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薬院法律事務所

企業法務

民事訴訟、「陳述書」の作成ポイントについての相談


2024年09月11日読書メモ

【相談】

 

Q、慰謝料請求事件の被告として訴えられました。不当な内容ですので弁護士をつけずに対応しているのですが、この度裁判所から「陳述書」を出すように言われました。どのように作成すれば良いのでしょうか。

A、時系列に沿って、具体的な事実関係を説明することが大事です。「事実」について5w1hを意識した文章を書く必要があるでしょう。

 

【解説】

 

陳述書は民事訴訟法の定義はなく、一般に「当事者その他の訴訟関係人の陳述内容を記載した書面であって、訴えの提起に際して、または訴えの提起後に、裁判所に書証として提出する目的で作成された報告文書」と言われます(東京弁護士会民事訴訟問題等特別委員会編『民事訴訟代理人の実務Ⅲ証拠収集と立証』(青林書院,2012年9月)299頁)。

基本的な機能としては、

①主尋問代替・補完機能

→尋問時間は短いので、直接の争点以外の部分については書面で出してもらうということです

②反対尋問の準備機能

→相手方当事者に反対尋問の事前準備をさせる機能

③事案提示機能

→法的主張に厳格にとらわれることなく、認識している事案全体を提示する機能

④争点整理機能

→事案の状況を明らかにすることで争点が整理されるということです

⑤訴訟手続への能動的参加機会の付与機能

→当事者の納得感を高める機能

こういった機能があるわけですので、陳述書では争点に囚われずに事案の全体を提示するのが大事です。但し「陳述書は、あくまでも体験した事実を記載するものであるから、意見や感情を記載するとしても、その分量は適切なものに限られることや、あまりにも感情的な内容は当該陳述書に対する裁判所による証拠価値の評価を低くするおそれがあることも、訴訟代理人としては忘れてはならない」とされている(上掲書306頁)。こういったことを踏まえて、時系列に沿って、争点に対する相手方の主張への反論も盛り込んで作成するのが一般的です。概ね5-10頁程度です。

 

【参考文献】

 

岡山弁護士会民事委員会編著『Q&A証拠説明書・陳述書の実務』(ぎょうせい,2014年9月)153頁

【事案によって異なりますが、陳述書作成に際しては、次のような事項を次の点に留意して記載するとよいでしょう(略)。
① 生の社会的事実を記載する。
② 直接体験した事実と伝聞とは区別して記載する。
③ できるだけ時系列に沿って記載する。
④ 日時、場所、状況等を具体的かつ詳細に記載する。
⑤ 膨大な陳述書については目次を作ったり、小見出しをつけて記載する。
⑥ 供述者と本件紛争とのかかわり合い(特に証人の場合) を記載する。
⑦ 紛争に至った経緯や背景事情等主要事実だけでなく、間接事実・補助事実も記載する。
⑧ 争点を中心にした紛争に関する事実関係を記載する。
⑨ 紛争が生じた後のやりとりを記載する。
⑩ 証拠を引用したり、証拠の説明等をしながら記載する。
⑪ 主張するストーリー(事案の概要、仮説)が分かるようにできるだけまとめて記載する。】