書籍紹介 甲斐竜一朗『刑事捜査の最前線』(講談社,2024年5月)
2024年11月23日刑事弁護
私は、いつも警察官向けの文献を購入して、最前線の捜査実務を研究するようにしています。
その一貫として、犯罪捜査をテーマにした一般書も購読しているのですが、この本は特に素晴らしい内容でしたので、ホームページで紹介いたします。地道に「勉強」をしてきた記者さんだということが文章の中身から伝わります。色々と批判はありますが、警察官の大多数は本心から犯罪が起こる事を嫌っており、一つでも犯罪が減るように地道に頑張っています。
本書は、丹念に警察幹部の取材をされており、短い文章のなかに正確でわかりやすい情報を詰め込んでいます。刑事弁護人であれば一読の価値がある本でしょう。刑事警察の歴史を遺す、価値のある文献です。
一点だけ私の意見を申し上げますと、私は、全体的には日本の警察を信頼しているのですが、終章にある特殊詐欺の対策については、端的にいって、警察・検察・裁判所が方針を誤っていたと考えています。警察が首謀者を捕らえられず、「駒」として利用された末端の受け子ばかりを起訴して、裁判所も厳罰に課して、せっせと刑務所に送り続けたことが、現在のトクリュウ問題、闇バイト問題に繋がっていると思っています。ここは、近時警察庁においても、末端の実行犯を「検挙」から「保護」に大幅な方針転換があったところです。
※参考記事
『闇バイト 凶悪化する若者のリアル』廣末登さんインタビュー 一度やったら抜け出せない、背景にある構造的問題
https://book.asahi.com/article/14977655