居酒屋に自転車で来ている常連さんにお酒を出したら、警察が来たという相談(刑事弁護、道路交通法違反)
2024年11月26日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、福岡市南区大橋で居酒屋を経営しているものです。70代くらいの常連のお客さんがいるのですが、いつも店の前に自転車を停めて飲みに来られていました。特段気にしていなかったのですが、ある日、警察から電話がきました。その常連さんが、帰宅途中、学習塾帰りの小学生にぶつかって大けがをさせたということで、逮捕されたそうです。警察からは事情を訊きたいといわれているのですが、私も何か処罰を受けることがあるのでしょうか。
A、令和6年11月1日からの法改正により、自転車の酒気帯び運転にも罰則がつけられるようになりました。さらに、酒気を帯びて車両等を運転することとなるおそれがある者に対して、酒類を提供することは、道路交通法65条3項の「酒類提供罪」にあたるところ、自転車(軽車両のうちの自転車のみ)も対象に含まれることになりました。ご事情からすると、店舗経営者である相談者の方も処罰される危険性はあります。
【解説】
道交法65 条3項は酒気帯び運転をすることになるおそれがある者に対して「酒類を提供」することを罰則付で禁止しています。かつては軽車両については「酒気帯び運転」は処罰対象外とされており、酒類提供罪の対象からも外されていました。しかし、法改正で自転車で酒気帯び運転をするおそれがある者に対して酒類を提供することも、「酒類提供罪」として処罰されることになっています。今後は、自転車で来る方にもお酒は出さないということを徹底する必要があるでしょう。弁護士の面談相談をお勧めします。
※道路交通法
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
八 車両 自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバスをいう。
十一 軽車両 次に掲げるものであつて、移動用小型車、身体障害者用の車及び歩行補助車等以外のもの(遠隔操作(車から離れた場所から当該車に電気通信技術を用いて指令を与えることにより当該車の操作をすること(当該操作をする車に備えられた衝突を防止するために自動的に当該車の通行を制御する装置を使用する場合を含む。)をいう。以下同じ。)により通行させることができるものを除く。)をいう。
十七 運転 道路において、車両又は路面電車(以下「車両等」という。)をその本来の用い方に従つて用いること(原動機に加えてペダルその他の人の力により走行させることができる装置を備えている自動車又は原動機付自転車にあつては当該装置を用いて走行させる場合を含み、特定自動運行を行う場合を除く。)をいう。
(酒気帯び運転等の禁止)
第六十五条 何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
2 何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。
3 何人も、第一項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない。
4 何人も、車両(トロリーバス及び旅客自動車運送事業の用に供する自動車で当該業務に従事中のものその他の政令で定める自動車を除く。以下この項、第百十七条の二の二第一項第六号及び第百十七条の三の二第三号において同じ。)の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、当該車両を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第一項の規定に違反して運転する車両に同乗してはならない。
(罰則 第一項については第百十七条の二第一項第一号、第百十七条の二の二第一項第三号 第二項については第百十七条の二第一項第二号、第百十七条の二の二第一項第四号 第三項については第百十七条の二の二第一項第五号、第百十七条の三の二第二号 第四項については第百十七条の二の二第一項第六号、第百十七条の三の二第三号)
第百十七条の二の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
五 第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第三項の規定に違反して酒類を提供した者(当該違反により当該酒類の提供を受けた者が酒に酔つた状態で車両等を運転した場合に限る。)
第百十七条の三の二 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
二 第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第三項の規定に違反して酒類を提供した者(当該違反により当該酒類の提供を受けた者が身体に第百十七条の二の二第一項第三号の政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態で車両等(自転車以外の軽車両を除く。)を運転した場合に限るものとし、同項第五号に該当する場合を除く。)
https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105#Mp-Ch_4-Se_1
よくわかる裁判員制度の基本用語
未必の故意
https://imidas.jp/judge/detail/G-00-0093-09.html
政府広報オンライン 2024年11月自転車の「ながらスマホ」が罰則強化!「酒気帯び運転」は新たに罰則対象に!
https://www.gov-online.go.jp/article/202410/entry-6604.html
【参考文献】
法務総合研究所『研修教材 五訂 道路交通法』(法務総合研究所,2013年3月)329-330頁
【車両等を提供する相手方が「酒気を帯びて運転するおそれがあること」を認識するとは,少なくとも,相手方が酒気帯び運転行為に及ぶことの未必的な認識を有していることである。】
城祐一郎『Q&A 実例交通事件捜査における現場の疑問〔第2版〕』(立花書房,2017年10月)153頁
【本罪の構成要件として,まず,当該提供者の主観的要件としては,運転者が酒気を帯びているとの認識及び当該運転者が同車両を運転することとなるおそれがあるという認識が必要である。
したがって,主観的要件に関しては,当該運転者が確実にその車両を運転するとまで思っていなくても,未必的にでも,運転するかもしれないが,それでも構わないと思っていたという場合であっても,「運転することとなるおそれがある」ことを認識していたことになる。】
道路交通執務研究会編著『執務資料道路交通法解説(19訂版)』(東京法令出版,2024年1月)
661頁
【「車両等を運転することとなるおそれがあるもの」とは、車両等を提供すれば、酒気を帯びて車両等を運転することとなる蓋然性があることをいう…(中略)…車両等の提供を受ける者が、飲酒運転をすることとなるおそれがあることの認識は、車両等提供者と提供を受けた者の人間関係、提供を受ける者の飲酒運転に関する言動、飲酒運転が行われることを当然推認されるべき事情その他個々具体的な状況に応じて判断されることとなる。】※第2項の車両等提供罪の解説部分。3項も同旨(662頁)。
尾花雄一「「道路交通法の一部を改正する法律」について 第2 自転車等の交通事故防止のための規定の整備」警察学論集77巻10号(2024年10月号)22-69頁
62頁
【また、平成26年から令和5年までの10年間における自転車の酒気帯び運転による死亡・重傷事故率は、約29.5%となっており、自動車等の運転者による同期間中の死亡.重傷事故率(約16.9% )よりも高くなっている。このように、自転車を酒気帯び状態で運転する行為は、自動車等を酒気帯び状態で運転する行為以上に死亡・重傷事故という重大な結果を招く危険性が高いものであり、酒気帯び運転が道路交通に与える危険性を看過することはできず、自転車と自動車等の酒気帯び運転の取扱いに差をつける理由はなくなっていた。
以上のことから、酒気帯び状態で自転車を運転することに起因する悲惨な交通事故を防止するため、不可罰とされている自転車の酒気帯び運転及びこれを助長する行為を新たに罰則の対象とすることとしたものである。】
64頁
【自転車の運転者による酒気帯び運転及びこれを助長する行為について、新たに罰則の対象とすることとするとともに、自転車の酒気帯び運転を助長する行為についても、自動車等と|両’一の罰則を科すこととする。】
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※2025/1/8 chatGPT o1 proで検証してもらいました。
法改正に対応していないことがわかります。新しい法改正についてはchatGPT o1 proでは対応できないと見た方がいいでしょう。
以下のやりとりは「あくまで架空の事例」という前提で書かれていますが、結論からすれば本文の記述には法的に誤解を招くおそれのある点が含まれており、“2024年11月1日から法改正によって、自転車の酒気帯び運転にも『酒類提供罪』が新設された”という趣旨は現行法や実際の改正動向と必ずしも合致しません。以下で詳しく解説します。
1. 「自転車の酒気帯び運転」自体は従来から禁止されている
日本の道路交通法では、「車両」には自転車(軽車両)も含まれます。したがって、
- 自動車であれ自転車であれ、**「酒気を帯びて運転する行為」**は、もともと道交法上「違反行為」として規制されてきました。
- 自転車であっても飲酒運転は処罰対象です(ただし、その程度や適用法条の問題があり、自動車に比べると軽い場合もあるという運用上の違いはあります)。
また、道交法第65条1項の「酒気を帯びて車両等を運転してはならない」はずっと以前から自転車にも適用があります。つまり、「自転車の酒気帯び運転」が今回新たに処罰の対象になったわけではないのです。
2. 「自転車向けの酒類提供」が新たに罰則付きで禁止になったわけでもない
本文では、
令和6年11月1日からの法改正により、自転車の酒気帯び運転にも罰則がつけられるようになった。
さらに…自転車で酒気帯び運転をするおそれがある者に対して酒類を提供することも、「酒類提供罪」として処罰される
といった趣旨の説明がされています。しかし、実際の道路交通法上、過去の改正も含めて「自転車に対してお酒を提供すると新設罰則が科される」ような大きな改正が2024年11月に施行される事実は確認できません。
2-1. 「酒類提供罪」はもともと道交法65条3項で規定されていた
道交法65条3項では、自動車・原付・軽車両等を「酒気帯びで運転するおそれがある者」に対し、酒類を提供したり、飲酒をすすめたりする行為を禁止しています。さらに65条の罰則条文(第117条の二の二など)で「提供した者」に対する処罰規定がありますが、それは**自動車に限らず、法律上『車両等』にあたるもの全般(含む自転車)**が対象と解されてきました。
- つまり、もともと道交法上、「酒気帯び運転のおそれがある人に酒を提供する」行為を処罰する規定は存在しています。
- 「自転車は除外されていたが、2024年11月に初めて追加された」という形跡はありません。自転車に関しても、法文上は「車両等」に含まれており、ずっと前から対象となっていたのが実情です。
2-2. 一部「自転車の飲酒運転は軽い違反扱い」という誤解が広がっていた
たしかに、現実的には、自転車での酒気帯び運転については取り締まりがそこまで厳格に行われなかったり、あるいは「危険運転致傷罪」などは自動車を想定している面が強く、自転車のケースでは適用されないという違いはありました。しかし、自転車も酒気帯び運転が違法という点はずっと変わっていませんし、「車両等を運転するおそれがある人に酒を提供すること」が処罰され得る点は、何ら大きく改正されたわけではありません。
3. 店舗経営者が「自転車利用客に酒を提供して、処罰される」ケースの実際
- 道交法65条3項の適用要件
- 「車両等を運転するおそれがあると認識しながら」
- 「酒類を提供し、または飲酒をすすめた」
- かつ、その飲酒をした人が実際に酒気帯び運転をした(一定のアルコール濃度等が要件)
こうした要件をすべて満たした場合に、提供した側にも処罰規定が及ぶ余地があります。
- 「おそれがある」と思わず、善意で提供していた場合
- 実務的には、被疑者(提供者)が「まさか自転車で帰るなんて知らなかった」と主張すれば、故意(少なくとも未必的故意)が争点になります。
- 飲食店であっても、全く知らない・気付かなかった、あるいは「タクシーで帰ると言っていた」といった事情があれば、直ちに処罰されるわけではありません。
- 結論
- 自転車だから安全というわけではなく、酒気帯び運転自体が違法であり、店舗側が「運転するおそれがある」と認識しながらお酒を提供すれば責任を問われうるのは確かです。
- しかし、「2024年11月から新しく自転車への提供罪ができた」というのは現行法と異なる説明です。従来から同条文は「車両等」に自転車を含む扱いで運用されてきました。
4. 結論:記事内容の真偽
- 本文で説明されている「自転車への酒類提供が新しく処罰対象になった」という論旨や「2024年11月1日からの法改正」で新設されたかのような記述は、現行法(道交法)や近年の実際の改正情報と合わないといえます。
- 実際には、自転車の酒気帯び運転は以前から罰則があり、酒類提供罪も『車両等を運転するおそれがある』者に提供した場合は処罰対象になり得るというのが正確な理解です。
- 店舗経営者が「自転車で帰るとわかっている客にお酒を提供すると、道交法65条3項違反で処罰される可能性がある」点については、法文上はそう読めますが、「2024年11月施行で初めて適用される」わけではありません。
まとめ
- 酒気帯び運転禁止は、既に自転車を含む「車両等」全般に及んでおり、特別に2024年11月から「自転車への飲酒運転規制が新設された」わけではない。
- 道交法65条3項の「酒類提供罪」も、もともと『車両等』に自転車を含む形で規定されてきた。
- そのため、記事中の「2024年11月1日法改正で自転車も対象になった」などの説明部分は事実と異なると言わざるを得ません。
結論:本文のうち「自転車に対する酒類提供罪が新設された」とする記述は、実際の法改正情報や道交法の現行条文解釈に照らし、誤りです。そのため、記事全体としては“自転車の飲酒運転自体がダメ”という点は正しいものの、「2024年11月から新たに自転車が適用対象となった」という説明は事実に反します。