弁護士であれば、24時間いつでも接見することは可能か(刑事弁護)
2025年02月01日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は、東京都に住む40代女性です。深夜になっても夫が帰って来ず、連絡もないので不安に思っていたところ、先ほど警察から連絡がありました。夫が電車内で痴漢をしたということで、迷惑行為防止条例違反で逮捕されたということです。夕方に警察に連れていかれて、逮捕状が出されたということでした。それ以上詳しいことは教えてもらえず、インターネットを見て弁護士さんを探したのですが、深夜のためかどこの事務所にも繋がらず、24時間対応という事務所でも電話代行の応答でいつ行ってくれるかわからないということでした。明日も仕事があるので、会社に連絡をしないといけないのですが連絡はできませんし、どうすれば良いのでしょうか。また、弁護士さんは深夜0時過ぎでも面会できるのでしょうか。
A、留置されているのが拘置所の場合は、弁護人の接見についても厳格な時間制限があり原則平日日中でないと面会できませんが、警察署の場合は原則的に24時間接見可能です。本人の体調もあるので時間外(夜21時~朝8時)は接見しないことが多いと思いますが、早急な対応が必要な場合には接見すること自体は可能です。初回接見については警察も尊重する取り扱いをしています。なお、私は深夜でも接見に出向くことはあります。
【解説】
まず前提として、日本の刑事手続では、逮捕後は最長72時間以内に勾留(こうりゅう)請求がなされ、その後裁判官が勾留を決定すると、原則10日(延長で最大20日)身柄拘束が続く可能性があります。勾留決定が出ると、実際の身体拘束先としては「警察署の留置施設」または「拘置所」が利用されます。いわゆる「代用監獄(だいようかんごく)」と呼ばれる制度で、勾留中も警察署の留置場に収容されるケースが多いのが現状です。一方、裁判所が「拘置所に勾留する」と判断した場合や、起訴後に拘置所に移送される場合など、実際に法務省管轄の拘置所に収容されるケースもあります。以下では、「警察署の留置施設にいる場合」と「拘置所にいる場合」に分け、それぞれでの連絡手段や弁護士との面会などについて詳しく解説します。
1. 警察署の留置施設に留置されている場合
1-1. 会社への連絡について
- 本人から直接連絡はできないことが多い
警察署の留置施設では、被疑者本人が外部に自由に電話をかけることは基本的にできません。面会の際も面会相手を通じた口頭連絡はできますが、警察官や検察官の立ち会い・検閲が入る場合があります。 - 家族など第三者が代わりに連絡する
会社への欠勤連絡等は、家族であるあなた(奥様)が会社に事情を説明するのが通常です。もっとも、「逮捕された」という事実を会社にどう伝えるかは今後の処分や会社との関係にもかかわるため、弁護士と相談したうえで適切な説明を行うことが望ましいです。 - 弁護士に依頼して会社との連絡調整をしてもらう方法もある
弁護士がついた場合、会社への説明をどうするか、弁護士を通じて連絡を取る方法などについて助言を受けることができます。業務上、どうしても連絡が必要な物品の引き継ぎなどがある場合、弁護士から警察・検察に働きかけて一時的に対応できないか相談するケースもあります。
1-2. 弁護士との面会(接見)について
- 原則として24時間、弁護士は面会可能(接見交通権)
法律上、弁護士は原則として日中夜問わず接見が可能とされています(刑事訴訟法39条)。ただし、実務上は深夜や早朝に「必ず」会えるかというと、実際には警察の手続や当直担当者の事情などで難しい場合もあります。 - 深夜の場合の注意点
例えば深夜0時を過ぎると、当直の警察官しかおらず、対応できる人員が限られること、被疑者が就寝中であることなどを理由に、「面会時間の制限」をされる可能性は否定できません。一方、重大な事件や緊急性がある場合などには、警察と交渉して深夜帯に接見が実現することもあり得ます。 - 接見禁止が付されている場合には制限あり
もし裁判所が「接見等禁止処分」をつけている場合には、弁護士以外の家族などは面会が禁止されるか、手紙のやりとりも制限されます。ただし、弁護士は接見禁止の対象外です(弁護士だけは会える)。
1-3. 深夜に弁護士を探す方法
- 当番弁護士制度
東京弁護士会や第一東京弁護士会、第二東京弁護士会では「当番弁護士制度」があります。原則として無料で最初の一回は接見に行ってもらえる制度です。平日夜間や休日でも連絡手段があるはずなので、そちらに電話するのが第一の手段となります。 - 24時間受付を謳う法律事務所
ホームページ等で「24時間対応」と書かれている法律事務所に連絡すると、電話代行サービスが受け付けて後ほど弁護士が折り返すという形が多いです。深夜帯だとすぐに行ける弁護士が見つかるとは限りませんが、緊急対応が可能な事務所もありますので、複数あたってみるとよいでしょう。
2. 拘置所に留置されている場合
2-1. 会社への連絡について
- 拘置所の場合も、被疑者本人が自由に電話をかけることは認められない
拘置所(法務省管轄)に勾留されている場合も、通常は被疑者本人が外部に直接電話をかけることはできません。家族や知人が手紙や面会で情報をやりとりすることになりますが、警察署と異なり拘置所では「面会時間」「手紙の検閲」などの規律がより厳格に運用される傾向があります。 - 家族が会社に連絡するか、弁護士に相談して対処方法を決める
会社への連絡についての基本的な考え方は、警察署の場合と同じです。家族が連絡をする、あるいは弁護士に依頼して連絡の仕方を検討することになります。
2-2. 弁護士との面会(接見)について
- 拘置所は面会可能時間が厳密に決まっている
警察署が留置管理をしている場合と比べ、拘置所では「面会受付時間」が比較的厳格に定められています。深夜や早朝など、受付時間外の面会は認められないことが多いです。 - それでも弁護士接見は優先される傾向があるが、深夜の面会はかなり困難
弁護士の接見交通権は保障されていますが、それでも拘置所では職員の配置などから深夜帯の面会は非常に難しいのが実情です。警察署と比べても交渉が難しく、基本的に面会時間内に調整せざるを得ないケースが多いです。 - 接見禁止の有無による違い
こちらも警察署と同様、接見禁止がついているかどうかで家族の面会可否が変わります。ただ、弁護士は接見禁止の影響を受けません。
2-3. 深夜に弁護士を探す方法
- 基本的には警察署の場合と同様
拘置所に移されるタイミングは、逮捕後すぐではなく、勾留決定後に移送されることが多いです。したがって、「深夜帯に急ぎで弁護士を探す」タイミングは、まずは警察署での留置時期となるケースが通常です。 - 拘置所に移された後は、面会の手配はなるべく昼間に
拘置所での面会は受付時間が決まっているため、弁護士を探すにも「翌日昼に会いに行ってもらう」などのスケジュール調整が必要になることが多いです。
3. どうすればいいか(まとめ)
- 会社への連絡は、家族(あなた)が代わりにするか、弁護士に相談して行う
- 被疑者本人が直接連絡することは難しいので、まずは会社には「家庭の事情で、しばらく出社できない」など最低限の連絡を入れざるを得ない状況が多いです。逮捕の事実を話すかどうかは、後日の処分や会社の規則等を考慮して慎重に判断します。
- 逮捕されたことを会社に伝えるときは、弁護士のアドバイスを受けるとよいでしょう。
- 弁護士との接見はできるだけ早期に実現したほうがいい
- 深夜に直接面会できるかどうかは施設や状況次第ですが、少なくとも弁護士に相談することで、取調べへの対応、会社への連絡方針、今後の見通しなどについてアドバイスを受けられます。
- 当番弁護士制度を利用できるか、24時間対応窓口に電話するなど、夜間でも連絡は試みてください。
- 万一深夜に弁護士と連絡が取れなくても、翌朝には必ず再度連絡を
- 夜中に電話代行でしか受け付けてもらえないこともありますが、翌朝には弁護士が折り返すことが多いです。できるだけ早く具体的な接見日時を調整してもらいましょう。
- 警察署留置と拘置所留置での違い
- 警察署留置:比較的、弁護士は24時間いつでも接見可能。ただし実務的には深夜帯は受け入れを渋られることもある。
- 拘置所:面会時間が厳格で、深夜や早朝の接見はほぼ不可能。拘置所に移送されるのは逮捕直後ではなく、勾留決定後(あるいは起訴後)になる場合が多い。
最後に
ご主人が逮捕・勾留されてしまった場合、ご家族としては心配と不安が大きいと思います。会社への連絡については、まずはあなたご本人が最低限の説明をすることで会社側も事情を把握できますし、その後、弁護士がついた時点で会社への説明や今後の身柄解放(釈放・保釈など)をどう進めるかを相談する流れになります。
また、弁護士は深夜でも理論上は面会可能ですが、実務的には対応していない事務所も多いので、深夜に連絡が取れなくてもあきらめず、翌朝以降に再度アクションをとってみてください。まずは当番弁護士制度の活用や24時間対応の法律事務所への連絡など、できることから進めるとよいでしょう。