Ch_9
(現住建造物等放火)
第百八条 放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
(器物損壊等)
第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
(親告罪)
第二百六十四条 第二百五十九条、第二百六十一条及び前条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
【参考文献】
丸山嘉代「悩める現場の誌上事件相談室 検事!この事件,どうすればいいですか?(第11回)現住建造物等放火?それとも未遂?」警察公論2017年8月号53-61頁
58頁
【あるいは, Q1の2で「建造物の一部が人の住居となっている場合,人の住居となっていない部分のみを焼損する意思で放火しても,全体が一個の建造物であるとの認識があれば,建造物全体に対する放火の罪の故意に欠けるところはない」と判断した裁判例(最判昭24.2.22)を紹介しましたが, これにならえば、本事案でも,背広に放火しても, それが掛けてあるクローゼットが建造物の一部であるとの認識があれば,建造物に対する放火の罪の故意に欠けるところはないといえそうです。
したがって,結論的に申し上げれば, ご相談の事案では,主観面でも現住建造物に対する放火の故意が認められるといえそうですが, とはいえ,公判での被疑者の弁解に備え,被疑者の真の意図がどこにあったのか, きちんと聴取しておく必要があるでしょう。】
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I028389735