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薬院法律事務所

刑事弁護

文献紹介 橋爪隆「性犯罪に対する処罰規定の改正等について(3・完)」(性的姿態等撮影罪)


2024年11月09日刑事弁護

警察学論集77巻11号(2024年11月号)に性的姿態等撮影罪についての橋爪隆先生の解説記事がありました。

 

実務的にポイントになりそうなところとして、「男性の胸部」も年齢を問わず性的な姿態とされること、16歳未満の場合は同意があっても、人前で露出していてもその撮影行為が犯罪とされているところだろうと思いました。海水浴場などで写真を撮影してSNSでアップしている人は多いと思いますが、「犯罪」となり得る行為ということで今後は気をつけないといけないと思います。特に、13歳未満の男児が撮影された場合には、撮影者が中学生(14歳以上)や高校生であっても犯罪となり得ます。

 

橋爪隆「性犯罪に対する処罰規定の改正等について(3・完)」警察学論集77巻11号(2024年11月号)102-135頁

121頁

【既に述べたように、性的姿態等に該当する「人の性的な部位」は年齢や性別による区別がなく、性的な意味を持ちうる部位が広く包摂されている。また、16歳未満の者については、自ら人前で露出している場合であっても、その性的姿態等を撮影する行為が処罰対象とされている。そのため、たとえばプールや海水浴場で家族や友人の記念写真を撮影した際に、他の男児の海水パンツ姿がやむなく写り込んでしまう場合も、3号の要件を充たすことになるが、これを全て処罰対象とすることは適切ではないだろう。もちろん、具体的な状況や撮影された性的姿態等の内容も含めた検討が必要になるが、正当な目的に基づく撮影行為の際に、やむを得ず写り込んだ姿態の撮影についても、一定の範囲で「正当な目的」を認めることが必要になると思われる。】

 

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律

https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000067

(性的姿態等撮影)
第二条 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態
二 刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
三 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
四 正当な理由がないのに、十三歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は十三歳以上十六歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為

警察学論集77巻11号(2024年11月号)

https://tachibanashobo.co.jp/products/detail/3945