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薬院法律事務所

弁護士業・雑感

法律学における「権威」の重要性について


2025年10月01日弁護士業・雑感

法律学においては、その分野の「権威」と呼ばれる人がいることがあります。これは特定の論点についてということもありますし、民法や刑法といった分野ごとのこともあります。

内田貴先生も書いていましたが、法律学の世界は「権威」が重要です。「あんたほどの実力者がそういうなら…」という。それは法律学がシステム全体の最適化を考えないといけない学問だからと思っています。全体を見ない人の考えは「少数説」となる。我妻榮先生や団藤重光先生が今も参照される理由です。「権威」で判断するというと胡散臭いと思われる方もいると思いますが、政治家と同じで「誰が言ったのか」ということが重要ということはしばしばあります。

内田貴先生は「法律学の学説は、自然科学のように単に書かれた内容だけの勝負ではなく、対象が人間関係であるだけに、それを説く学者の全人格的な表現という側面を持っているからだとみるべきなのかもしれない」と説明しています。内田貴『民法Ⅰ総則・物権総論[第4版]』(東京大学出版会,2008年4月)5頁。この指摘は、学説が単なる観察と論理の積み重ねではなく、論者の人格や価値観が反映されるという趣旨だと理解しています。「その人が、どういう価値観の下にシステムの最適化を考えているか」は重要です。法律学は、人間の心理と行動を操作する技術の体系なので、使い手次第で善にも悪にもなります。