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薬院法律事務所

刑事弁護

歩行者の飛び出しを避けようとして、隣りの自動車と衝突したという相談(刑事弁護、交通事故)


2024年11月25日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は、福岡市内に住む30代の会社員です。昨夜の深夜2時頃、日赤通りの第一走行車線を天神方面に向けて進行していました。特に人もいなかったので時速70kmくらいを出して進行していたところ、突然左側の歩道から酔っ払っているらしき人が車道に出てきました。咄嗟に右にハンドルを切ったところ、第二走行車線を運転中の車の前部に衝突しました。その車に乗っている人がむち打ちになったということで、警察から過失運転致傷罪といわれているのですが、納得がいきません。歩行者を回避するためにやむを得なかったので過失はないと思います。

A、歩行者を避けるために進路変更して他の車と衝突した場合には、「緊急避難」として違法性が認められないこともあります。しかし、これは運転者に他の事故発生の原因となる過失がないことが前提で、速度超過があると過失は認められやすいと思います。とはいえ、多少の速度超過があるからといって、必ずしも過失があるとはいえない場合もあり得ます。弁護士の面談相談をお勧めします。

 

【解説】

 

障害物を避けるための進路変更により事故を起こした場合、「緊急避難」ということで違法性が認められないことがあります。本件の場合は、速度超過があること、歩行者が歩道から飛び出してくる可能性は予測できるといったことで過失運転致傷罪が成立する可能性が高いと思いますが、事案によっては違法性が否定されることもあり得ます。弁護士の面談相談を受けるべきでしょう。

刑法

https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045/20200401_430AC0000000072#Mp-Pa_1-Ch_7

(緊急避難)
第三十七条 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
2 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。

 

【参考文献】

東京地方検察庁交通部実務研究会『改訂版交通事故事件捜査110講』(警察時報社,2009年9月)171頁

【ところで,思いがけない歩行者の飛び出しがあったと弁解された場合は,そのような事態出現以前において,被疑者において,前方不注視とかスピード違反等の過失がなかったかどうか等を慎重に検討する必要がある。

…(中略)…

したがって,四囲の状況から判断して歩行者の飛び出しが予測されない状況下で,被疑者に前記のような特段の過失が認められない場合に,歩行者が直前に飛び出し,衝突を避けようとして狼狽のあまりハンドル操作を誤り他の事故を惹起した場合,被疑者の行為が他に方法がない手段として認めることが出来れば,緊急避難として責任は免れられることになるわけである。】