携帯電話等の位置情報探索は、検証許可状で行えるのか(刑事弁護)
2018年07月20日刑事弁護
池田修・前田雅英『刑事訴訟法講義[第6版]』189頁に、GPS捜査に対する大法廷判決に対するコメントがありました。「なお、同判決は、携帯電話会社等を被処分者とする検証許可状を得て携帯電話等の位置情報を取得している実務(197頁注24)に関して判断を示したものではない。」とされており,注24では,「注24)法222条の2が新設されて、通信傍受に関する法律が儲けられたことにより、電話の傍受を検証許可状によって行うことは許されなくなったが、通信履歴や携帯電話の位置情報等の探知のみを目的として他人間の通信を対象とする場合には、検証許可状によって行うべき事になる。」とされています。この論点については,別冊判例タイムズ35号『令状に関する理論と実務Ⅱ』の169で「逃走中の被疑者の所在把握等のため、通信事業者内設置の装置から将来の携帯電話の位置情報を探索するために同装置の検証許可状を発布する際に留意すべき事項」と検証許可状を発布出来ることを前提として、実務上は7日間程度の範囲で実施されていると思われる、とされています。裏返せば、これも、GPS大法廷判決の影響があるかもしれない、ということです(リーガルクエスト刑事訴訟法2版180頁では「別途検討を要しよう」とされているだけです。判例百選も同様です。)
警察学論集71巻6号の川出敏裕先生の「刑事手続法の論点 第2回GPS捜査」では、検証許可状での携帯電話の位置情報取得もGPS捜査同様に新たな立法が必要としています。
【参考判例】
最判平成29年3月15日
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86600
判示事項
車両に使用者らの承諾なく秘かにGPS端末を取り付けて位置情報を検索し把握する刑事手続上の捜査であるGPS捜査は令状がなければ行うことができない強制の処分か
裁判要旨
車両に使用者らの承諾なく秘かにGPS端末を取り付けて位置情報を検索し把握する刑事手続上の捜査であるGPS捜査は,個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって,合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であり,令状がなければ行うことができない強制の処分である。